メルマガ『東医宝鑑(東醫寶鑑)とういほうかん─古典から東洋医学を学ぶ─』第127号「陰虚用藥」の処方「大補陰丸」他 ─「虚労」章の通し読み ─
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第127号
○ 「陰虚用藥」の処方「大補陰丸」他
─「虚労」章の通し読み ─
◆ 原文
◆ 断句
◆ 読み下し
◆ 現代語訳
◆ 解説
◆ 編集後記
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こんにちは。「虚労」章の通し読み、「陰虚用藥」の具田的な
処方解説です。
◆原文◆(原本の文字組みのままを再現・ただし原本は縦組み
・ページ数は底本の影印本のページ数)
(「虚勞治法」 p445 下段・雜病篇 虚勞)
大補陰丸
降陰火壯腎水之要藥黄栢鹽酒拌炒褐
色知母酒炒各四兩熟地黄龜板酥灸各
六兩右爲末猪脊髓和煉蜜爲丸
梧子大空心鹽湯下七九十丸入門
加味補陰丸
補陰虚瀉陰火黄栢知母各四兩牛膝
杜仲巴戟熟地黄山茱萸各三兩肉〓(〓くさかんむり従)
蓉白茯苓枸杞子遠志山藥鹿茸龜板各二
兩右爲末蜜丸梧子大鹽湯下八九十丸入門
虎潛丸
治陰虚勞證龜板黄栢各四兩熟地黄知母
各三兩白芍藥當歸瑣陽各二兩陳皮虎骨
各一兩乾薑五錢右爲末酒糊和丸梧子大鹽湯
下七九十丸丹心○一方煮羊肉汁和丸名曰龍虎
丸
丹心
濟陰丸
治同上龜板黄栢各二兩七錢牛膝兎絲子
各一兩二錢半當歸知母瑣陽各一兩陳皮
虎骨山藥白芍藥縮砂杜仲黄〓鹽水炒熟地黄
各七錢枸杞子五錢破故紙三錢半右爲末以熟
地黄酒蒸爲膏和丸梧子
大空心鹽湯下七十丸丹心
▼断句▼(原文に句読点を挿入、改行は任意)
大補陰丸
降陰火、壯腎水之要藥。黄栢鹽酒拌炒褐色、
知母酒炒各四兩、熟地黄、龜板酥灸各六兩。
右爲末、猪脊髓和煉蜜爲丸梧子大、空心、
鹽湯下七九十丸。『入門』
加味補陰丸
補陰虚、瀉陰火。黄栢、知母各四兩、
牛膝、杜仲、巴戟、熟地黄、山茱萸各三兩、
肉〓(〓くさかんむり従)蓉、白茯苓、枸杞子、
遠志、山藥、鹿茸、龜板各二兩。
右爲末、蜜丸梧子大、鹽湯下八九十丸。『入門』
虎潛丸
治陰虚勞證。龜板、黄栢各四兩、熟地黄、知母各三兩、
白芍藥、當歸、瑣陽各二兩、陳皮、虎骨各一兩、
乾薑五錢。右爲末、酒糊和丸梧子大、
鹽湯下七九十丸。『丹心』
一方、煮羊肉汁和丸、名曰龍虎丸。『丹心』
濟陰丸
治同上。龜板、黄栢各二兩七錢、牛膝、兎絲子各一兩二錢半、
當歸、知母、瑣陽各一兩、陳皮、虎骨、山藥、白芍藥、
縮砂、杜仲、黄〓(〓くさかんむり氏)鹽水炒、
熟地黄各七錢、枸杞子五錢、破故紙三錢半。
右爲末、以熟地黄酒蒸爲膏和丸梧子大、空心、
鹽湯下七十丸。『丹心』
●語法・語(字)釈●(主要な、または難解な語(字)句の用法・意味)
特になし
▲訓読▲(読み下し)
大補陰丸
陰火を降し、腎水を壯にするの要藥なり。
黄栢鹽酒に拌し炒りて褐色にし、
知母酒炒し各四兩、熟地黄、龜板酥灸し各六兩。
右末と爲し、猪脊髓を煉蜜に和して丸と爲すこと梧子の大、
空心、鹽湯にて下すこと七九十丸。『入門』
加味補陰丸
陰虚を補ひ、陰火を瀉す。黄栢、知母各四兩、
牛膝、杜仲、巴戟、熟地黄、山茱萸各三兩、
肉〓(〓くさかんむり従)蓉、白茯苓、枸杞子、
遠志、山藥、鹿茸、龜板各二兩。
右末と爲し、蜜にて梧子の大に丸め、
鹽湯にて下すこと八九十丸。『入門』
虎潛丸
陰虚の勞證を治す。龜板、黄栢各四兩、熟地黄、知母各三兩、
白芍藥、當歸、瑣陽各二兩、陳皮、虎骨各一兩、
乾薑五錢。右末と爲し、酒糊に和し梧子の大に丸め、
鹽湯にて下すこと七九十丸。『丹心』
一方、羊肉を煮る汁に和し丸む、名けて龍虎丸と曰ふ。『丹心』
濟陰丸
治すこと上に同じ。龜板、黄栢各二兩七錢、牛膝、兎絲子各一兩二錢半、
當歸、知母、瑣陽各一兩、陳皮、虎骨、山藥、白芍藥、
縮砂、杜仲、黄〓(〓くさかんむり氏)鹽水にて炒し、
熟地黄各七錢、枸杞子五錢、破故紙三錢半。
右末と爲し、熟地黄を以て酒蒸して膏と爲し和し
梧子の大に丸め、空心、鹽湯にて下すこと七十丸。『丹心』
■現代語訳■
大補陰丸(だいほいんがん)
陰火を降し、腎水を壮んにする要薬である。
黄柏を塩酒に混ぜ炒って褐色にしたもの、
知母を酒炒したもの各四両、熟地黄、亀板を酥で灸ったもの各六両。
以上を粉末にし、猪の脊髓を、煉った蜜に混ぜて
梧桐(アオギリ)の種の大きさに丸め、
空腹時に塩湯で七十から九十丸を飲み下す。『入門』
加味補陰丸(かみほいんがん)
陰虚を補い、陰火を瀉する。黄柏、知母各四両、
牛膝、杜仲、巴戟、熟地黄、山茱萸各三両、
肉〓(〓くさかんむり従)蓉、白茯苓、枸杞子、
遠志、山藥、鹿茸、亀板各二両。
以上を粉末にし、蜜にて梧桐の種の大きさに丸め、
塩湯で八十から九十丸を飲み下す。『入門』
虎潛丸(こせんがん)
陰虚の労証を治する。亀板、黄柏各四両、熟地黄、知母各三両、
白芍薬、当帰、瑣陽各二両、陳皮、虎骨各一両、
乾姜五銭。以上を粉末にし、酒に混ぜて糊状にし(酒糊にし)、
梧桐の種の大きさに丸め、
塩湯で七十から九十丸を飲み下す。『丹心』
一方に、羊肉の煮汁に混ぜて丸めたものを龍虎丸と呼ぶ。『丹心』
濟陰丸(せいいんがん)
主治は同上。亀板、黄柏各二両七銭、牛膝、兎絲子各一両二銭半、
当帰、知母、瑣陽各一両、陳皮、虎骨、山薬、白芍薬、
縮砂、杜仲、塩水で炒った黄〓(〓くさかんむり氏)、
熟地黄各七銭、枸杞子五銭、破故紙三銭半。
以上を粉末にし、酒蒸した熟地黄を膏としたものと混ぜて
梧子の大に丸め、空腹時に塩湯で七十丸を飲み下す。『丹心』
★解説★
前号部分に続き「陰虚用藥」の具体的な処方が挙げられています。
湯液篇の生薬解説の流れにもある程度一定の順序があったように、ここでも
まず主治が挙げられ、それから具体的な生薬が分量とともに記載され、しか
も挙げられる順番は概ね量が多い順で、それから生薬全体の処置の仕方、服
用の仕方、などの順で説かれていることがわかります。
これらは前号で書いたように、雑然と並べられているわけではなく、個々の
構成する生薬を具体的に検討することで、それらの使い分けが吟味できるよ
うになっています。
これからまだまだ処方の列挙が続くわけですが、この「陰虚用藥」では、上
の虎潛丸の中に一方として説かれた龍虎丸などを数に入れずに17の項目立て
で処方が挙げられています。
そしてこの次にくる項目が「陽虚用藥」ですが、そちらでは半数ほどの9が挙
げられています。
なぜ「陰虚用藥」の方が「陽虚用藥」より先に置かれ、またその処方数も多
く列挙されているのか、理由はわかりますよね?
いつも書きますように、構成する順番にもちゃんと意味を持たせられており、
ここでも一定の思想のもとに配置、また処方数などまでも考えて構成されて
いる、というわけです。
◆ 編集後記
具体的な処方の列挙が続きます。上に書きましたようにこの項だけでまだ10
以上も処方が残っています。いかにこの項が重要視されたかが、項目の配置
や処方数などにも表れているようです。
こうした処方解説部分は上のように「右爲末」「丸梧子大」「空心」などな
ど、ほとんど定型句のような文章が多くあり、読んでいくうちに何度も登場
します。そのような文を一覧表にしておくと、その部分は機械的に読むこと
ができるので便利ですね。
医古文読解のそうしたハンドブックのようなもの、今まであるでしょうか?
いずれはそうした定型句や句法、語法などを要領よくまとめたハンドブック
的な本もまとめてみたいところではあります。
(2015.06.13.第127号)
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◇ 東医宝鑑(東醫寶鑑)とういほうかん─古典から東洋医学を学ぶ─ ◆
発行者 東医宝鑑.com touyihoukan@gmail.com
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