メルマガ『東医宝鑑(東醫寶鑑)とういほうかん─古典から東洋医学を学ぶ─』第350号「精滑脱屬虚」(内景篇・精)9
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◇ 東医宝鑑(東醫寶鑑)とういほうかん─古典から東洋医学を学ぶ─ ◆
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第350号
○ 「精滑脱屬虚」(内景篇・精)
◆ 原文
◆ 断句
◆ 読み下し
◆ 現代語訳
◆ 解説
◆ 編集後記
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こんにちは。「精滑脱屬虚」に列挙された具体的な処方に入ります。
まずは「巴戟丸」です。
◆原文◆(原本の文字組みのままを再現・ただし原本は縦組み
・ページ数は底本の影印本のページ数)
(「巴戟丸」p84 下段・内景篇・精)
巴戟丸
治面色白而不澤悲愁欲哭脈按之空虚是
爲脱精脱神宜峻補肝腎收斂精氣補益元
陽五味子巴戟肉〓蓉兎絲子人參白朮熟地黄(〓くさかんむり従)
骨碎補茴香牡蠣龍骨覆盆子益智仁各等分右
爲末蜜丸梧子大毎三十丸米飮
呑下日三服虚甚八物湯呑下東垣
▼断句▼(原文に句読点を挿入、改行は任意)
巴戟丸
治面色白而不澤、悲愁欲哭、脈按之空虚、是爲脱精、脱神。
宜峻補肝腎、收斂精氣、補益元陽。五味子、巴戟、
肉〓(くさかんむり従)蓉、兎絲子、人參、白朮、熟地黄、
骨碎補、茴香、牡蠣、龍骨、覆盆子、益智仁各等分。
右爲末、蜜丸梧子大、毎三十丸、米飮呑下、日三服。
虚甚、八物湯呑下。東垣。
●語法・語釈●(主要な、または難解な語句の用法・意味)
▲訓読▲(読み下し)
巴戟丸(はげきがん)
面色(めんしょく)白(しろ)くして澤(うるは)しからず、
悲愁(ひしゅう)して哭(こく)せんと欲(ほっ)し、
脈(みゃく)これを按(あん)ぜば空虚(くうきょ)なるを
治(ち)す。是(こ)れ脱精(だつせい)、脱神(だつしん)と
爲(な)す。宜(よろ)しく肝腎(かんじん)を峻補(しゅんほ)し、
積気(せいき)を收斂(しゅうれん)し、元陽(げんよう)を
補益(ほえき)すべし。五味子(ごみし)、巴戟(はげき)、
肉〓(くさかんむり従)蓉(にくじゅうよう)、
兎絲子(としし)、人參(にんじん)、白朮(びゃくじゅつ)、
熟地黄(じゅくぢおう)、骨碎補(こつさいほ)、
茴香(ういきょう)、牡蠣(ぼれい)、龍骨(りゅうこつ)、
覆盆子(ふくぼんし)、益智仁(やくちにん)各等分(かくとうぶん)。
右(みぎ)末(まつ)と爲(な)し、蜜(みつ)にて
梧子(ごし)の大(おほ)ひさに丸(まる)め、
毎(つね)に三十丸(さんじゅうがん)、
米飮(べいいん)にて呑(の)み下(くだ)すこと、
日(ひび)に三服(さんぷく)。
虚(きょ)甚(はなはだ)しくは、八物湯(はちもつとう)にて
呑(の)み下(くだ)す。東垣(とうえん)。
■現代語訳■
巴戟丸
顔色が白くして光沢がなく、憂い悲しみが強く泣きたくなり、
脈を押えれば空虚である者を治する。これは脱精、脱神である。
肝腎を強く補して、積気を收斂させ、元陽を補益するべきである。
五味子、巴戟、肉〓(くさかんむり従)蓉、兎絲子、人參、
白朮、熟地黄、骨碎補、茴香、牡蠣、龍骨、覆盆子、
益智仁をそれぞれ等分。
以上を粉末にし、蜜にて青桐の種の大きさに丸め、
毎回米のとぎ汁で三十丸を一日三度服用する。
虚が甚だしい者は八物湯にて服用する。『東垣』
★ 解説 ★
「精滑脱屬虚」に挙げられた具体的な処方に入ります。まずは筆頭の「巴戟丸」です。
文が長いものの、断句の部分で見るとわかりやすいですが、文章が3つ、初めが症候の説明、次が生薬の列挙、最後が製薬と服用方法と、綺麗に分かれていることが読み取れます。
後の二つ、生薬の列挙はそのままで読め、製薬と服用方法はこれまで読んだ部分と類似ですのでそちらの知識で読めますので、実質初めの三分の一が読めれば後は自動的に読めることになりそうです。
先行訳にはこの部分の翻訳は記載されており、だいたい良いのですが、なぜか最後の「虚が甚だしい者は八物湯にて服用する。」の部分と引用書の情報が省略されており、やはり万全とは言いにくい体となっています。先行訳をお持ちの方は上記と比較して補足してくださればと思います。
◆ 編集後記
「精滑脱屬虚」の処方に入りました。年をまたぎましたが、無事に間を空けずに配信することができました。今後もこんな感じで配信を続けたいと思います。どうぞよろしくお願い致します。
(2020.01.05.第350号)
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