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映画「メッセージ」にみる「触れる」という非言語コミュニケーション

※「ハニカムブログ 」2017年6月8日記事より転載

やっと映画「メッセージ」を見てきました。

未見の方にはネタバレ(詳細なストーリーではなくテーマ的に)になってしまうかもしれないので、ぜひ映画を見てからお読みいただきたいと思います。


「言葉」というツールを使って、相手の「存在を確かめる」物語。

あえてセラピスト的な視点でいうならば...

そこに至るまでは「非言語」としての「触れる」という行為や、両者の間の「バウンダリー」など、
日頃のセラピーでも大事にしている要素がたくさん含まれていたように思う。

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「触れる=タッチ」ことに関してポジティブなことが強調されがちだけれども、相互の理解が適切になされていない場合は、昨今メディアを騒がせているレイプ事件のように、暴力的なものとなる側面もはらんでいます。

「触れる」ことが癒しとなるか、暴力となるかを分けるのは、両者の間のコミュニケーションの質。

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映画で、宇宙生命体と主人公がコンタクトを試みる時。

彼女はまず自身の防御服(=殻)を脱いで、相手に歩み寄る。

敵意のなさを表す時、また相手との距離を確かめる恐れがある時、自ずと手を差し出す速度はゆっくりになる。

そして相手もそこに対して手を差し出してきたとき、それは第一段階の「受容」の印となる。

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しばしそれを確かめ合う間には戸惑いが生じたり、一旦は離れたり。

再度呼吸を整えて「相手を知ろう」として何度も対峙する。

そうして、その距離が少しずつ適切な時間をかけて縮まった時、お互いを尊重できる安全な存在だと認識する。

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常に、「触れる」ことは「触れられる」ことでもある。

両者の間にその相互的な循環が生まれた時、コミュニケーションが成立していく。

主人公と、宇宙生命体との関わりには適切な「クオリティ・オブ・タッチ」とバウンダリーの関係性が存在していたように思う。

(それができない登場人物がいたのは、「言葉」によるコミュニケーションの難しい側面を象徴してたけれど)

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そして、もう一つのテーマである「時間」についても「触れる」ことと合わせて考察することができる。


この世界で時間だけが唯一私たちに平等なものだと思っていたけれど。

この映画のように、本来は時間が存在しないとしたら...?

実際に、私たちの潜在意識の中では未来、過去、現在が、同時に存在する。

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「触れる」ことには未来や過去はない。

「今」だけ。

例えばオイルトリートメントなどの触れることの連続は、永遠の「今」という瞬間の連なりであり、その感覚に身を委ね続けることは非常にマインドフルなもの。

その「今」の感覚から内側の意識を広げていくと、未来や過去にもアクセスできるのかも...などと思ったりする。

セラピーのセッションの間、ただ心地よさに身を任せていたらスポッと穴に落ちたような深い睡眠に入って数時間経ったような気がしても、実際はほんの数分ということも、よくあること。

「触れる」ことの心地よさは、時に時空をいとも簡単に歪ませるのです。


全体の音楽監督はヨハン・ヨハンソン。

実は映画「メッセージ」にまつわる音楽に、いくつかの個人的なシンクロニシティがあって。

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今年の年始に訪れたアイスランドのビョークも行きつけだというCD屋で、試聴して30秒で彼のアルバム「Orphee」の購入を決めたのでした。

そして、映画の冒頭とエンディングに流れるのはマックス・リヒターの「On The Nature of Daylight」。

監督のヴィルヌーヴが仮であてたこの音楽を聞いたヨハンソンが「これ以上合う音楽はない!」ということでそのまま使うことになったそう。


こちらもちょうど先日、「眠り」をテーマにした超大作8時間のアルバム「SLEEP」を購入したばかり。

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マックス・リヒターの音というのは、人生まるごと包んでくれるような優しさに満ちていて。

なぜかアルバムを聴きながら、「年老いた自分が、今際の際に何を思って死にたいかちょっと考えて涙ぐむ」というビジョンが湧いてならなかったのだけど...。

「メッセージ」を観てみたら、映画のテーマと私のビジョンがものすごくリンクしていたので、驚きました。

なんども静かに心の中で反芻したくなる、そして想い出すごとに自分の内側の知らない領域が少しずつ開いていくような、そんな素晴らしい映画でした。

■ 小松ゆり子 official web site
http://yurikokomatsu.com

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