寄付に関して、まず知っておくべき法律の知識
「寄贈寄付」についての続き記事です。前回記事はこちら。
<寄付についての法律はどうなっているの?>
さて、寄付という活動について、その法律での扱いどうなっているのでしょうか。実は、つい最近まで寄付を規定している法律はありませんでした(ただし政治資金規正法など政治関連の寄付についてだけは法律で定められていました)。
2022年12月16日に、寄付の定義までをはっきり定めた法律、不当寄付勧誘防止法、法人等による寄付の不当な勧誘の防止等に関する法律(第2条)」が登場し、翌年の6月に施行されました。
法律における寄付の定義。これは、個人が法人等に対して、
① 無償で財産に関する権利を移転すること
② 無償で財産上の利益を供与すること(遺贈、債務免除)
と定められています。この定義に対して、不当寄付勧誘防止法と消費者契約行為で、寄付という行為が規制をしてしていくのが現在の体系です。
前者の不当行為の防止法は、18条までのシンプルな構成になっています。書いてあることは、例えば、寄付者の意思で決定をしてもらう、経済力に応じた寄付を求める、嘘をついて寄付を集めない、無理やり勧誘しない、借金をさせてまで寄付をさせない、約束した目的に実際の寄付を使うなど。当たり前のことですが、色々と禁止行為が定められています。これが破られた場合は、寄付を募っている団体は勧告や名前公表がされたり、罰則をうけることになります。
同じくお金を募る金融やファンドの世界では、金融免許者は販売相手に適した投資商品を勧めるという「適合性の原則」があり、これを破ると業務停止になったり免許が停止されますが、これの寄付版が正にこの防止法ですね。また、業者が言い逃れできないように「勧誘」について明確な定義がなく裁判所が判断するという考え方も、消費者契約、金融商品取引法などと同じになっています。
いずれにせよ、この不当防止法の施行で、NPO法人、福祉法人、クランドファンディングなどの仲介者といった、寄付を募る側がしてはいけないことが明確になりました。また、法律ではないものの、遺贈寄付の倫理に関するガイドラインも一般社団法人の全国レガシーギフト協会によって2021年9月に整理されています。行動原則、行動規範などが完結にまとめられており、実務上でも法律の判断でも参考にされていくものと思われます。
こういう文書化してあるガイドラインは助かりますね。中見を見ていて「こういうこともありうるよな」と思ったのは、遺族の方が寄付を返してくださいと言ってきた対応でした。寄付者の意思をしっかり尊重しないとならないですよね。
第4条の勧誘の禁止行為は6つが明確に定められています(消費者契約法と同じ)
・住居や職場から退去をしない
・退去をするのを妨害する
・寄付の勧誘をすることを告げずに、退去が困難な場所に同行して勧誘する
・相談のための連絡を妨害する
・恋愛感情を悪用する
・霊感などで不安をあおる
寄付を募っているNPO法人で、上のようなことをする団体は極めて希だと思いますが、しっかり定めておくことは大事でしょう。この基準は旧統一教会でのトラブルを前提に作られているようです。
ちょっと短めですが、深く入り込むときりがないので以上とします。いずれにせよ、寄付についての法的位置づけがはっきりしたことで市場に透明性や信頼感が生まれ、社会課題の解決にお金が回ると良いですね!
次回は最終回、寄付に関する税務の話をしたいと思います。