【漫画メモ】溺れるナイフ/ジョージ朝倉
※ネタバレややあり。
読み始めたら止まらない、この感じ、好き、好き、好き。
恍惚の正体は、全能感。
私は過食しようって決めて、コンビニの籠に食べ物を放り込んでいるとき、紛い物のそれを感じていた。本物も、何度かちゃんと感じたことがあるけどね。
それを、自分も人も傷つけず合法的手段で感じられる瞬間は、最高、至福、絶頂、快感、そんな言葉いくら並べ立てても足りないくらい満たされる。ドーパミンが脳内を駆け巡ってる〜って感じ。
この物語は、男女の恋愛という枠に収まり切るようなお話じゃない。
でもキャラ設定は、いい意味で少女漫画らしいというか、入り込みやすい感じだな、と思った。私の中で、夏芽&コウはこどものおもちゃの紗南&羽山と、コウ&カナちゃんの関係は僕等がいたの矢野&山本さんと少し重なった。ただし激しさは、今まで読んだ少女マンガの中で一番かも。あ、読ませるエグさは、ちょっとすえのぶけいこさんのライフっぽい気もする。
夏芽や大友、同級生たちが幼い頃に見たコウの「光」が、無惨にも霞んでゆく様は、ものスゴくリアル。小学生時代に眩いばかりの光を放ち、男女問わず皆が惹きつけらる存在だった子が、ちょっとヤンチャ なんてレベルを超えて、引くわ〜ってくらい違う世界へ堕ちていく感じとか(笑)、少女マンガの域を超えてあるあるだった。
ただそれでも、華々しくスター街道を歩み始めた夏芽との縁が切れきらないところや、コウが光を取り戻していくところで、少女漫画の役目をバッチリ果たしてくれている。
この絶妙な、辛さと甘さの塩梅が、たまらない。
最後に、私事ですが(大体全部私事ですが 笑)、恋愛観が変わったなあと、この漫画を読み終えて実感した。
数年前だったら、私は迷わず絶対に「コウ」を選んだ。でも今は「大友」がいい。別に結婚を想像するからとか、浮気されなそうだからとか、そんな打算もぜーんぶ抜きにして、私だったら、大友のあったかい腕の中にいたい。
恍惚は、恋愛ではなく仕事で得たい。
「無限ではなく普遍がいい」と願った大友のような人の横で、笑っていたい。そう、本気で思った。
数年前の私からは考えられないことだ。恋愛観、年齢とともにこんなにも変わるとは……。自分でも驚き。
そして芸能界で活躍することを長年目標にしてきた私にとって、何より羨ましくて仕方なかったのは、広能さんの存在だ。この辺りは、昔から何も変わっていないなあと思う。
映画も観たけれど、私の好みではなかった。主演の小松菜奈さんも、菅田将暉さんも素晴らしかったのだけど、時間が足りずもったいない感じがした。全17巻もあるお話なので、"花より男子" のように連ドラだったら良かったのかも。それか "僕等がいた(映画は観てないけど)" のように、2部作だったら良かったかもしれない。またライトな感じも、原作の良さが消えている気がして残念だった。R指定にして、もう少しダークにしても良かったのではないかと個人的には思う。
好き勝手に書いたけど、私としては、原作はおすすめ!