メルマガ『東医宝鑑(東醫寶鑑)とういほうかん─古典から東洋医学を学ぶ─』第283号 單方「天門冬」(内景篇・身形)
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◇ 東医宝鑑(東醫寶鑑)とういほうかん─古典から東洋医学を学ぶ─ ◆
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第283号
○ 單方「天門冬」(内景篇・身形)
◆ 原文
◆ 断句
◆ 読み下し
◆ 現代語訳
◆ 解説
◆ 編集後記
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こんにちは。単方の続き「天門冬」です。時間の都合で今号はひとつのみでお届けします。
◆原文◆(原本の文字組みのままを再現・ただし原本は縦組み
・ページ数は底本の影印本のページ数)
(單方「天門冬」 p79 下段・内景篇・身形)
天門冬
久服輕身延年不飢取根去皮心擣末和酒
服或生擣絞汁煎爲膏和酒服一二匙漢甘
始太原人服天門冬在人間三百餘年本草〇天門
冬酒方取根搗絞汁二斗糯米飯二斗拌細麹如
常釀法候熟取清飮乾者作
末釀之亦可忌食鯉魚入門
▼断句▼(原文に句読点を挿入、改行は任意)
天門冬
久服、輕身延年、不飢。取根去皮心、擣末、和酒服。
或生擣絞汁、煎爲膏、和酒服、一二匙。漢甘始、
太原人、服天門冬、在人間三百餘年。本草。
天門冬酒方。取根搗絞汁二斗、糯米飯二斗、
拌細麹如常釀法、候熟取清飮。乾者作末、
釀之亦可。忌食鯉魚。入門。
▲訓読▲(読み下し)
天門冬(てんもんどう)
久(ひさし)く服(ふく)すれば、身(み)を
輕(かる)くし年(とし)を延(の)べて、飢(うへ)ず。
根(ね)を取(と)り皮心(ひしん)を去(さ)り、
擣(つ)き末(まつ)し、酒(さけ)に
和(わ)して服(ふく)す。或(あるひ)は生(なま)にて
擣(つ)きて汁(しる)を絞(しぼ)り、
煎(せん)じて膏(こう)と爲(な)し、
酒(さけ)に和(わ)して一二匙(いちにさじ)を服(ふく)す。
漢(かん)の甘始(かんし)は、太原(たいげん)の人(ひと)なり、
天門冬(てんもんどう)を服(ふく)して、
人間(じんかん)に在(あ)ること三百餘年(さんびゃくよねん)。
本草(ほんぞう)。
天門冬酒方(てんもんどうしゅほう)。
根(ね)を取(とり)て搗(つき)て汁(しる)を絞(しぼ)り
二斗(にと)、糯米飯(こうえいはん)二斗(にと)、
細麹(さいぎく)に拌(ま)ぜ常釀(じょうじょう)の
法(ほう)の如(ごと)くし、熟(じゅく)するを
候(うかが)ひて清(せい)を取(と)りて飮(の)む。
乾(かは)く者(もの)を末(まつ)と作(な)し、
これを釀(かも)すも亦(また)可(な)なり。
鯉魚(りぎょ)を食(く)ふことを忌(い)む。
入門(にゅうもん)。
■現代語訳■
天門冬
長期間服用すれば、身が軽くなり寿命を延ばし、
空腹を感じなくなる。
根を採集し皮と芯を除去し、
搗いて粉末にし、酒に混ぜて服用する。
または生のまま搗いて汁を搾り取り、
煮詰めて膏を作り、酒に混ぜて一二匙を服用する。
漢代の甘始は太原の人である。
天門冬を服用して三百余年生きた。『本草』
天門冬酒方。
根を採集して搗いて汁を二斗搾り取り、
糯米飯二斗、細かい麹と混ぜて、
一般的な酒と同じ方法で醸す。
充分に醸されたら上澄みを取り飲む。
乾燥させたものを粉末にし、これを元に醸しても良い。
鯉魚と食することを忌む。『入門』
★ 解説 ★
単方の「天門冬」です。今までと同様の効果と、また酒の作り方を記載しています。
違うのは作り方に膏を作る記載があること、また逸話を採用してあることですね。
甘始というのは人名でネットでちょっと調べれば逸話がいろいろ出てきますのでご興味がおありの方はお調べいただきたいですが、江戸期の『訂正 東医宝鑑』ではこの部分をこう訓じています。
漢の甘始ニ太原ノ人、
何が問題かというと、人名の甘始に「ニ(に)」という助詞を付けている点で、これですと甘始は人名ではなく、地名または時期?として読めてしまいます。
訓読を付けた方が甘始が人名とわからずに地名と判断したのか、または人名、つまり固有名詞と読めずに本来存在しないであろう「甘始」という時代の始まりを表す熟語として誤読し、「漢代の甘始(漢代の始まりのころ?)」と読んでしまったのか、はたまたカタカナの「ニ(に)」と「ハ(は)」の誤字、あるいは彫り間違い、などの可能性があり、今となってはどれかわかりませんが訓読としては誤りとみてよいと思います。
◆ 編集後記
単方の「天門冬」です。執筆時間の都合で配信が日曜日にずれ込み、さらに天門冬のみのお届けとなりました。配信を空けるとそれが習いになってしまいそうで、執筆が単品になっても毎週配信を心がけたいと思います。
(2018.09.15.第283号)
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