ウニ漁/中1のとき。
中1の夏休み直前のある日、シンジが
「とっちゃんさぁ、ウニ取りしないか」
と、声をかけてきた。シンジは漁師の息子だ。漁師の息子だが、舟が苦手でできれば陸で手伝いたい組だ。
とっちゃんは二つ返事。こっちは船でもOKだけど。
言われた通り、早朝に港へ行く。
シンジと組んで港でウニを採る。
シンジは漁師の息子だから、道具がいい。トラックのタイヤくらいのチューブの真ん中にカゴを入れたものを海に浮かべる。
とっちゃんはただの桶。これもぷかぷか浮かべておく。
そして手には手ごろな大きさのタモ(網)。タモにはロープを縛り付け、桶にガッチリロープの先を縛っておく。同時に潜り始める。
漁の時間は2時間くらいを目途に。欲張ったら、凍えて死んじゃうし。桶一杯取ったら体力ぎりぎり。こっちもやばい。
10メートルくらい潜ると、底に着く。ウニは2重、3重に沸いている。それをタモに入るだけ入れる。ヨシ、と思ったら、タモを手放して本人はふわっと海面へ。シンジはチューブの上に上がって、とっちゃんは桶に手をかけた状態で。力任せにタモを引き上げる。とっちゃんならタモ満杯に入れるから辛い労働だ。シンジは三分の一くらいの取り高だが、ふぅふぅしながら引き上げている。
桶がいっぱいになったらコンクリートの港に引き上げておやっさんに渡す。おやっさんは港のセリで売る。とっちゃんはタモに入れるとき、大きくてまんまるのを選っているから、けっこういい値が付いたらしい。
港にはいつもストーブがたかれている。
桶を引き上げるときには冷え切って、体力もなくなってふらふらする。唇は真っ青だ。焚火が無かったらやってられない。
漁は夏休みの間ずっとやっていた。
寒い日は死んでしまうから無理しない。雨ならとてもじゃないけど寒くてやれない、風が吹いてもむり、そんなこんなで10日出れればいい方だ。
1か月ほどで漁は終わり、6千円のバイト代をもらった。
次の年もやったけど、それきり、ウニのバイトはやってない。