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澄華の左掌にあった傷が癒えて、瘡蓋が取れたのは夏休みに入る直前だった。肉が白く盛り上が…
怒鳴り過ぎて、泣き過ぎて頭が痛い。 目覚めは最悪の気分で、乾いた涙が固まって瞼が開か…
「――何がどうなってんの?」 玲の問いかけに、澄華は目を逸らして答えた。 「カッとなって…
ボロボロの机の前で呆然としてから、澄華は職員室に駆け込んだ。 まだ教師の大半が出席し…
休み明けの月曜日、ということを差し引いても教室のざわめきは普段のそれより大きかった。早…
太陽が昇りきって間もない、ひんやりとした空気の中に、爽やかな潮の匂いがする。風の影響だ…
教室は海に似ている。 青いのに透明な水だとか、白い砂浜だとか、ああいう陽気な南の海では無い。 澄華が思い浮かべるのは北の海だ。それこそ、自転車をトバせば三十分もしない内にたどり着く灰色の砂浜。 流れ着いたプラスチックの生活ゴミや釣り具が散乱して、濃い磯の臭いがする。そんな群青色の海だ。 ――気が滅入る。 突っ伏していた机から顔を上げると、群れを成した女の子たちの笑い声が漣のように、長方形の空間に広がっていく。 身だしなみと称して化粧をし、色の付いたリップクリーム