メルマガ『東医宝鑑(東醫寶鑑)とういほうかん─古典から東洋医学を学ぶ─』第310号「大鳳髓丹」「秘眞丸」 (内景篇・精)
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◇ 東医宝鑑(東醫寶鑑)とういほうかん─古典から東洋医学を学ぶ─ ◆
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第310号
○ 「大鳳髓丹」「秘眞丸」 (内景篇・精)
◆ 原文
◆ 断句
◆ 読み下し
◆ 現代語訳
◆ 解説
◆ 編集後記
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こんにちは。「精宜秘密」の具体的な処方の続き
「大鳳髓丹」「秘眞丸」です。
◆原文◆(原本の文字組みのままを再現・ただし原本は縦組み
・ページ数は底本の影印本のページ数)
(「大鳳髓丹」「秘眞丸」p82 上段・内景篇・精)
大鳳髓丹
治心火旺盛腎水不足心有所欲速於感
動疾于施泄黄柏炒二兩縮砂一兩甘草
五錢半夏炒猪苓茯苓紅蓮蘂益智仁各二錢五
分右爲末鹽水和丸梧子大空心糯米飮呑下五
十丸或七十丸海藏
〇一名封髓丹
秘眞丸
一名秘元丹治精氣不固白龍骨一兩〓研(〓上口・下力)
大訶子皮五箇朱砂五錢内一分爲衣縮砂五錢
右爲末糯米糊和丸緑豆大朱砂爲衣空心鹽
酒下二丸臨臥冷水下三丸不可多服太秘河間
▼断句▼(原文に句読点を挿入、改行は任意)
大鳳髓丹
治心火旺盛、腎水不足。心有所欲、速於感動、疾于施泄、
黄柏炒二兩、縮砂一兩、甘草五錢、半夏炒、猪苓、茯苓、
紅蓮蘂、益智仁各二錢五分。右爲末、鹽水和丸梧子大、
空心、糯米飮呑下五十丸、或七十丸。海藏。
一名封髓丹。
秘眞丸
一名秘元丹。治精氣不固。白龍骨一兩〓(上口・下力)研、
大訶子皮五箇、朱砂五錢内一分爲衣、縮砂五錢。
右爲末、糯米糊和丸緑豆大、朱砂爲衣。
空心、鹽酒下二丸、臨臥冷水下三丸、
不可多服。太秘。河間。
●語法・語釈●(主要な、または難解な語句の用法・意味)
▲訓読▲(読み下し)
大鳳髓丹(だいほうずいたん)
心火旺盛(しんかおうせい)、腎水不足(じんすいふそく)するを治す。
心(しん)欲(ほっす)る所(ところ)有(あ)れば、
感動(かんどう)に速(すみや)かにして、
施泄(せせつ)に疾(と)し。
黄柏(おうばく)炒(い)り二兩(にりょう)、
縮砂(しゅくしゃ)一兩(いちりょう)、
甘草(かんぞう)五錢(ごせん)、半夏(はんげ)炒(い)り、
猪苓(ちょれい)、茯苓(ぶくりょう)、紅蓮蘂(こうれんずい)、
益智仁(えきちにん)各二錢五分(おのおのにせんごぶ)。
右(みぎ)末(まつ)と爲(な)し、鹽水(えんすい)に和(わ)し
梧子(ごし)の大(おほひ)さに丸(まる)め、
空心(くうしん)、糯米飮(こうべいいん)にて
五十丸(ごじゅうがん)、或(あるひ)は
七十丸(しちじゅうがん)を呑(の)み下(くだ)す。
海藏(かいぞう)。
一名(いちめい)封髓丹(ほうずいたん)。
秘眞丸(ひしんがん)
一名(いちめい)秘元丹(ひげんたん)。
精氣(せいき)固(かたま)らざるを治(ち)す。
白龍骨(はくりゅうこつ)一兩(いちりょう)
〓(べつ)に研(す)り、
大訶子皮(だいかしひ)五箇(ごこ)、
朱砂(しゅしゃ)五錢(ごせん)
内(うち)一分(いちぶ)を衣(ころも)と爲(な)す、
縮砂(しゅくしゃ)五錢(ごせん)。
右(みぎ)末(まつ)と爲(な)し、
糯米糊(こうべいこ)に和(わ)し
緑豆(りょくどう)の大(おほひ)さに丸(まる)め、
朱砂(しゅしゃ)を衣(ころも)と爲(な)す。
空心(くうしん)に鹽酒(しおゆ)にて
下(くだ)すこと二丸(にがん)、
臨臥(りんが)に冷水(れいすい)にて
下(くだ)すこと三丸(さんがん)、
多(おほ)く服(ふく)すべからず。太(はなは)だ秘(ひ)す。
河間(かかん)。
■現代語訳■
大鳳髓丹
心火が旺盛して腎水が不足する者を治する。
心に欲望があれば、感じ動ずること速やかになり、
精が漏れることが早くなる
黄柏炒り二両、縮砂一両、甘草五銭、半夏炒り、
猪苓、茯苓、紅蓮蘂、益智仁、各二銭五分。
以上を粉末にし、塩水に混ぜ、青桐の種子の大きさに丸め、
空腹時に、糯米の重湯で五十丸、或いは七十丸を服用する。
海藏。
一名を封髓丹と呼ぶ。
秘真丸
一名を秘元丹と呼ぶ。
精気が固まらない者を治する。
白龍骨一両を別に研り、
大訶子皮五個、朱砂五銭の内一分を衣にする、
縮砂五銭。
以上を粉末に資、糯米の糊に混ぜ、
緑豆の大きさに丸めて、朱砂を衣とする。
空腹時に塩湯で二丸を、就寝時に冷水で三丸を服用する。
精が固まりすぎるため、多くを服用してはならない。
河間。
★ 解説 ★
「精宜秘密」の処方、ふたつめとみっつめ「大鳳髓丹」「秘眞丸」です。
前号、ひとつめの 金鎖思仙丹では主治が「治精氣不固」でした。ここでも似たような、特に下の秘真丸では全く同じの主治が挙げられています。
ではどのように使い分ければよいのかは、ここには書いていませんが、やはり個々の生薬の構成で見てゆくとよいのではと思います。
また「治精氣不固」、精気が固まらない者、とはどんな症状か、ここまで読んで来られた方にはわかりますよね。
面白いことに、秘真丸では「不可多服。太秘。」とあり、服用しすぎると「太秘(太だ秘す)」と言っています。この「秘」は項目でも言われ、前にも少し解説した「秘密」の「秘」ですよね。今の日本でも「便秘」と言う言葉が日常語のように使われますが、その「秘」を考えるとここでの「秘」の意味がわかりやすいと思います。
ここで面白いのは「太秘」、つまり薬の作用が強くて、服用しすぎると秘の程度が大きくなりすぎる、と言っている点です。
つまり、秘しすぎても良くない、という発想があることがわかります。
ではなぜ秘しすぎるとよくないのでしょうか?これもひとつの考察テーマと
なりそうです。
先行訳については、細かく取り上げませんが、ここでも省略、またかなりひどい誤訳がありますので、お持ちの方はご覧いただき補足訂正してくださればと思います。
◆ 編集後記
「精宜秘密」の処方、5つのうち2番目と3番目です。次号で残り二つを読む
予定です。
(2019.03.31.第310号)
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