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SNSへの向き合い方:ベンジャミン・グレアム氏の『Mr.Market氏』の格言から考える

周りの人には伝えてるんですが、私、SNSやファーストメディアが結構、苦手です。理由は、世界株のファンドマネージャーとして20年活動しての腹落ちした一つの教訓が、金融市場とメディアとは距離を取れ、であるからです。

バフェット氏の師匠のベンジャミン・グレアム氏の名著、懸命なる投資家(Inteligent Investor, 初版は1949年)での有名な寓話に「Mr.Market氏」というのが出てきます。金融市場というのはスーツを着た金融マンが、ある企業の株を「100ドルで買いませんか?」と家に尋ねてきて、3ヶ月後には「やっぱり10ドルで買いませんか?」、一年後には「考え直して200ドルにしませんか?」と言ってくる世界であるということ。こんな世界は、普通の生活やビジネスでありえないのですが、それが当たり前に起こっている特殊な世界というのを表現しています。グレアム氏のメッセージは、こんな金融マンの話を真面目に話を聞いても仕方ないので、きちんと距離を置きましょうということです。

投資家がやるべきことは、その企業の価値が幾らかを合理的に計算して、発行している株数(企業毎でバラバラ)で割り算して、一株がいくらかを自分で計算すること。そして、「おいおい、そりゃいくらなんでも安すぎるなぁ」という時にだけその金融マンを家に入れて話を聞いて、場合によっては株を買えば良いということです。この証券マンというのは、金融市場全体を指していて、金融市場にはかなり距離を取りましょうが、グレアム氏の教訓です。

そして、この100ドル、10ドル、200ドルという価格変化の結構な部分は、新聞やテレビや現代ならばSNSのメディアの報道を起点に、それを人々がどう感じて売買をするかというプロセスで作り出されていて、延長としてはメディアとも適度に距離を取ることが大事ということになります。

自分がやるべきことは企業としっかり向き合うこと。メディアとは一定の距離を取る、金融市場とはかなり距離を取る(基本はほとんど無視)、というのが僕の頭の中にあります。コロナ禍でソーシャルディスタンスという言葉が生まれましたが、マーケットディスタンス、メディアディスタンスが大事ということです。そんな話をメディア(笑)でさせていただいたこともあります。https://www.facebook.com/watch/?v=2517125521922340

この哲学は、短期投資家(つまり売買を繰り返して、短期で億り人とかを目指そうと思っている人)とかトップダウンの投資家(マクロニュースを追いかけている人)には全く受け入れられない思想で、短期投資家はニュースをなるべく早く仕入れたり(市場をセミストロングフォームと考える)、あるニュースの人々の短期の投票結果を予想すること(ケインズの美人投票の考え)を行動の基本としています。投資哲学におけるMarket timingか Individual Securities mispricedの2択は正に相反しているのです。どっちが正しいとかは宗教論争なのですが、僕はコロンビア大学までわざわざベンジャミン・グレアム氏の考えを学びにいって、余計に腹落ちして、今でもMr.Market氏の教えを強く信じている訳ですが。

さて、そんなメディアが苦手な私がSNSのNOTEを始めたくなって、「本当にやっていけるのか」と悩んでいたところ、著書「声に出して読みたい日本語」で有名な齋藤孝さんの本「ニーチェ自分を愛するための言葉」を見つけて手に取りました。

例えば、自分より優れた人をすぐ見つけられるSNSの世界で落ち込んでしまう、いいねの数やフォロワーの数を他人と比較してしまう、ことに対しての対処法をニーチェの格言の解釈から解いてくれた本ということで、今の私には大変に参考になりました。

・自分の世界の創造(P.68〜)

自分の感覚でこの世界を掴め、自分の感覚でつかんだものを究極まで考え抜くべきだ、というところ。これを目的としてNOTEとかブログを書いていくのはとても良いなと思いました。やっぱ書いて発信すると頭まとまりますし、プロとして投資に20年向き合って、何千冊も本を読んで、海外に長く住んで、自分のお金の投資で失敗も成功もあって、感情の変化も色々と経験して、自分の感覚で掴んできたものは確実にあるのです。

・嫉妬心の克服(P.110~)

比較するなら過去の自分と比べよう、他人を嫉妬で傷つけた時は素直に謝ろう、というところ。行動経済学や心理学で非合理な行動をする個人の特徴は、「時間と比較」に対する脳の間違え、がかなり多いと思っています。人間の脳って比較を扱うのがとても苦手なんです。嫉妬はマジ意味ないので、ただ比較なしに生活も無理なので、理解して上手に付き合いたいですね。

・破壊と創造(P.162~)

積み重ねるのではなく、積み減らせ。創造者とはまず何かを破壊するべき、というところ。これは上の「自分の世界の創造」を臆せずにやっていこうと読み替えました。僕は投資っていう概念を、経済学やファイナンスの教科書とは、違うように解釈できるようになってきていて、それが面白くて色々な発信をしています。時折、「綺麗事すぎる」とか「学問的じゃない」とか言われて躊躇することもあるんですけども、NOTEはそういうユニークな発信をする上では素晴らしい場所だと思います。

これからの時代、価値観はどんどん多様化して、もう画一的な(例えばいい大学出ていい会社で勤める)とかは、さらにどんどん無くなると思います。皆が、オルタナティブに自由にいきなくちゃならないってことは、もっと大人にならないと、自立しなければならない。そのためには、自分の考えの拠り所になる宗教や哲学がもっと求められると思うし、人生にさまざまな投資を取り入れていくことが求められます。

ところで、去年聞いて、こりゃ面白いなと思った言葉に「スネオの法則」というのがあります。ドラえもんのスネ夫くんなのですが、自分より成功している人を見つけても、ねない、たまない、ちこまない、という法則を守ろうという教えです。ニーチェの金言を日本人が記憶できるような言葉に変えてある名言と思います!

人間の脳は比較が苦手なことを頭において、人と比べったってしょうがないを常に思い出しながら、良い発信と自分の成長を続けていきたいです。


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