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【実験・検証室】 001:リッチブラック
「黒色を思い浮かべてください。」
と言われたら、
だいたい誰もが同じ色を頭に思い浮かべているのではないかと思います。
黒色っていえば…、黒色ですよね。
しかし印刷で黒色を表現する場合、インキの配合値によって
ニュアンスの違う様々な 【黒】 を作ることができ、
それによってデザインの印象も グッと 変わってくることがあるのです。
ところで…
「リッチブラック」ってご存知ですか?
通常のカラー印刷では
C(シアン/藍)/ M(マゼンタ/紅)/ Y(イエロー/黄)/ K(キープレート・ ブラック/墨)の4色のインキを使用して絵柄を表現します。
黒色はこの中の K(墨)のみで表現できますが、K100%にCMYの3色を掛け合わせて表現する黒色のことを「リッチブラック」と呼びます。
K(墨)単色よりも濃く深い黒色になるので、
デザイナーの方はよく使用する黒色の表現かもしれません。
ちなみに、CMYKの4色全てのインキを100%ベタで掛け合わせた黒色を
4色ベタともいいます。
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黒を濃く出したいからリッチブラック?
リッチブラックは魅力的。
だけど、それを使用するにはメリット・デメリットを
知っておく必要があります。
メリット
・黒を深く濃く見せることができる
・ピンホールが発生しても目立たない
・意図していないオーバープリントが発生しない
デメリット
・見当ズレが起こる場合がある
・裏移り、ブロッキングなどの原因になる場合がある
必要のない箇所で黒色をリッチブラックで作るのは
後々のデメリットを考えると控えた方が良いと言えます。
少し余談を挟みましたが…
色々な黒色の中から、自分が思った通りの黒色の表現をしたい!
でもリッチブラックにすると、そのデメリットも気になるから
アドバイスが欲しい!
というデザイナーの皆様のために。
検証
リッチブラックは、CMYK4色の配合値によって 色が違うというけれど、
実際の見た目はそんなに変わるの?
検証スタート
検証物
リッチブラック=4色の掛け合わせという定義の元、
◎スミ100%+CMY全色を6段階(1% / 20% / 40% / 60% / 80% / 100%)
◎スミ100%+C100% or M100% or Y100%+その他2色を6段
(1% / 20% / 40% / 60% / 80% / 100%)
上記 21パターンをチャートにしたデータを作成しました。
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概要はこちら。こちらを検証物として印刷します。
紙による色の変化も見たいので、4種類の紙を選定
コート紙: OKトップコート+
マット紙: OKトップコートマットN
上質紙 : OKプリンス上質
特殊紙 : ヴァンヌーボVスノーホワイト
インキは弊社が使用しているオフセット用油性パウダーレスインキ(プロセスカラー※)を使用します。 ※ プロセスカラー = CMYK
印刷結果
印刷しました。
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検証物を見ると、全て黒色と言えど、どの黒色も違って見えます。
単体で見ると「黒だ」と言い切れるものでも、並べて比較をする事で初めてその違いが明確に見えてきます。
例えば
K100 / C100 / M20 / Y20 の リッチブラック は
「紺だ」という人がいるかもしれないし、
K100 / C20 / M100 / Y20 の リッチブラック は
「赤紫だ」という人もいるかもしれない。
「黒」と言っても その色の範囲は思っているより広いことがわかります。
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4種の用紙を使って、同一条件・同一データで印刷した検証物の比較
主観になってしまいますが、紙によっても見え方は違いました。
例えば【黒の濃さ】という視点で言うと、 濃い方から
コート紙 > マット紙 > ヴァンヌーボ > 上質紙
と感じました(社員で見比べてみた意見です)。
これは実際に検証資料を見ていただいて、皆様の様々な指標で比較していただきたいと思います。
補足事項
デメリットのところで触れましたが、リッチブラックは黒を濃く見せたり
ニュアンスを持たせることができますが、濃い配合にすると裏付きやブロッキングなど不良の原因にもなるので注意が必要です。
トラブルを防ぐために、一般的な印刷会社は200〜250% 程度の配合値を
推奨しているようです。(例 : CMY30~50%+K100%)
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弊社は適した条件下であれば400%でも印刷できるので、どうしても…!!!
という際には、ご相談ください。
通常は、検証資料に印刷した黄色い破線内を裏付き危険範囲とさせていただきます。心配な場合は弊社までご相談ください。
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是非、実際の検証資料を見て黒の違いをご覧ください。
紙によっても印象が変わるのがお分りいただけます。