メルマガ『東医宝鑑(東醫寶鑑)とういほうかん─古典から東洋医学を学ぶ─』第122号 夏も近づく八十八夜号「辨氣虚血虚陽虚陰虚(気虚、血虚、陽虚、陰虚を弁別する)」―「虚労」章の通し読み ―

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  第122号 夏も近づく八十八夜号

    ○ 「辨氣虚血虚陽虚陰虚
      (気虚、血虚、陽虚、陰虚を弁別する)」
      ―「虚労」章の通し読み ―

      ◆ 原文
      ◆ 断句
      ◆ 読み下し
      ◆ 現代語訳
      ◆ 解説 
      ◆ 編集後記

           

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 こんにちは。「虚労」章の通し読み、前号以上に長いですが、これも一気に
 一項目読んでしまいます。


 ◆原文◆(原本の文字組みのままを再現・ただし原本は縦組み
      ・ページ数は底本の影印本のページ数)


 (「辨氣虚血虚陽虚陰虚」 p444 上段・雜病篇 虚勞)


 辨氣虚血虚陽虚陰虚

    虚脉多弦弦而濡大無力爲氣
      虚○脉沈微無力爲氣虚甚○
  脉弦而微爲血虚○脉澁而微爲血虚甚○形肥
  而面浮白者陽虚○形痩而面蒼黒者陰虚入門○
  房勞思慮傷心腎則陰血虚○飢飽勞役傷胃氣
  則陽氣虚此傷證之至要也入門○呼吸少氣懶言
  語動作無力目無精光面色晄白此兼氣虚也海藏
  ○右脉浮而大或大而弦皆爲虚勞盖陽盛陰虚
  之證暮多見之○右脉虚微細弦爲虚勞者乃陰
  陽倶虚之證也晨多見之保命○此條當與火熱門
  參
  看

 ▼断句▼(原文に句読点を挿入、改行は任意)


 辨氣虚・血虚・陽虚・陰虚

  虚脉多弦、弦而濡大無力、爲氣虚。

  脉沈微無力、爲氣虚甚。脉弦而微、爲血虚。

  脉澁而微、爲血虚甚。形肥而面浮白者、陽虚。

  形痩而面蒼黒者、陰虚。『入門』

  房勞思慮傷心腎、則陰血虚。飢飽勞役傷胃氣、

  則陽氣虚、此傷證之至要也。『入門』

  呼吸少氣、懶言語、動作無力、目無精光、

  面色晄白、此兼氣虚也。『海藏』

  右脉浮而大、或大而弦、皆爲虚勞。

  盖陽盛陰虚之證、暮多見之。右脉虚微細弦、

  爲虚勞者、乃陰陽倶虚之證也、晨多見之。『保命』

  此條當與火熱門參看


 ●語法・語(字)釈●(主要な、または難解な語(字)句の用法・意味)


語(字)釈

  懶(ラン、ものう-い)体がだるいさま、疲れたさま。おこたる。


 ▲訓読▲(読み下し)


 氣虚・血虚・陽虚・陰虚を辨ず

  虚脉多くは弦、弦にして濡大にして力無きは、氣虚と爲す。

  脉沈微にして力無きは、氣虚甚しと爲す。

  脉弦にして微は、血虚と爲す。脉澁にして微は、血虚甚しと爲す。

  形肥て面浮白なる者は、陽虚なり。

  形痩て面蒼黒なる者は、陰虚なり。『入門』

  房勞思慮心腎を傷るときは、則ち陰血虚す。

  飢飽勞役胃氣を傷るときは、則ち陽氣虚す、

  これ傷證の至要なり。『入門』

  呼吸氣少なく、言語に懶く、動作力無く、目に精光無く、

  面色晄白なるは、これ氣虚を兼ねるなり。『海藏』

  右の脉浮にして大、或ひは大にして弦なるは、皆虚勞と爲す。

  盖し陽盛に陰虚するの證、暮に多くこれを見(あらは)す。

  右の脉虚微細弦にして、虚勞と爲る者は、

  乃ち陰陽倶に虚するの證なり、晨に多くこれを見す。『保命』

  この條當に火熱門と參看すべし。


 ■現代語訳■


 気虚、血虚、陽虚、陰虚を弁別する

  虚脈は多く弦脈であり、弦で濡大にして力無きものを気虚とみなす。

  脈が沈微にして力の無いものは、気虚甚だしいものとみなす。

  脈が弦にして微は血虚とみなす。

  脈が渋にして微は、血虚甚しいものとみなす。

  身体が肥り顔面が脹れ色白い者は陽虚である。

  身体が痩せて顔面青黒い者は陰虚である。『入門』

  房事や過労、また思慮が心腎を傷めるときは、陰血が虚し

  空腹や満腹、労役が胃気を傷めるときは、陽気が虚する、

  これが傷証の至要である。『入門』

  呼吸が弱く、会話が億劫で、動作に力無く、目に光無く、

  顔面が光って白い、これらの症状があるものは、

  気虚を兼ねている。『海藏』

  右の脈が浮にして大、または大にして弦の者は、全て虚労とみなす。

  陽盛にして陰虚の証は、夕暮れ時に多く発症する。

  右の脈が虚微細弦でありながら、虚労とみなせる者は、

  陰陽ともに虚の証であり、明け方に多く発症する。『保命』

  この項は火熱の章と相互に参照するとよい。

 
 ★解説★
 
 「虚勞」の章、前号の「人身陽有餘陰不足」に続く「辨氣虚血虚陽虚陰虚」
 です。前号部分は概論、今号で実際の弁別、そしてさらに次の部分から具体
 的な治療法・治療薬が語られるという実際的な流れになっています。

 今号部分は脈の解説が主体となっていますね。これはさらに前の部分「脉法」
 を受けての構成と考えられます。また、本文自身が「火熱の章と参照せよ」
 と語っているのを見てもわかるように、いつもながら個々の項目の構成は一
 定の発想のもとになされていることがわかります。つまり単独で読んだだけ
 ではわからない部分を、前後、または全体で補い合うような構成になってい
 るということです。

 メルマガでは少しずつの読解ですので、離れた箇所を参照し相補するという
 読み方がしにくいのが難点ですが、既読部分が増えるほど相互参照がしやす
 くなりますので、着実に読んでいくほかありません。倦まず弛まず、配信を
 続けたいと思います。


 ◆ 編集後記

 虚勞の章の続きです。前号部分以上に長いですが、一気に読み、さらに原文
 に語ってもらうべく解説を控えめにしました。というより細かく解説したら
 とてもメルマガ一号では扱いきれない専門用語のオンパレードで、それぞれ
 の項目での取り上げを期して翻訳のみにとどめました。

 今日は八十八夜です。これは立春から八十八日めをこう呼んだもので、日本
 独自の風習のようです。「夏も近づく八十八夜」いう歌がありましたが、
 地域にもよるでしょうがなんだか既に夏みたいな気候ですね。

 土曜日配信が定着してきたので配信できないと思いますが、5月6日水曜日が、
 二十四節気の「立夏」です。2月4日に立春号をお届けしましたが、早くも暦
 の上では夏になるわけで、季節の廻りの早さを感じます。こうして具体的に
 季節の廻りを実感できるのも、それぞれに季節感のある名称がついている節
 気ならではと言えるかもしれず、これも陰暦に則って暮らす効用のひとつか
 もしれません。
                     (2015.05.02.第122号)
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         発行者 東医宝鑑.com touyihoukan@gmail.com

      
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