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礼遇

私達はどこへ向かっているんだろう。

飛び乗った新幹線の中、彼は行先を調べていて、私は窓の景色をぼんやりと眺めていた。



新潟駅で降りた。

ふわりと風が吹き抜ける。
綺麗な空気は肌触りが違う。
すんとして少しだけひんやりしている。


彼に手を引かれて着いたのは、古いけれど小綺麗な、小さな旅館だった。

「いらっしゃいませ」
外には着物を着た仲居さん達が立っている。
さっき予約したばかりなのに、玄関で待っててくれたのかな。
「ゆっくりしていってくださいね」
女将さんは柔らかに微笑んだ。



部屋についてもまだ笑顔の余韻は残っていた。
「良い宿だね」
すると彼の顔がぱっと明るくなった。

「良かった。どこが良いかなって結構探したんだ」
新幹線の中の彼を思い出す。
「気に入ってくれたなら、良かった」
頬杖をついて彼はにっこり笑った。

私は心の中で一礼した。
その笑顔とこの旅館に。

来て、良かった。



#旅する日本語
#礼遇
#30秒小説

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持田瀞 Mochida Toro
お読み頂きありがとうございます⸜(๑’ᵕ’๑)⸝ これからも楽しい話を描いていけるようにトロトロもちもち頑張ります。 サポートして頂いたお金は、執筆時のカフェインに利用させて頂きます(˙꒳​˙ᐢ )♡ し、しあわせ…!