メルマガ『東医宝鑑(東醫寶鑑)とういほうかん─古典から東洋医学を学ぶ─』第56号 タダでできる健康法特集「按摩導引 あんまどういん」その15「摩精門」
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◇ 東医宝鑑(東醫寶鑑)とういほうかん─古典から東洋医学を学ぶ─ ◆
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第56号
○ タダでできる健康法特集「按摩導引 あんまどういん」その15
「摩精門」
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こんにちは。「按摩導引」前号分の続きになります。
今度は一気に腰の導引になります。
◆原文◆
按摩導引(p76 上段・内景篇 身形)続き
閉氣搓手熱(鼻引清氣閉之少頃搓手令極熱鼻中徐徐放氣出)
背摩後精門(精門者腰後外腎也合手心摩畢收手握固)
▼断句▼
閉氣搓手熱。(鼻引清氣、閉之少頃、搓手令極熱、鼻中徐徐放氣出)
背摩後精門。(精門者、腰後外腎也。合手心摩畢、收手握固)
●句法・語釈●
・語釈
搓 サ、サイ、よる 両手をもみあわせる
頃 ケイ、キョウ 短時間、しばらく、時、時間
畢 ヒツ、ヒチ おわる、おえる
■現代語訳■
息を止め、手を擦り熱し、
(鼻より清い空気を吸い、しばらく止める。
手を擦り極めて熱くし、鼻から徐々に息を吐き出す)
背に当て精門を摩する。
(精門とは、腰の外腎の部位に当たる。
手を擦り合わせた後は、再び握固に戻す)
★解説★
「按摩導引」の続きです。前の部分は口の中の作業でしたが、ここで一気に
腰への導引となります。これも原文の注釈がほぼ全てを語ってくれています
ね。
やはり以前にこの按摩導引の項で両手を擦って目に当てる動作があり、そこ
で手の擦りかたや、なぜ手を擦って熱くするのかなど解説しましたが、ここ
では同じ動作で手を熱くして、腰を上下に擦ります。
以前の解説で摩擦で手から火が出るかと思うぐらいに熱くすることができる、
と書きましたが、ここで原文も「極熱」と書いてあるのが印象的で、軽く擦
るのではなく、熱く熱くすることが肝要であることがわかります。
この動作は不老長寿を呼ぶ動作として今でもよくなされるものです。
では、なぜ腰を擦るのか、また腰を擦ることが長寿に繋がるのかは、すでに
耳と腎との関係を解説した時に、腎が生命力の根本を司ると書きましたが、
それと同様の理由です。
最後に、動作が終わったら手をまた握固に戻すとあります。
ということは、今まで触れられていませんでしたが、一連の動作の最中は、
常に握固をしている、ということですね。
握固の効用についてもすでに書きましたが、ここで一連の動作の間にずっと
握固をしているという点から検証すれば、さらに詳細に握固の効用が類推で
きますね。
つまり、気が外に漏れないように、身体の内側で廻らせるようにするため、
という理由がここでよくわかります。
ではさらに、なぜ親指を握ることが気を漏らさないことになるのかと言うと、
これはまだ解説していない経絡と関係があるのですが、指は普通片手に五本
ありますが、拇指、つまり親指以外の指は真っ直ぐに4本揃っているのに、拇
指だけ離れていますよね。
そして、この離れている拇指のところで気の流れが途切れやすい、という考
え方があるのです。
ヨーガの瞑想などで親指と人差し指を丸くして坐るのをご存じの方もいらっ
しゃるかもしれませんが、あれも途切れている親指と人差し指の気の流れを
繋いで、身体に気がしっかりと廻るようにするため、という説もあるのです。
そして、ここでは親指全体をしっかりと握ることによって、気の流れを整え、
さらに外に向かいがちな心も内側に繋ぎとめておく、という効用もあると思
います。
ここで以前引用をお借りした『医心方』よりの握固の項に再び登場してもら
いましょうか。
またいうには、
「魂の門をおさえ、魄の戸をしめよ。これを名付けて握固という。
握固は人の魂魄を安定させる。
魂門と魄戸は、両手の親指のつけ根の内側と爪の甲の近くにある。
ここから精気をもらさぬよう、しっかりとそなえをすることが、
視力を良くして歳をとらず、白髪を黒髪にもどす方法である。
もし、しっかりと終日、親指を握っていれば、邪気も、あらゆる
毒気も体内に入ることができない。」
『医心方 巻二十七 養生篇』丹波康頼撰
槇佐知子全訳精解 筑摩書房 p157.158より
つまり、気と心を内側に向け、さらに外からの悪いものが入ることを防ぐ、
という効用も見ていることがわかりますね。
これを普段にも応用して、何もない時には常に握固をしている、というのも
よいのではないでしょうか。
◆ 編集後記
メルマガの読者登録数がおかげさまで100を超えることができました。
以前配信が止まる前は50前後でしたので、いつの間にか倍以上の方々がご登
録くださったことになります。継続してお待ちいただいた方、また新たにご
登録いただいた方に、改めてお礼申し上げます。
ありがたいことに、グーグルで「東医宝鑑」または「東醫寶鑑」で検索する
と、どちらもトップページに私のメルマガやブログがヒットするようになり
ました。グーグルは検索されればされるほど上位でヒットするようになって
いて、状況によって揺れはありますが、現在「東醫寶鑑」で検索すると、
トップのウィキペディアのすぐ、画像検索結果よりも上に出てくれます。
それだけこのメルマガやブログをご覧くださる方が多いということで、あり
がたいことと思います。
また反対に、トップに表示されるということは、初めてこの語で検索した方
にはほぼ確実にご覧いただけるコンテンツにもなったということで、日本で
東医宝鑑と言えばまさにこのメルマガ!(?)、地道に活動することの大切
さを改めて実感します。
翻訳の完成までには多くの時間が必要ですが、メルマガ創刊当時に書いたよ
うに、途中のプロセスを公開することで少しでもお役に立てたら、と初めた
ことでもありますので、同じ書くのなら多くの方にお役に立てる方が嬉しく、
どんどん普及していけば嬉しく思います。
(2012.10.25.第56号)
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◇ 東医宝鑑(東醫寶鑑)とういほうかん─古典から東洋医学を学ぶ─ ◆
発行者 東医宝鑑.com touyihoukan@gmail.com
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