メルマガ『東医宝鑑(東醫寶鑑)とういほうかん─古典から東洋医学を学ぶ─』第314号「節慾儲精」3 (内景篇・精)
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◇ 東医宝鑑(東醫寶鑑)とういほうかん─古典から東洋医学を学ぶ─ ◆
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第314号
○ 「節慾儲精」3 (内景篇・精)
◆ 原文
◆ 断句
◆ 読み下し
◆ 現代語訳
◆ 解説
◆ 編集後記
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こんにちは。「節慾儲精」の残りです。
◆原文◆(原本の文字組みのままを再現・ただし原本は縦組み
・ページ数は底本の影印本のページ数)
(「節慾儲精」p82 下段・内景篇・精)
仙
書曰慾多則損精苟能節精可得長壽也〇靜坐
則腎水自升獨居則房色自絶入門〇宜縮陽秘方.
▼断句▼(原文に句読点を挿入、改行は任意)
仙書曰、慾多則損精、苟能節精、可得長壽也。
靜坐則腎水自升、獨居則房色自絶。入門。
宜縮陽秘方。
●語法・語釈●(主要な、または難解な語句の用法・意味)
苟 いやしく-も 祈りの思いや希望を表す。
「願わくば」「どうか・・・してもらいたい」
▲訓読▲(読み下し)
仙書(せんしょ)に曰(いは)く、
慾(よく)多(おほ)きときは則(すなは)ち
精(せい)を損(そん)ず、苟(いやしく)も能(よ)く
精(せい)を節(せつ)にして、
長壽(ちょうじゅ)を得(う)るべし。
靜坐(じょうざ)するときは則(すなは)ち
腎水(じんすい)自(をのづか)ら升(のぼ)り、
獨居(どっきょ)するときは則(すなは)ち
房色(ぼうしょく)自(をのづか)ら絶(た)つ。
入門(にゅうもん)。
縮陽(しゅくよう)の秘方(ひほう)に宜(よろ)し。
■現代語訳■
仙書に説くには、
慾が多いと精を損じてしまう。
願わくばしかと精を節して長寿を得るべきである。
静坐をすれば自然に腎水が上昇し、
独居すれば自然に色慾を絶つことができる。『入門』
縮陽の秘方を施すとよい。
★ 解説 ★
「節慾儲精」の最後の部分、短い文ですが三段の文章があります。
一段目はこの項目の「節慾儲精」そのままの内容を語っています。
二段目は原文または訓読で見るとより対比の構造がわかりやすいですが、「静坐」と「独居}のふたつを取り上げ、これを「節慾儲精」の要項として勧めていることになります。
後者「独居」で色慾(原文では房色)を絶つことができるのは理解しやすいですが、「静坐」で「腎水」を昇らせることができる、というのはどういう機序で、これが何に良いのでしょうか?
これは考察テーマとして解説しないでおきたいと思いますが、「腎水」が昇ることによってどんなメリットがあると想定しているのでしょうか、昇るものがあるからにはセットになって降るものもあるのでしょうか?
そしてここでは静坐のメリットとしてこの腎水を昇らせる効用があると想定していることも読み取れます。
静坐の効用には身体的、心理的、いろいろなことが考えられそうですが、ここではそれに東洋医学的な観点で腎水を昇らせることの効用を見ているわけです。
最後の三段目は次の項目への繋ぎです。次にこの「縮陽秘方」が説かれることになります。
先行訳に関して、三段目を省略し、前の二つはひとまず訳してありますが、特に上で取り上げた「腎水」の部分を、「腎水を昇らせる」ではなく、「静坐すれば腎水が流れ、」としています。
このニュアンスですと「腎水」が流れるのが良いことなのか、良くないことなのかがわかりにくく、そもそも「流れる」では原文の意味を大きく損ねていますよね。
なぜならここでは「昇る」「上昇する」に意味と効用を見ているのであって、「流れる」ではどこに流れるのか、下に流れるのか、左右に流れるのか、など部位がわからず、また上に見たように「流れる」のニュアンスが良いことなのか、良くないことなのか、の判断がつきにくい訳語となってしまうからです。
ここでは素直に原文のままに、「昇る」「上昇する」とするのが妥当ですよね。
◆ 編集後記
「節慾儲精」の続きにして最後の部分です。
今号が平成最後の配信で、次号は令和最初の配信となります。世間はお休みですが、このメルマガは平素通り、できれば週一配信を固守したいと思いま
す。
(2019.04.28.第314号)
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