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賃貸 vs 購入:「買って分かった賃貸」

自宅を賃貸にするか購入にするか?について、以前からそれなりに調べ、「賃貸が有利」と思っていたけれど、年齢を経て、不動産の購入を考え、実際に購入してみると、「月々の支払額の比較」だけではなく、「ああ、賃貸ってこういうことだったんだ」と改めて思ったので、ここにまとめておきたい。


賃貸は何を買っているのか?

最初に結論を書いてしまうと、私たち、賃貸派は家賃を払うことで、リスクと手間を大家に押し付け、様々な自由を享受している

その一方、大家はリスクと手間を押し付けられている見返りに、賃貸人が払う家賃で資産を少しずつ自分のものにしていっている

要はこの交換条件が釣り合っていて、取引が実現しているわけだけど、住むことに関しては、もう本当に賃貸はラク。

買って改めて実感したけれど、何も気にせず、自分で矢面に立つこともなく、リスクを負うこともなく、家のこと住むことに関しては、徹底的に無関心でいられる
なにか無関心でいられなくなったような出来事があったら、引っ越せばいいだけの話だ。

不動産を買ってみて、「買うと借りるはこんなに違うのか」と心底、実感したので、賃貸とはなにか、もう少し具体的に掘り下げてメモしておきたい。

1. 不動産のリスク

いざ、不動産を買おうと色々調べてみると、不動産はリスクの塊であることが分かる。

金銭面のリスク:「その家の価格は適正か?」

まず、買うときに一番悩むのは、「その家の価格は適正かどうか?

不動産は同じ土地に建っている建物は一軒だけ、つまり、全部一点もの。
それに売り手も、売る事情も、千差万別なこともあって、適正な価格付けが難しい。
さらに、値下げ交渉可なことが多いから、最初の値付けだけで判断もできないし、その時々の経済状況で適正価格が変わる金融商品としての一面も持ち合わせているから、市況(今が買い時ですか?)も考えなくてはいけない。
だから、適正価格を知るのは難しいし、そもそも適正価格というものがあるのかも分からない。

もちろん、「積算価格」「収益還元法」「取引事例比較法」とかの目安はあるけど、取引事例(レインズ)は一般の買い手は見られないし、はじめて不動産を購入する素人が「この価格は適正だ」と判断するのは難しい。

さらに、不動産は「モノ」であるから、老朽化していたり、壊れていたり、見えないところで腐食していたり、シロアリがいたり、欠陥住宅などのリスクもある。

エリア・立地の判断ですでに難しいのに、道路付け・広さ・建築方法・設備や材質の良し悪しなども加わるし、さらにその建物自体の状態までとなると、必要となる知識量はかなり多くなる。

にもかかわらず、原則、早いもの勝ちだから、それを、つまり、何千万〜一億以上の金額が適正かどうか、短い期間で、判断しなくてはいけない。
失敗したら、個人なら一発で破産しそうな金額なのに。

でも、賃貸では、そんな精査や決断をする必要は一切ない。
そういったリスクは大家さんが背負ってくれている。

この、「買ったときの金額」、つまり、「いくらで買ったか?」は、買った後もずっとつきまとうし、正解だったかどうかは一生分からないといっても過言ではないだろう。

「損していないだろうか?」
「本当にあのとき買ったのは正解だったのだろうか?」
買うと、その思いが常につきまとう。

ローンの支払いはもちろん、将来、売るとしたら「いくらで売却するか?」というときでもその金額が足かせとなる。

住環境の変動リスク:「エリアや、隣人や町内会などの周辺環境」

「町内会費はいくらか?特別な徴収やイベントはないか?」
「隣人はどんな人か?」
「ゴミ捨て場はどこで、どんな管理をされているのか?」
等などは、住む上で、毎日のことだし、かなり重要。

でも、それらの情報を不動産仲介業者は「私は知りません」「我々の仕事じゃありません」という態度だったし、新築の場合は、それを知る手段は自分たちで近隣に聞いて回るしかないというのは今の時代に非常につらかった。

賃貸の不動産仲介会社は、家主が情報を出していて、そういった情報を事前に教えてくれることが多い。
だけど、比べ物にならないくらいの、大きな金額を支払うのに売買の不動産仲介会社はこれを知らないことが多い。特に新築の場合は中古と違って、元の家主がいないから、より謎に包まれている。

「トナリスク」というサービスがあるけれど、内見した家全部にやると費用もかさむし、買付をいれるのが遅れてしまうから、結局、ある程度は、自分で聞くしかない。

でも、ご近所の人に聞いたって、その人が本当のことを言っているのか分からない。
今回の家探しの中でも、「この人は変な人だよ」と言われ、違う人に聞いたら「えっ、別に普通の人だよ」と言われたりしたので、正確を期すならば、何人かに聞いて回る必要がある。

(今のご時世、いきなりの訪問で話をしてくれるのか?という疑念はあったけど、意外とみんな出てきて、話をしてくれるのには驚いた)

町内会もそう。
都市圏でも、今、この時代に、運動会や強制のイベントがあったり、逆に、それを楽しみにしていたりする人もいて、そのたびに大きな金額の負担があったりするところもある。

さらにご近所は今が良くても、入れ替わる可能性が常にある。
いい人が悪い人になることだってある。

賃貸だとそういったことは事前にクリアになっていることが多いし、もし、途中で状況が悪化しても、引っ越せばいい。

自宅を購入すると、何かの工事のときに、たとえば、エアコン工事や外構工事などのときに、隣地に侵入する許可を取らないといけないこともあるから、隣人との関係は非常に大事になる。
最低限でいいと思うけれど、人付き合いに不断の努力が必要になる。

賃貸ではそんな心配は一切ない。そういうのは大家がやる。

負動産になるリスク(資産価格の変動リスク)

人口減になるのが明らかになっている今、一番怖いのは、せっかく買った家が「負動産」になってしまうこと。

数千万から数億円という自分の家が、売るときには半額になる・・・くらいならば「まあ、住んだ年数の家賃だと思えばいいか」とも思えるが、「売ろうとしても売れない」で維持費のみがかかり続けるという状況も考えられる。

実際に、家って、あまり売れていない。
家を探していると、同じエリアであっても、売れてしまう家は一瞬でなくなってしまうけど、残っている家はずっと残っている。
売れなきゃ、そこから動けないのに、なかなか売れない家があるのも現実だ。
愛着のある自分の家が「売れない」というのは、「自分は価値があると思っていたのに、他人はその価値を感じていない」ということでもあり、せつなさを感じるけれど、相手も身銭を切るのだから、現実がむき出しに突きつけられる。

「住むための家だから、値上がりを目的としたものではない」
「別に売らないからいい」
という意見もあるけれど、間違ったところを買ってしまうと、将来、人口減になり、ガス水道電気などのインフラが提供されなくなって、「住めなくなる」という可能性だってある。

「意地でもここに住み続ける」と思っていても、周りの人が一人消え、二人消えして、自分たちだけになっていく・・・という場合でも耐えられるか。

想像すると恐ろしいけれど、「このエリアが将来、発展するかどうか?」なんて、うっすらとしか分からないし、はっきりと分かっているところは地価がものすごく上がっていて、一般庶民には手が出ない。

幸い、各自治体が「居住誘導区域」などを設定しているので、一定の目安として使えるけれど、それも「今の時点での想定」であるから過信はできない。

というように、どんなに魅力的な家だったとしても、不人気エリアに買ってしまうと大変だから、買う場合は「このエリアはどうなるのか?」というようなことに神経をとがらせることになる。

だけど、賃貸ならばそんなことは考えなくていい。
逆に不人気エリアならば家賃が安いから積極的に狙いたいくらいだ。

その他のリスク

その他にも、持つことに起因するリスクはいくらでもある。

例えば、すぐに思いつくのが「天災のリスク
賃貸なら、「ああ、住めなくなった。引っ越しかよ」くらいだが、購入していると、後始末もしなくてはいけない。
ハザードマップだって、目安に過ぎない。
あの天災の度にテレビで映し出される光景を自分が体験することになるのだ。

騙されるリスク。
あまり確率は高くないけれど、金額も大きいので、騙そうとしてくる人はいてもおかしくない。
売買仲介業者が実は存在していなかったり、売り手がニセだったり、というのは確率が低いけど、「実は数十万ボッタクられていた」「謎の手数料が入っていた・・・」というようなケースなら、いくらでもあるだろう。
実際、仲介業者から渡された資金計画書でも、「こっちの業者には入っているけど、こっちには入っていない」という謎の金額が含まれたりしていた。

盗難リスク。
賃貸で「賃貸契約書を盗まれた!」という場合、「盗まれちゃった」くらいで済むかもしれないけれど、売買で「権利証を盗まれた!」という場合は、それとは比較にならないくらい大変。

賠償リスク。
自分の家のブロック塀が崩れて、誰かが怪我した・・・なんて場合、自分の責任になる。外壁のタイルが落ちたとか、自分の家の何かが風で飛んだりとかも含め、賃貸の頃は思ってもみないことに責任が生じる。
小学生のときに、「壁打ち禁止」とか書いてあると、「ケチだな」と思っていたけど、自宅の塀で壁打ちされるとかとんでもないだろ!と今では思う。
賃貸のときは、「うるさいから、禁止なのかな?」くらいだったが、自宅を持ってみると、「絶対に禁止!」という気持ちになる。

いや、もう本当にリスクのかたまりだな・・・と思う。

家をもつことによる「手間」

「家を買う」ということは、自分のものなのだから、何もかも自分でやらなくてはいけない。買うと、これを思い知らされる。

金額だけではない、「メンテナンスコスト」

家について色々調べてみると、維持費という金額だけで見ても、かなりかかることに気づく。

マンションなら、毎月の修繕費管理費がかかる上に、それらは基本的にマンションが老朽化していく中で、さらに上がっていく。
周りの人に聞いたら、築年数にもよるが、月3万弱〜8万くらいは掛かっているようだ。それなら、その金額で普通のアパートに住めるじゃないか。
ローン以外にそんなに払って、それでも住む価値、持つ価値があるのか?ずっと疑問だった。

戸建てだって、同じ。
防蟻、外壁、給湯器・・・、守備範囲は多岐にわたるし、いちいち、それらの金額が高い。
毎月払わない(積み立てない)だけで、一度にドーンと来るだけだ。
やるかやらないか、いつやるのか?など、自分で決められるのは利点だけど、逆をいえば、自分で決めないと誰もやってくれないのが戸建て。

さらに、税金までかかる。
固定資産税、そして、市街化区域は都市計画税もかかる。というか、市街化調整区域に物件を買うのはリスキーだから、ほぼ都市計画税はかかると考えた方がいい。
それが合わせて、年に20万だとしたら、月に2万近くになる。

かかる費用を積み上げていくと、「嘘だろ、これでどうやって買ったほうが得だと言えるんだろう」と思うほどだ。

さらに金額だけではない。
メンテナンスは、「点検」→「不具合の発見」→「原因の調査」→「業者の手配」→「修繕作業」→「お金の支払」という流れになる

この流れを自分一人で通して行う心理的負担はかなり大きい。

台風が直撃したら、「どこかに異常が生じていないかな?」と点検して回ったり、水漏れがあったら、「どこが水漏れの元なのだろう」と調査しなくてはいけなかったり・・・。

業者に点検を頼んでも、その業者が悪徳じゃないか?というのも分からないから、相場を調べたり、業者と長期的な関係を築かなくてはいけなかったり・・・。

こういったことにかかる時間や労力、心理的な負担は実際にやると、金額的負担と同じか、それ以上だと思う。

賃貸ならば、大家に連絡すれば、あとは知らんぷりだし、天災のたびに不安になったりすることもない。

自分で矢面に立つということ。

マンションならば管理組合があるから多少は楽だけど、戸建てなら、全部、自分でやらないといけない。

上であげたメンテナンスはもちろんのこと、隣人トラブルもそうだし、家の敷地内に「無断駐車」「不法投棄」されたなんてことにも、自分で矢面に立って対処しなくてはいけない。

どうやって対処しようか?
何をすればいいのか?どこに言えばいいのか?
防犯カメラを自分の費用でつけるのか?無法投棄された粗大ごみを自分のお金で捨てるのか?
犯人が分かったら、どうするのか?
対決するのか?相手が逆ギレしてきたらどうする?
等など、色々、本当に面倒くさい。

賃貸なら、たとえ、自分がご近所トラブルの原因であっても、大家もしくは管理会社が矢面に立ってくれる。
「自分と隣人で直接話し合う」のと、「管理会社が間に入る」のとで、どちらが気楽で、しかも、円満に解決できるか?は、自明の理だろう。

今までは「ああ、管理会社に連絡しておくかー、めんどくさいなあ」だけだったけれど、買ってしまうと、その面倒くささは賃貸の比ではない。

しかも、以上のことを、余暇の自分の時間でやらなくてはいけない

以上のこと、つまり、なにか問題が起きたら、もしくは起きなくても、家のことを、自分の余暇の時間でやらなくてはいけない。

ただでさえ、仕事以外の時間が惜しいのに、家のメンテ、トラブル対策、ご近所付き合い、地域活動などに、自分の余暇が侵食されていく。

自由

時間や心理面の自由

上記の通り、家を購入すれば、そこには地域活動や管理組合の活動や、メンテナンス(点検・保守・修繕)などを、自分の余暇と金で行わなければならない。

台風が来れば不安になり、敷地にゴミが捨てられれば怒り・・・というようなこともある。

賃貸はこれがほぼゼロ。
余暇は全部自分の好きなことに使えるし、心配したり怒ったりする時間や精神的な負担もない。

要は住居のことは、家賃以外は何も考えなくていいということだ。

移動の自由

自分が持ち家だとしたら、「引っ越したい」と考えてから、実際に引っ越すまで、どのくらいの労力と時間がかかるだろうか?

不動産仲介会社に何社か連絡をし、その中から、好みのところを選ぶ。
各種の資料を揃え、値付けをし、実際に売りに出す。
内見の対応をし、買い手を探す。一般的にうまくいって、3ヶ月くらいはかかると言われる。
その間は本当に売れるか分からないから、新居は売れてから探すか、2重に家賃(かローン)を支払う。
売買契約をし、引き渡しを行う。これは1ヶ月から、場合によっては2ヶ月くらいはかかる。
それらがすべてうまくいって、ようやく引っ越しができる。

問題は「すべてうまくいって」のところで、売れなかったら、ずっと移動はできないか、2重に住居の費用を負担し続けるしかない。

賃貸だったら、もう即、移動できる。
1ヶ月前くらいに退去連絡すれば、終わりだ。
新居は退去連絡の前でも後でもいい。だって、不動産仲介会社に行ったその日に新居の契約をすることだってできるのだから。

「賃貸だって、引っ越せば数十万かかるのだから、そんなにポンポン引っ越しできない」というような意見もあるけど、上記の通り、買ってしまったら、その比ではないくらい大変だ。

人生設計の自由

35年前から今まで、いろいろなことがあった。
当時はスマホはもちろんポケベルですら存在しなかった。
同じように自分の人生も、少年時代の自分に「今、こうなっているよ」と言ったら、信じないだろうなと思うような人生となった。

「いざとなれば、家賃3万円程度のところだってある」という気持ち、
「どこにでも、いつだって、行ける」という移動の自由、
この2つがあったからこそ、様々な思い切った決断ができたように思う。

これが
「住宅ローンがあって、月々の支払額が一定」
「海外に移住したいけど、家の処分をしなくてはならない」
というような場合だと、かなり迷ってしまうと思う。

この辺は言い古されたことだけど、実際の売買を体験してみて、「こりゃ、大変だな」と思ったので、改めて、記載した。

つまり、「住む」ということに関しては、圧倒的に賃貸の方がラク(お得)だと言える。

上記を色々考えてみると、「住む」ということに関しては、賃貸の方が圧倒的に楽だし、心理的な負担や時間、労力までも金銭として考えれば、金銭的にもかなりお得だと言えると思う。

将来、人口が減った時、自治体は少しでも人口を増やそうと、競争を始めるだろう。
家を買ってしまえば、そういった競争の恩恵にも預かれなくなってしまう。

それでも、それを分かっていながら、僕は自宅を購入したのだから、持ち家にもメリットはあると思う。
持ち家のメリットについては、次回に書きたいと思う。

金銭的な面での比較

月々のお家賃以下のローン返済で家を持てます!
家賃以下の返済額なら、持ち家の方がお得じゃん
という決まり文句や、住宅購入にまつわる情報(サイト・雑誌など)を見て、月々の支払いの比較などを見ても、購入の方がお得か、変わらないかくらいになっている。

なかには、管理費・修繕費・税金を含んでいない試算があったりするので、注意しなくてはいけない。
ただ、このような試算は世の中に溢れているので、ここで改めて書くより、ここでは僕が買うか悩んだ時に実際に考えたことを記載しておきたい。

賃貸で家賃が10万だとしたら、一年で120万。
更新料が2年で家賃1ヶ月分で10万。一年にすると5万。
退去費用を積み立てとくとして、かなり多めに見て、1年で5万にしてみよう。
ならば、賃貸の場合は、1年で130万かかる。
※ 保険料は持ち家でもかかるので、というか、持ち家の方がかかるので、割愛。

すると、10年で1300万円、20年で2600万、30年で3900万。
このくらいかかる。そして、途中で家賃の値上げがない場合は、これ以上は掛からない。

家賃10万の物件は、都心でなければ、だいたいファミリー向けで、そこそこ広いはず。

同じような物件を、首都圏で探すと、新築で3500万くらいから6000万くらい。
マンションなら、4000万〜1億円くらいだろうか。

少なくとも、30年くらいは住まないと、賃貸と持ち家は、一緒にならない
それも3900万以下の物件の場合で、3900万以上の物件はまだ追いつかない。
さらに持ち家は30年の間に900万くらいのメンテナンス費がかかると言われている。マンションなら強制徴収だ。
すると、加えて、900万/125万=7.2年分くらいの差が生まれてしまう。

では、30年後、それぞれはどうなっているだろうか?

賃貸の人には、何も起きていない。
自分の年齢が30歳増えただけで、何も持っていないし、何も変わらない。

持ち家の人は、30年経った家が残っているはずだ。

問題は、この30年経った家が財産と言えるのか?という点。
30年くらい経つと、もう建て替えだろう。
ちゃんとメンテナンスすれば60年くらいはいけるとも聞く。
今の築30年の家を見ると、やっぱり、かなり古く見える。

じゃあ、30年後に建て替えするとなると、
30年間賃貸で、そこから家を建てる人・もしくは買う人」と
30年間持ち家で、建て替える人」で、
何が違うだろうか?

ここで同じ立場になってしまう
持ち家の人は土地代が浮くけど、絶対にこの土地に建てなくてはいけない。
賃貸の人は、土地も一緒に探さないといけないけど、割安な建売も探せるし、どこにでも住める。

また、賃貸派は30年後のエリアを見て、買うことができる。
持ち家派は30年経っても、そのエリアからは動けない。

人口減の中、それはかなりの有利・不利だろう。

家賃を払うなんてもったいない」というセリフは、不動産の目利きができる場合にのみ当てはまるのだろう。
もし、持ち家が値上がりするようなエリアにあったら、当然、持ち家派の勝ちだろう。
ただ、問題は売るかどうか?で、自分の家が値上がりして、それを売って、どこに住むの?という問題が生まれる。老人ホームなら理想。
でも、ほとんどのエリアの場合、人口減なのだから、「30年後、ボロボロの家で、寂れたエリアの土地を持ち、売ろうにも売れず、移動もできない姿。

逆に、30年後も資産も持たず、賃貸物件を探し続ける姿。
そして、家賃は上がるかもしれない。家賃が上がれば、上の試算の結果は異なるだろう。
だから、賃貸派は金融資産は持っておかなくてはいけないと強く思う。

どうも、どちらにせよ、将来は悲惨な気がして、買うかどうか悩んでいるときは、かなり憂鬱な気分になった。
どちらを選んでも安心できない。
なんとかこういう悲惨さを防ぐビジネスが出来たらなとも思う。

「賃貸の方が有利なら、大家業が成り立つわけがない」のは本当か?

最後に、「賃貸の方がいい」というと、

家賃は、そういった諸経費を含んだ上に、管理会社のフィーと、大家の利益まで乗っているのだから、賃貸の方がお得なら、大家業が成り立つわけがないじゃん。だから、買うほうが有利に決まっている

という意見があったりするので、それに関しても私見をメモしておきたい。

1,違うものを比べてもしょうがない。

これは買ってみてから分かったことだけど、「自宅用の家と、賃貸用の家は、そもそもモノが全く違うことが多い」ということ。

壁紙ひとつをとってみてもランクが違うし、設備なども全く違う。
一言でいえば、「買う家は快適」だ。

たとえ、同じくらいの大きさだとしても、高級車と普通車は金額だけでは比べられないし、比べている人がいたら、「いや、おかしいでしょ」と誰もが指摘するだろう。

住んでいる家を転勤中だけ貸すとか、他の事情もあるから、そういう物件ばかりではないにしろ、一般的に、賃貸用の家は安普請であることが多いし、そうでなくても、築古であることが多い。

だから、まず、こういうところで、大家さんは差益を出している。

もちろん、僕も含めて「賃貸派」の人たちは、一般的に、住環境に無関心であることが多い。

車も「別に移動手段なんだから、動けば、なんだっていい」という人もいれば、「車はステータス」とか「高級車じゃなきゃダメ」というような人もいる。
同じように、家に対する考え方も様々で、別に安普請だろうが、雨風がしのげればいい、という人もいる。

それに「他人に貸すためならこの程度でいいけど、自分が住むなら嫌だ」という人も多い。自分で住まない場合は「なるべく安く済まそう」と思うだろう。
例外はあるにせよ、「これで募集してみて、ダメだったら、ここをリフォームするか・・・」という感じで、空室になるか、入居するか、ギリギリを攻めるというのが、まあ、普通なんじゃないかな。

だから、このことはお互いにWinwinの関係だろう。

それが、つまり、「物件にお金をかけない」というのが、一点目。

次に、「物件の目利き」が2点目。

計算をしてみると分かるけど、普通に売っている物件を、賃貸に回そうと思っても、まったく儲からない。

僕も買うときに、「住まないなら、貸すという選択肢もありますよ」とか言われたけれど、計算してみると、まったく儲からない。

プロの不動産投資家が血眼になって、貸したら儲かる物件を探している。
そうそう、素人に儲かる物件が回ってくるわけがない。

以上のように、まず、大家さんたちは、物件購入の選定と、物件自体の作りを工夫して、利益を出している。

2,メンテナンスコストの工夫

突発的な故障や不具合、入退去のときのリフォーム。
もちろん、家賃にはそういう費用も鑑みて、値付けがされているわけだけれども、大家さんはここでも工夫していることがほとんど。

一般家庭と違い、大家さんは何件か物件を所有していることが多い。

だから、スケールメリットが働くのが一つ。
また、自分で相場感も把握している上に、業者と長期的な関係を築いていることも多いから、一般家庭が単独でメンテナンスを頼むときと比べて、費用は安く済むことが多い。

経験を積めば、「ああ、この場合はここだけやればいいな」とか「これはここの不具合だな」というのも分かるから、さらに費用や時間を節約できる。

もっと物件数が増えてくれば、自分で職人さんを抱えることもできる。
そうすると、さらに費用はコントロールしやすくなる。

というように、大家さんは、この部分のコントロールが大家さんの腕の見せどころともいえるし、ここで経費を圧縮し、利益を出している。

3,薄利多売

自分で不動産投資家をやってみようと思うと分かるが、株式投資や事業と異なり、不動産投資は、「コツコツ型」。

大きなリスクを抱えながら、月数万円の利益をコツコツ積み重ねていくという世界。

後に書くけど、資産の形成や出口を重視しているなら、月々、利益が出なくたっていい。

それでは満足できず、もし、家賃収入で生きていきたいなら、たくさんの物件を持って、その月数万円の薄利を積み重ねていけばいい。

どちらにせよ、薄利多売。

大家さんの中には、空室が埋まらない人もいれば、満室でも赤字の人もいれば、「ローンが終わるまではとんとん」の人もいるし、節税対策の人もいれば、「もうローンが終わったので、安く家賃を設定できる」という人もいる。

そういう様々な競合がひしめく中で、自分ひとりが高い家賃を設定できるはずもないから、ボロ儲けは難しい。

だから、その中で、「安く買う」努力はもちろん、メンテナンスコストを抑える努力をしたり、家賃を高く取れる工夫をしたりするのだろう。

4,出口で儲ける

最後に、大家さんは月々の家賃がたとえ赤字だとしても、その物件を売却すること(出口)で儲けることもできる

月々の赤字の累積額よりも、売却益の方が大きければ、当然、その差額分は利益になる。

そこまでではなくても、「将来、資産が手に入るだけでいい」という資産形成が目的の場合もある。

つまり、「他人がローン分だけでも負担してくれていればいい」という場合だ。

一度、買って、あとは放っておけば、20年くらい経てば、リスクを負っただけで、「ほぼタダで家が手に入っていた」ということになる。

というように、大家さんは「かなり工夫して」利益を出しているわけ、もしくは資産形成を考えるなど別の視点から物件を持っていたりするわけで、そこは、単純に「家賃は全部含んでいるのだから、買うほうが特に決まってるじゃん」と言うようなものではないと思う。


「家を買っても究極的には借り物」

僕が以前から思っていたのは、たとえ、持ち家を買ったとしても、結局、借り物じゃないの?ということ。

賃貸ならば家賃が月々かかるけれど、持ち家になったら、固定資産税がかかる。
これは考えてみれば、最後の最後は、国に家賃を払うだけで済むようになったというだけで、結局、国の持ち物だっていうこと。

私有財産っていったって、国に賃料みたいに税金を毎年払うんだから、賃貸・持ち家といったって、程度の差みたいなもの。

いつまでも自分のものにはならないのだから、どっちだっていいだろうと。

だから、ずっと賃貸で来ていた。

と、未だに僕は「賃貸の方がいい」と思っているけど、結局、家を買うことになった。
次回は、それがなぜか?というのを忘れないようにメモしておきたい。


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