泣かなきゃいけない夜
苦しくてたまらない夜が久しぶりに来た。
深夜だからと堪えて嗚咽を漏らしながら涙を流すしかない夜が来た。
泣かなきゃいけない夜が来た。
何が原因なのかわからない。
ただここに存在することだけで、もう限界だ。
泣くことは気持ちが軽くなる行為ではない。
我慢できる容量がいっぱいになってしまっただけ、コップから溢れてしまった物が涙なだけだ。
どれだけ泣いてもコップにはなみなみ苦しさや悲しさが注がれていて、少し傾ければ零れてしまう。
進んで死にたいわけではない。
でも消えてしまえるほど苦しくて不安で悲しい。
時間は全てを解決してくれない。
親友を失った喪失感も虚無感も無力感もまだ、ありありとここに生きている。
笑い方も声ももう思い出せなくなってしまったけど、重くて辛い気持ちだけはまだここにある。
一生会えないという絶望感に塗れている。
父親に吐かれた耳を疑うような痛い言葉も胸を突き刺しているし、何者にもなれていない自責の念も健在だ。
泣いてるだけでいるのがいちばん楽で、泣いてる時は甘えていて、泣くことは逃げていることだと言われたことがある。
私には自分と向き合う手段が泣くことしかない。
いつも目を背けていた自分の汚い感情に、泣いてる時間だけ向き合うことが出来る。
涙を流しながら自分自身に対して心を開いて、やっとひとつひとつに向き合える。
いつもは強く、笑っていなきゃいけないと思っている。
大の字で寝転んで手足をバタバタさせ、自分を受け入れて欲しいと駄々を捏ねているようで、誰かの前で泣くことを恥だと思っている。醜いとすら思っている。
大切な誰かもこんな自分を見たら嫌いになってしまう。弱い自分を受け入れてくれる人など誰もいない。
私だけが私を慰められる。
息を吐き切るように、叫ぶように泣く。
何事もなかったかのように、明日を迎えるために。