私達はどこへ向かっているんだろう。
飛び乗った新幹線の中、彼は行先を調べていて、私は窓の景色をぼんやりと眺めていた。
新潟駅で降りた。
ふわりと風が吹き抜ける。
綺麗な空気は肌触りが違う。
すんとして少しだけひんやりしている。
彼に手を引かれて着いたのは、古いけれど小綺麗な、小さな旅館だった。
「いらっしゃいませ」
外には着物を着た仲居さん達が立っている。
さっき予約したばかりなのに、玄関で待っててくれたのかな。
「ゆっくりしていってくださいね」
女将さんは柔らかに微笑んだ。
部屋についてもまだ笑顔の余韻は残っていた。
「良い宿だね」
すると彼の顔がぱっと明るくなった。
「良かった。どこが良いかなって結構探したんだ」
新幹線の中の彼を思い出す。
「気に入ってくれたなら、良かった」
頬杖をついて彼はにっこり笑った。
私は心の中で一礼した。
その笑顔とこの旅館に。
来て、良かった。
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