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恋草

僕らは動物園にやって来た。
パンダの赤ちゃんが目的だったが混んでて観る事は叶わなかった。
「親パンダも可愛いよ」
「パパパンダ可愛いね」
2人で大人パンダを褒め合って笑った。

アイスクリームを2人で分け合う。
ペットボトルのお茶も半分こ。
真夏の動物園は思った以上に楽しい。

「夜にはお別れだね」
駅に戻るとそんな言葉が口をついて出た。
しまった。
途端に寂しさが押し寄せる。

そばに新幹線の案内板がみえた。
「これに乗れば遠くに行けちゃうね」
彼女が呟く。
横顔はいつも通り凛として白い肌が綺麗だ。

僕は目頭が熱くなる。
まだ離れたくない。
「行っちゃおうか」
え、と戸惑う彼女を尻目に切符をさっさと買って手を引く。

「ほんとに、行くの?」
彼女の黒々とした目。長い睫毛。
「行くよ」
僕達は改札を抜けた。

心臓がばくばくしている。
でも気持ちは晴れやかだ。
このまま行けるところまで行っちゃおう。
どこか遠くに。


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