メルマガ『東医宝鑑(東醫寶鑑)とういほうかん─古典から東洋医学を学ぶ─』第344号 「精滑脱屬虚」(内景篇・精)4
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◇ 東医宝鑑(東醫寶鑑)とういほうかん─古典から東洋医学を学ぶ─ ◆
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第345号
○ 「精滑脱屬虚」(内景篇・精)
◆ 原文
◆ 断句
◆ 読み下し
◆ 現代語訳
◆ 解説
◆ 編集後記
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こんにちは。「精滑脱屬虚」の続きです。
◆原文◆(原本の文字組みのままを再現・ただし原本は縦組み
・ページ数は底本の影印本のページ数)
(「精滑脱屬虚」p84 上段・内景篇・精)
其不御
女漏者或聞淫事或見美色或思想無窮所願不
得或入房太甚宗筋弛縱發爲筋痿而精自出者
謂之白淫宜乎滲漏而不止也宜加減珍珠粉丸
方見小便
▼断句▼(原文に句読点を挿入、改行は任意)
其不御女漏者、或聞淫事、或見美色、或思想無窮、
所願不得、或入房太甚、宗筋弛縱、發爲筋痿而精自出者、
謂之白淫。宜乎滲漏而不止也。宜加減珍珠粉丸。方見小便。
●語法・語釈●(主要な、または難解な語句の用法・意味)
宜乎(むべ)当然であるさま、本当であるさま。
▲訓読▲(読み下し)
其(そ)の女(をんな)を御(ぎょ)せずして
漏(もる)る者(もの)の、或(あるひ)は
淫事(いんじ)を聞き、或(あるひ)は
美色(びしょく)を見(み)、或(あるひ)は
思想(しそう)窮(きはま)り無(な)く、
所願(しょがん)を得(え)ず、或(あるひ)は
房(ぼう)に入(い)ること太甚(はなはだ)しきときは、
宗筋(そうきん)弛縱(ししょう)して、
發(はっ)して筋痿(きんい)と爲(なっ)て
精(せい)自(をのづか)ら出(いづ)る者(もの)、
これを白淫(はくいん)と謂(い)ふ。
宜乎(むべ)なるかな滲漏(しんろう)して
止(や)まざること。
加減珍珠粉丸(かげんちんじゅこがん)に宜(よろ)し。
方(ほう)は小便(しょうべん)に見(み)ゆ。
■現代語訳■
女性と交接することなくして漏れる者、
また淫事を聞き、或いは美人を見て、
或いは淫らな思考を過度にしながら所願を得られない者、
或いは性交をいたすこと甚だしい者は、
宗筋は弛緩して筋痿となり、精が自ずから漏れてしまう。
これを白淫と言う。漏れて止まないこと当然である。
加減珍珠粉丸を服用するとよい。処方は小便の章参照。
★ 解説 ★
「精滑脱屬虚」の次の段です。
途中からデジャブがあるようで、前段と文章がかぶりますね。 前段ではこうこうとなると白淫となる、と言っていたのが、この段ではこうこうという症状を白淫と呼ぶ、と定義づけていてニュアンスが変わっています。
前号では翻訳で白淫を「遺精や白帯となる」としたのですが、こちらとの兼ね合いに鑑みれば、そのまま「白淫」と残した方が繋がりがよいですね。
語法に関して面白い点があり、最後の部分で
宜乎滲漏而不止也、宜加減珍珠粉丸
と、「宜」が二回登場しています。ところが上の語法欄、また訓読の欄でもすでに記したように、両者の語法が違うのですね。
訓読で読むと読み方まで違ってしまうのですが、元の漢字、中国語の読みでは「宜」は同じ発音ですので、音を整える意味もあってこのように文を構成したのかもしれません。
「宜」というと再読文字としての「よろしく~べし」が頻出と思い、この段のふたつもそう読んでしまいそうですが、どちらも違うという面白い用例と思います。
特に初めの「宜乎」は東医宝鑑全体でも数例、私が検索した限りでは7例しか登場しない用法です。
ただ、印象深い用例でもありますので、この場で覚えてしまってもよいでしょう。
メルマガの発行が頻繁ならこの用例を全て拾って読むなどもさらに記憶に残って良い方法と思いますが、こちらを読む都合もありますのでこのままこの項目を読みたいと思います。
◆ 編集後記
「精滑脱屬虚」の続きです。上にも書いたように以前なら脱線して他を読んでいたかもしれませんが、今回はこのままこちらを読み続けたいと思います。
(2019.12.01.第345号)
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