【映画メモ】17歳の肖像
■公開:2009年/イギリス、2010年/日本
■原作:リン・バーバー
■監督: ロネ・シェルフィグ
■脚本:ニック・ホーンビィ
■キャスト:キャリー・マリガン など
※ネタバレあり。
「彼はあなたの知性を尊重してる?」
歳上の彼デイヴィッド・ゴールドマンに出会ってから、成績が落ち始めた優等生の主人公ジェニー・メラーに担任教師が投げかける言葉。
私にとってはこの一言が、この映画を象徴するものに感じられた。なぜならもしデイヴィッドがジェニーの知性を尊重するような男性だったら、ジェニーが投げかけた問いの答えや、物語の結末は変わっていたと思うからだ。
ユダヤ人であるデイヴィッドとの結婚に批判的な校長先生の
「勉強はつらく退屈でも、教養があれば教師にもなれる」 という言葉に対してジェニーがぶつける疑問。
「勉強が退屈ってことは教職も退屈? 退屈なことをし続けて死ぬまで退屈しろと? 退屈な人生ならいらない。ユダヤ人との結婚を選ぶわ。パリやローマへ行きジャズを聴き、読書や豪華な食事を楽しむの。教育するならその意義も教えてください」
ジェニーの問いには答えず「教員のほかに公務員にもなれるわよ」と言った校長先生に彼女はこう返す。
「今の疑問への答えは用意しておくべきだわ」
お堅い平凡な道には価値がないと嘆く17歳の少女の気持ちも、彼はあなたの知性を尊重しているのかと問うた担任教師の気持ちも、31歳の私の胸には強く響いた。
校長先生や担任教師へ、単調でつまらない人生に意味があるのかと疑問を投げかけたジェニーが、「浅はかでした」と謝罪したとき、彼女はきっと、少しだけ人生を理解した。だからと言って、あの疑問が消えたわけではない。ジェニーの中からも、教師たちの中からも。ただ、堅実な道を教える大人が、好奇心旺盛な少女の問いに、簡単には答えることができなかった、その曖昧さや複雑さの中で、人は選択や決断を繰り返し、自分なりの人生を築いていかなければならないのだと、きっと彼女は覚悟したはずだ。
この映画のような美しい絵には決してならないけれど、自分の思春期と重なるものが確かにあった。
きっと多くの女性が、そう感じるのではないだろうか。
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