ツチヤタカユキ自費出版作品感想/言葉の誕生日
前置き
数日前の3月20日がツチヤタカユキ氏の誕生日なので、彼が自費出版で出した作品全ての感想を述べます。
またInstagramに載せた私の感想を最初に置いておきます。尚、今回は趣向を変えてネタバレ要素は控えめにしています。それは、いつもの場合だと自意識過剰な部分が目に見えているから自分なりの新参者への優しい案内人として情けないと悟ったからです。
◯『安城さんの見る世界』
まず、最初の作品で次の詩集と同時に発刊された小説です。R指定されているので内容は今までの私小説よりも刺激的になっています。
ドロドロした感情がずっと止まらない、最後まで息が詰まる思いで私は満たされていて、退廃的が世界観に相応しい言葉としてそのまま鎮座していました。そうして読み進める内に無理矢理コールタールを飲まされているような錯覚を私は覚えたのです。
ドロドロした世界観だが、求めているものが切なく暖かいもので感傷的にもなります。
◯『ロブスター・ガールフレンド』
上記の小説と同時に発刊された最初の詩集です。一部作品が雑誌『ユリイカ』の投稿コーナーに掲載されたものもあります。
歌詞ではない「詩」と言えば全て優しさしかない言葉で出来ていると先入観しがちですが、ここの詩はそれを覆すとは大袈裟だが棘だらけの言葉で出来た詩が未体験だった私には刺激的でした。
だからといって、今まで信じてきた「詩」を見捨てたりしません。私が「詩」への視野を狭めてしまいそうだからです。自分が信じていた美しいだけの言葉を疑わなくてはならない時がその時でした。
◯『マシュマロホイップ・ギャング』
次に発刊された詩集で、今まで発刊された作品で一番厚いです。
前作と変わらず刺激的な言葉で散りばめられていた詩だらけでしたが、最後の詩だけは打って変わって愛のある言葉で敷き詰められていました。
生きてきた世界で自分の中の言葉が埋まっていく、その言葉が生まれていった時はあまり考えないでしょう。ツチヤ氏の詩を読んでいく内に言葉たちの誕生日も大事にした方がいいと思うようになりました。
◯『Birthday Cake』
こちらは元々販売される予定でしたが、ツチヤ氏が自身のインスタにコロナ禍によるイベント自粛対策の一つである無料配信に影響を受けてこちらも無料公開したと述べていました。しかし、突然AmazonKindle限定で販売されるようにもなりました。
こちらも過激な内容でしたが『安城さん~』が退廃的ならば、こちらは破滅的が似合います。思えば、ツチヤ氏の作品の中に生きる言葉は暴走と危険が孕んでいます。このような言葉が見せかけの平穏によって抑圧されて絶滅して完全に過去の遺物にされる未来があってはならないと私は考えたりもします。誰だって生きていける世界にはそれも大事だと思わないかと大きな世界に問い掛けたくなるんですよね。
余談ですが、後に電子書籍版も購入しましたけども、無料公開しているのをただ眺めている自分がなんだかじれったいと感じてしまい、noteで公開されているのもあってか私は読了後に彼に支援金を提供しました。こんなことをする私もつくづくおっとろしいとも思えたりもします。
後書き
『Birthday Cake』以外の作品上段のリンクで購入可能です。
『Birthday Cake』は有料版と無料版を記載しておきます。自分として出来る範囲が狭いのがこれっぽっちと嘆きたくなりますが、それでもやれるだけのことからは逃げ出したくない、『笑いのカイブツ』の続刊が無事発刊されることを祈りながらやれることは尽くします。
最後の画像は『安城さん~』の表紙の裏に書かれてあるツチヤタカユキ本人のサイン、『ロブスター~』や『マシュマロ~』に勿論載せてあります。