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富士山と人々の祈りが見えた日
冬になっていよいよ空気が澄んで、私が住む東京でも富士山がくっきり見える日が増えてきた。
寒いのは嫌だけど、富士山が見えるのはうれしい。ついつい外に出ちゃうね。
富士山というと、日本一の標高や美しい山形はもちろん、千円札に描かれたり、世界遺産だったり、長い由緒だったり、まあいろいろ親しまれていると思う。
まさに日本・日本人の宝と言えよう。
さて、自宅近くの富士山が見える広い公園に行ったら、多くの人が富士山を眺めて写真を撮っていた。平日の日中だというのにすごい人。
自転車で来ている人もいれば、散歩できていたり、ジョギングしていたり。
残念ながら一部雲に隠れていたけど、それでもみんな富士山に向けて熱い視線を向けていた。私もつい寒さを忘れてじっくり見ていた。
これからもっときれいに見えるのかな。楽しみだ。
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こう多くの人が富士山を眺めている光景を見たら、あることを思い出す。
去年の12月のちょうど今頃、長野県の小諸市にある懐古園っていうところを訪れた。
紅葉がきれいで日本唯一の穴城跡ということでいろいろ散策しつつ見てたんだけど、そこの展望台で夕焼けと共に富士山がきれいに見ることができた。(トップ画像の写真。一番下にも載せたので最後まで読んでみてください。)
いやあ綺麗だったなあ。
そこに係員のおじさんが巡回も兼ねてやってきて、私に「今日は富士山きれいですね!」と言ってくれた。
そうですね~とか言ってたら、おじさんは私のすぐ横で、富士山に手を合わせて拝んでいたのだ。
畏怖するように。感謝を告げるように。祈るように。
懐古園のスタッフということならきっと毎日見ているだろう。それでも祈るおじさんの光景は神様に拝んでいるかのような光景で、今でも脳裏に強く焼き付いている。
私がすぐ隣にいるのに、富士山はとても小さくしか見えなかったのに、富士山とおじさんしかいないようだった。
美しさに見とれたのではなく、「ありがたい存在」として神聖な気持ちになって感謝をしているのが、隣から見てもよく分かった。
やがておじさんは目を開いて、「ごゆっくり」と言って笑顔で去っていった。
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まあ神社やお寺に行ったら畏怖とか恐れに近いのかな、なんか雰囲気が違うとか落ち着くって思うことはあると思う。
だが、こういう神聖な気持ちになるまでは私にはなかったと思う。
「ありがとう」は感謝の言葉だけど、古典の語源は「有難し」といって、「(めったにないほど)素晴らしい」という奇跡の表現をする。
当たり前だけど、ありがたいものは奇跡なのだ。
しかも、ことばには言霊がある。
「幸せだなあ」と口にすれば本当に幸せになれるって書評も書いたけど、自分の思いや発言した言葉は言霊で、自分に帰ってくると思う。
皮肉なしで本心で「ありがとう」って言えば、必ずありがたいことが自分の身に帰ってくる。スピリチュアルは好きじゃないけどこれは事実だと思う。
富士山に対してだろうと、神社だろうと、人だろうと、物体だろうと、対象が何であろうと何か神聖に思う気持ちが最も大事。そしてそれは自分の気持ち次第で必ず帰ってくる。
つくづく古文って風流だなと思う。漢詩ばっかり読んじゃうけど、また日本の古典文学も読み返そうかな。
(ちなみに、「あり」には「存在する、生きる」という意味もあるので、「有難し」には「生きていくのが難しい」という意味もある。でも、そもそも存在自体が奇跡だし、死ぬ前に悟りを開くとかあるからある意味何か意味を持つのかもしれない。うーん、ちょっと表現が難しい)
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去年(というか今年の2月)まで当然のように旅に出ることができていて、いちいち旅の喜びをかみしめることはなかった。しかし自粛期間を経て秋ごろに久しぶりに登山して、山から関東平野の景色と紅葉を見下ろした時は涙が出そうなほど感動した。
あのおじさんも、ああして富士山を拝める日常は当たり前と思ってなかったのかもしれない。
まあ気にしない人はもう気にせず出かけてるだろうけどね。笑
当たり前すぎて忘れがちだけど、今の状況の中でも「感謝」を忘れずに最後まで今年を駆け抜けていきたいと改めて思った。
神社といえば、来年の初詣はちょっと厳しそうだね。
まあ三ヶ日すぎたらさすがに空いてくるだろうから、地元の神社くらいは時期を見ていこうと思います。(神社の近くを通ったら「2月までお正月なのでゆっくり参拝してください」ってポスターが貼ってあった)
流石に神様の前で新年早々クラスターが発生したら縁起でもないよなあ…
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せっかくなので懐古園で撮影した写真も紹介します。長野県の小諸駅からすぐのところにある城跡で、日本唯一の穴城跡だとか紅葉がきれいだとか、散策するだけで楽しいところなので是非行ってみてください。
やや高い標高に位置する小諸市。しかもまわりは山に囲まれて川が流れているため、すでに天然の要塞になっています。
そのため城下町よりも低い場所に城を築くという、驚きの構造。
長野県も高い山々がそびえるため富士山はちっぽけ。とはいえ、白い雪で覆われた山は肉眼で見ても小さいはずなのに存在感がありました。
由緒など詳細はぜひサイトをご覧ください。↓
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