メルマガ『東医宝鑑(東醫寶鑑)とういほうかん─古典から東洋医学を学ぶ─』第107号「屋霤水(瓦屋根から流れ落ちた水)」「茅屋漏水(茅屋根から流れ落ちた水)」
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第107号
○ 「屋霤水(瓦屋根から流れ落ちた水)」
「茅屋漏水(茅屋根から流れ落ちた水)」
◆ 原文
◆ 断句
◆ 読み下し
◆ 現代語訳
◆ 解説
◆ 編集後記
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こんにちは。水の項目の13、14番目の「屋霤水」「茅屋漏水」です。
◆原文◆(原本の文字組みのままを再現・ただし原本は縦組み
・ページ数は底本の影印本のページ数)
(「屋霤水」「茅屋漏水」 p679 下段・湯液篇 巻一)
屋霤水
主洗犬咬瘡以水
澆屋簷承取用之又以水滴簷下令土濕取土
付犬咬瘡即差○有大
毒誤食必生惡瘡本草
茅屋漏水
殺
雲母毒煉雲母時用之本草
▼断句▼(原文に句読点を挿入、改行は任意)
屋霤水
主洗犬咬瘡、以水澆屋簷、承取用之。
又以水滴簷下、令土濕、取土付犬咬瘡、即差。
有大毒、誤食必生惡瘡。『本草』
茅屋漏水
殺雲母毒、煉雲母時、用之。『本草』
●語法・語釈●(主要な、または難解な語句の用法・意味)
語釈
屋霤(オクリュウ)雨だれ受けの桶。雨だれ
霤(リュウ)したたり、屋根から流れ落ちる雨水
澆(ギョウ、キョウ)そそぐ、灌漑する、水をかける
屋簷(オクエン)ひさし、家の軒
簷(エン)のき、ひさし、屋根のはし
▲訓読▲(読み下し)
屋霤水
犬咬瘡を洗ふことを主る、
水を以て屋簷(オクエン)に澆(そそ)ぎて、
承け取りてこれを用ゆ。
又水簷下(エンカ)に滴るを以て、
土をして濕(うるほ)しめて、
土を取りて犬咬瘡に付れば、即ち差ゆ。
大毒有り、誤りて食へば必ず惡瘡を生ず。『本草』
茅屋漏水
雲母の毒を殺す、雲母を煉る時、これを用ゆ。『本草』
■現代語訳■
屋霤水(瓦屋根から流れ落ちた水)
犬に咬まれた傷を洗うのに主として用いる。
家の軒に水を注ぎ、受けてこれを用いる。
または軒下に滴る水を取り、
土に浸して犬に咬まれた傷に付ければ、すぐに治癒する。
大毒があり、誤って摂取すると必ず悪瘡を生じる。『本草』
茅屋漏水(茅屋根から流れ落ちた水)
雲母の毒を消し、雲母を練るのに用いる。『本草』
★解説★
水の13、14番目の「屋霤水」「茅屋漏水」です。
メルマガではハングル表記ができませんので原文表記では省略し、現代語訳
の部分にのみその日本語訳をカッコでくくって記してありますが、以前にも
書いたようにそのハングルは編纂当時、400年前の朝鮮語です。
この意味を調べるのがなかなか難しくまた面白く、韓国の現代語辞典だけで
は解決できないことがほとんどです。表記のハングル自体が、現代では使わ
れないものが多々含まれています。
今号の「茅屋漏水」などは、「茅」の部分は今ではまず「新しい」と言う意
味で使われる単語が書かれており、普通に訳すと「新しい家から流れ落ちた
水」となってしまいます。私もはじめはそう解釈しました。でも項目名や本
文の意味に鑑みると「新しい家」はどう考えてもおかしいですよね。
実際に私の手元の現代語の韓国語辞典には「新しい」を含めて4つの意味が
載っていますが「茅」という意味は記載がなく、古語の記載も含んだ、日本
の広辞苑をもっと大きくしたような韓国の『国語大辞典』を調べてようやく
「茅」の記載を発見し、これが「茅を使った家から流れ落ちた水」だと腑
に落ちました。
原文に記載されているハングルを現代の韓国の方が読んでどれぐらいの難易
度なのか、普通に読んで読めるのか、それとも専用の学習を経て初めて読め
る程度のものなのか、今回は間に合いませんでしたが、いずれ韓国の友人に
訪ねてみたいと考えています。
さて、今回はふたつとも屋根から落ちた水で、一つ目は瓦などの屋根、二つ
目は茅の屋根となっています。項目の流れとしては季節の括りがひと段落し
て、別の流れに入ったことを伺わせますね。
前者「屋霤水」は大毒があるとしていて、その根拠が不明で状況によって毒
の有無が違うのではと思いますが、一様に大毒としているところが不思議な
ところです。
しかもまことしやかに「飲むと必ず悪瘡を生じる」などと説かれていて、
「ホンマかいな?オマエ見たんか?」と思わずツッコミたくなるような記述
すらあります。この辺りは実際に試した部分と、伝承で伝わってきてそのま
まの部分がないまぜになっていて玉石混交なのを感じます。
ただ私自身が試したわけではないですのでこの記述がまやかしだと一概に決
めつけるわけにはいきません。かつての屋根にはそのような成分が含まれて
いたのかもしれません。時代と地域を無視して現代視点で決めつけることの
危険もないわけではなく、一見まやかしに見えるような部分こそ、しっかり
と検証する必要がある部分なのかもしれません。
◆ 編集後記
年明け後も週一配信を保てています。
以前書きましたように今まで東医宝鑑の邦訳は私が知る限り一点出ています
が、省略が多く、また誤訳もかなりあります。またこの湯液篇のハングル表
記部分は翻訳を完全にスルーしてしまっています。既出の翻訳をお持ちの方
は、ぜひこのメルマガでお持ちの翻訳の補足をなさっていただけたらと思い
ます。
また先行の訳には原文がありませんので訳の誤りを検討することができませ
ん。私がメルマガに原文を記載しているのも、私の訳や解説を鵜呑みにせず
ず、原文から検討して批判的にお読みいただきたいためで、その点では非常
に良心的な体裁(笑)と言えます。
また、先行の翻訳をお読みになられて誤訳では?と疑問を持たれた部分、原
文から読んでみたい部分などおありでしたら、ご意見お寄せくださればそち
らをメルマガで優先的に取り上げることもできます。
メルマガは配信されたメールに返信されますと、配信者である私の手許にメー
ルが届くという便利なシステムになっていますので、ご意見ご要望など、お
気軽にお寄せくだされば幸いです。
(2015.01.16.第107号)
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