鹿児島県は有名観光地以外でも見どころ満載……だけど。
今年何度目かの鹿児島。
もう、飛行機がバスのような感覚になりつつあるけれど、やはりバスよりはうんと高い。
そんな中、「奄美大島発着」の航空機が、数本撤退するとの連絡を受けた。
奄美大島が世界遺産認定されたのはコロナ禍、ようやくこれから、という時。これは、なかなかの痛手。
コロナ禍のうちにもっとインバウンド観光客を呼び込める体制が整っていたなら、こんなことにはならなかったはず。
奄美大島に就航していた航空機は、爆増しているインバウンド客向けに海外路線に回されるという。
離島はいつも後回しだ。
まぁ、今観光客が一時的に減る方が、湯湾岳に登れなくなっている宇検村には有難い。
その間に、出来る限りの準備をしなければならないけれども。
起業に向けて、やることが多すぎて本業が進まない。副業も進まない。
その上に、「オン」して来る「地域おこし協力隊」としての日々。
そろそろ活動も終盤、起業準備研修が増えて来た。
参加は任意ではあるけれど、出来る限り参加すべく申し込みを始める。
何よりも大変なのは、事務所にできる場所を探すこと。
そして、住む場所を見つけること。
移住希望者が増えた奄美大島。そこに目を付けた他府県の不動産屋さんが、いかにも都会にありそうな物件をいろいろ建て始めているが、やはり土地は売らないという人の方が圧倒的にまだ多い。
空き家だらけの宇検村でも、移住者がすぐに生活できるようなレベルの家はもはやほぼない。
移住者を増やしたければ、綺麗な家を作ればいいだけだと思うのだが、そうはいかない地方行政の予算。
ガイドなりたてで研修を受けていた頃、齢、80を超えられている大先輩が、大型のバスに乗り、流暢な英語で新人ガイドから笑いを取っていた。
半年働いて、半年休む。どこにいてもできる仕事。旅が仕事。
それができる仕事はなかなかない。
そう言われ、いい仕事だなと感じたけれど。
実際は、きっと身体も大変だったのではないかと今なら想像できる。
今回は、起業の一環で研修を受けたのだけれど、朝から晩まで続く研修。
出張したところで、どこにも行けるわけではない。
それでも、観光客を案内するときの事を絶えず考えて、周囲を確認する癖がついている。
最終日、奄美に戻るフライトの時間までの間、バスを待つ間に鹿児島中央駅近くの天然温泉でいいか、それとも鹿児島空港に早めについて足湯でもするかとか考えていた。
(どんなに時間が無くても何とか温泉に入ろうとする人)
そんな時、頼りになる焼酎マイスター仲間やガイド仲間たち。
いつも、奄美に帰る直前、やらねばならないことを片付けた後、恐る恐る声を掛けると、鹿児島のそこら中にある温泉、隠れた名湯に案内してくれる。
どこのエリアにも小さな公衆浴場があり、それが天然温泉だったりするから驚きだ。
地元の人と触れ合える小さな温泉が無数にあることは、大きな温泉がひとつあるよりも観光客には嬉しいもの。
鹿児島県のウリのひとつと言えるのかもしれない。
「せっかく来たんだから、車ですぐだから!」
そう案内してくれる友人に感謝。
短い時間でも、十分楽しめる、温泉だらけの鹿児島。
薩摩川内市にある温泉まで案内してもらった。空港バスで40分ほどの距離。
車ならもっと早く着く。その名も諏訪温泉。
ひなびた温泉は、湯治もできるようで、隣には数部屋の建物があった。
友人曰く、タオルが茶色に染まるという。
有馬温泉と同じ、鉄分豊富な温泉。足元のタイルも茶色に染まっている。
ゆるゆると温まってから、少し離れた食堂で、美味しいランチをお腹いっぱいいただいた。どうやら人気店の模様。いろいろな方のサインがあった。
観光客ならきっと気にいるだろう景色。近くの眼鏡橋も、どうやら年代物のようではあるけれど、観光客が写真を綺麗に取れるような造りにはなっていない。所謂、生活道路なのだろう。だからこその価値がある。
ゆっくりランチを取りながら思った。
やはり鹿児島がインバウンド対応可能となるまでの道のりは遠そうだ。
どこに行っても、メニューには英語表記どころか、アレルギー記載もない。
友人が、ふらりと声を掛けた私を案内してくれるのと同じように、鹿児島県が個人インバウンド観光客(FIT)に対応できるようになる日は、かなり先だろうと思われる。
知事が宣言していたので、進んで行くのだろうけれど、今宣言しているということは、実際に実現するのは5年後か、10年後か。
何故なら、ここも奄美大島と同様に、中心部以外の観光地へ行くには必ず車が必要な場所、そしてやはり、どこにも外貨両替機の姿は無かった。
英語表記も、一旦空港を離れてしまったらもうどこにもない。
ということは、いい意味では通訳案内士が必ず必要になる場所、ということなのだけれど、結局のところ観光地へ直行できる脚がろくにない。
そう、バスを乗り継ぐしかない。これも奄美大島と同じ。
まだ電車があるだけましだけれど、中心部を離れての観光は、車無しでは、ほぼできない。公共交通機関の便が、あまり良く無いのが地方都市。
その点で、京都は奇跡的に優れていると言える。
だからあれほどインバウンド観光客が増えたのだと思う。
それに気が付いている地元の人たちはどれくらいいるのか。
何なら、観光客の目を引く鹿児島空港の足湯にだって、英語表記ひとつないので、インバウンド観光客が不思議そうな顔で、脚を湯に浸けている日本人を見ながら通り過ぎている。
ここにあるタオルの自動販売機なんて、間違いなく外国人が食いつくはず!なのに、これまた英語表記は皆無だった。これでは余ったコインで旅の最後に購入することもできない。
関西空港も、成田も羽田も、余ったコインをガチャで使いまくる海外の人がどれほどいるのかをご存じないようだ。
鹿児島空港には、時間を潰せるスポットが沢山あるのをご存じだろうか。
2階には、SORA Stageというものがあり、展望デッキ側からも入ることができる。
この展示室の中には各飛行機の歴史やプラモデルだけでなく、アテンダントの人が研修で利用していたらしき飛行機のボディ部分や、シミュレーターを模したゲームっぽいものもある。飛行機好きにはなかなか楽しめる施設。
楽しそうにフライト時刻まで時間を過ごす観光客の姿があちこちに。
ええ、勿論、全部、日本語だけです。
どこもかしこも。
旅の終わり、先は長いなと感じながら、これから先が楽しみだ、仕事の可能性が多い、と、思えばよいのかと気持ちを切り替えた。
鹿児島県がインバウンドFIT(個人観光客)を問題なく受け入れ可能となる日はいつの日か。
旅はまだまだ続きます。