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映画『アキラとあきら』|こんなにも眩しい戦いと仕事への情熱がある
配信で何か映画を見たいのに「これ!」っていうのがない時ありません?
いろんな映画にちょっとずつは興味はあるんですよ。でも「これちょっと見たいかなぁ」「でも前後編はたるいかなぁ」「これは見たら感動しそうだけど重そうだなぁ」「疲れてるしもっと軽い感じのみたいんだよなぁ」とグダグダ悩み、時間がどんどん過ぎてしまう……。
そんな時は何を見ればいいのか、今回答えを見つけました。
池井戸潤作品です。
あらすじでそこまで興味は湧かない時も、出演者にそこまで引きがあると思えない時も、見始めると結局面白いのです。
これまで、
『空飛ぶタイヤ』(2018)
『七つの会議』(2019)
『シャイロックの子供たち』(2023)
の3本見て全部面白かった記憶があるので、今回も「池井戸潤原作だから面白いかもね」と夫と話して見てみたのが映画『アキラとあきら』(2022)です。
竹内涼真と横浜流星のW主演映画『アキラとあきら』。ダブル主演と言っても、やっぱり名前が先に書いてある方が主演じゃない?と思ってしまうW主演映画『アキラとあきら』のあらすじはこちら。
父親の経営する町工場が倒産し、幼くして過酷な運命に翻弄されてきた山崎瑛(竹内涼真)。大企業の御曹司ながら次期社長の椅子を拒絶し、血縁のしがらみに抗い続ける階堂彬(横浜流星)。
日本有数のメガバンクに同期入社した二人は、お互いの信念の違いから反目し合いながらも、ライバルとしてしのぎを削っていたが、それぞれの前に現実という壁が立ちはだかる。瑛(アキラ)は自分の信念を貫いた結果、左遷され、彬(あきら)も目を背け続けていた階堂家の親族同士の骨肉の争いに巻き込まれていく。そして持ち上がった階堂グループの倒産の危機を前に、アキラとあきらの運命は再び交差する ‒‒
『アキラとあきら』というタイトルからてっきりどっちかの名前がカタカナのアキラでどちらかの名前が平仮名のあきらだと思ってたんですけど、劇中2人のエントリーシートが映った時に2人とも漢字の「あきら」(瑛と彬)だったんで、「え、どっちが『アキラ』でどっちが『あきら』なの?!」と本筋と関係ないところで騒ぎました。
が、上のあらすじを読む限り、竹内涼真の方が「アキラ」で、横浜流星の方が「あきら」なんですね。(理由は不明)
池井戸潤作品の魅力って、ドラマもそうですけど勧善懲悪がわかりやすいところですよね。
弱い者が強い組織に立ち向かう。
権力と戦う。
普通なら戦う前に諦めてしまうような敵に立ち向かっていく。
池井戸潤作品の男の人っていつもほんとかっこいい。
めちゃくちゃ男らしいんですよね。
あ、「男らしい」とか今の時代あんまり言っちゃいけないんですよね?でも池井戸潤作品の戦う男たちのことはどうしたってそう言いたくなります。
みんなめちゃくちゃでかい敵と戦うので、もちろん一筋縄では行きません。
戦って戦って戦って、叩きのめされても立ち上がる。諦めない。何度でも立ち上がる。そのとんでもない粘り強さ。
そして何より、みんな自分の仕事に情熱も誇りも持っている。それにいつも胸が熱くなります。
ちなみに、今回の映画『アキラとあきら』の戦う相手は、専務でも社長でも大企業でもなく、仕事と自分です。
仕事をする上での理想と現実、
強い力の前で信念を曲げない難しさ、
自分を信じ、相手を信じること、
とんでもない壁にぶち当たった時に決して諦めないこと。
※この先は内容に触れますので、ぜひご覧になってから戻ってきてください!
竹内涼真演じる主人公のアキラは、超優秀にも関わらず、自分の信念に沿って仕事をした結果左遷されてしまいます。左遷先ではみんなやる気がなく、周囲も銀行の人間に期待していない状況。
普通ならここでかなりの人がダウンしちゃうと思いますが、それでもアキラは1人、「ただの金貸しではなく、人を救い、人を幸せにするバンカーになりたい」という信念を持ち続け、誠実に仕事に取り組みます。
仕事に対してのモチベーションがたけぇ涙!!!!!!
仕事って、こんなにも人の柱になっているものなのか。誰かを救いたい、幸せにしたいと懸命に取り組むものなのか。
どんなに頑張っても昇格できなくても、社内で評価されなくても、それでも懸命に取り組むものなのか。
仕事したくない、仕事したくない、ああ、仕事したくないわ〜と日々騒いでいる私。
旅行するため、子供のあれやこれや(歯科矯正とか塾とか習い事とか)のため、と言い聞かせ、重い腰をなんとか上げる日々。
週末を指折り数え、責任ある仕事を任されたりすると「げーーーー!!!!」と心の中で思っていたりする。
………なんて恥ずかしい奴なんだ!!!!!!
もう本当に恥ずかしいよ!!!
なんなんだよ、お前はもう!!!
(自分に言ってます)
竹内涼真ほどじゃなくても、もうちょっと仕事に理想と情熱を持ってくれよ!
嫌々やっていい仕事なんてできるのかよ!
情熱を持たないなんてもったいないよ!!!
と思わず自分に喝を入れてしまうほど、竹内涼真が熱い男です。
竹内涼真は『下町ロケット』『陸王』と続いて池井戸潤作品は『アキラとあきら』で3作目。きっと池井戸潤作品に合ってるんだと思います。
竹内涼真は本当に、こういう実直な、一生懸命ないい奴の役がよく似合う。
(こういう役が似合いすぎて、本当にこんな人だと思われて、勝手に期待されて大変そう、とも思います)
一方、もう1人の主役、横浜流星演じるあきらも大変な状況に。
彼の父親が大企業の社長なんですけど、ある日突然倒れて亡くなってしまいます。
普通なら長男のあきらが継ぐんでしょうけど、親族同士の歪み合いに嫌気がさしてメガバンクに就職した身です。
すると横浜流星の弟(髙橋海人)が自分が社長をやりたいと主張し始めました。
お前には社長は早い!!!!!!!!
と全国民が髙橋海人を止めたくなった瞬間。
いや、無理よ。どう見ても未熟なのよ。
部長どころか、チーム長任せるのだって正直不安なレベルよ。
超絶優秀な横浜流星への嫉妬心、ライバル心がむき出しすぎて怖い。コイツ、100%失敗するぞ、誰か止めてやってくれ!
と思ったらこの弟が予想以上に激しく失敗します。
叔父たちの口車に乗せられて、めちゃくちゃ赤字のリゾート施設になんと50億円の連帯保証を独断で決めてしまったのです。
50億!!!
なんでちゃんと調べないんだよ!!!
弟バカすぎ……涙!
お前何してんだよ!!!!
そして弟は過労で倒れ、横浜流星はメガバンクを辞めて弟の代わりに社長になります。
で、会社が鬼のように抱えてしまった負債と、今後の立て直しのための融資の稟議を通すべく、アキラ(左遷先で成功し、まさかの本社カムバック!!!)とあきらが手を取ります。
この時の竹内涼真の頼もしいこと!!!
社長肝入りのチームのメンバーに推薦されて、もうこのままいけばエリート街道まっしぐらだったんですよ。左遷先で腐らずに真摯に仕事をしてようやく返り咲いた本社勤務、そして、実力を認められての今ですよ。100人いたら100人が喜んで乗っかるエリート街道を、竹内涼真は辞退。
横浜流星のピンチを救うため、彼の会社の担当に笑顔で名乗り出ます。
そう、うちの涼真は101人目の男なんです。100人いたら100人が歓喜して進んだエリートへの道を、平然と辞退してしまう101人目の男。それが涼真。
昇格なんてどうでもいいの。
涼真は自分の昇格より、仲間を、仲間の会社に勤める多くの社員を救うことを選ぶ男なんです。
涼真、なんて立派な奴なんだ!!!
私が時短勤務の少ない給料からご飯を奢ってやりたい。そんで、小さい頃からずっと頑張ってきた涼真を褒めてやりたい。左遷されても腐らなかったところ、信念を曲げずに本社に返り咲いたところ、人を救うためにそこまで努力できるところ。褒められなくたって何も変わらず頑張れる奴だと思うけど、それでも思いっきり褒めてやりたい。お前はえらいよ……!!!
いろんな策を考えて提案しては、うまくいかず……
稟議書を出すも、上司から「確実性は?」と問われ、何も言えない涼真。
確実性はアイツ(横浜流星)です!
アイツが会社の社長になったんすよ!
あの入社時からめちゃくちゃ優秀なアイツが社長になるんです!この先、アイツがこの会社を更に大きくしますよ!
確実性は、アイツが社長になったことですよーーーーーーー!!!!!
と画面に向かって叫ぶ私。
戦って、打ちのめされて、
また立ち上がって、また戦って、また打ちのめされる……
のを繰り返し、本当にもうダメだと思ったところでの逆転。
ついに融資の稟議が通ります。
「アキラ」と「あきら」が自分の出せる力を全て出し、頭を下げ、導き出せた再建への道。
彼らの仕事への情熱と熱意、これまで努力してきたからこそ備わっている自信、判断力。
変わらない信念と、そばにいる人間によって変わっていく考え方。
仕事を通してしか得られない種類の達成感や喜び。仕事を通したからこそ見えるその人の本質。
仕事というものは、時に人を追い詰めてしまうこともあるけれど、人を助け、こんなにも輝かせることもある。
涼真と横浜流星が熱い握手をした瞬間に、
「池井戸潤にハズレなし!!!」を改めて確信しました。
そう。見たい映画がなかったら、池井戸潤原作の映画を見ればハズレはありません。
これからは私もそうすればいいんだ!よし、そうしよう!!!
とWikipediaを調べたら、池井戸潤原作の映画は『アキラとあきら』を含め、現時点で全4作。
……もう全部見てました。
まだ池井戸潤原作の作品で見ていない映画がある方、なんかこれと言って見たい映画がないんだのな〜と困った時には、池井戸潤原作の映画がおすすめです。
おしまい。
監督は『僕等がいた』『陽だまりの彼女』『坂道のアポロン』などの三木孝浩監督。
恋愛映画の名手、というイメージが強いので少し意外でしたが、そんな三木さんが監督をしたことで、『アキラとあきら』の中に爽やかな青春の空気が出ているのかもしれません。
この上野樹里がめちゃくちゃかわいい!
あまりに可愛くて、映画を見た当時「この髪型にしたい!」と髪切りました。(そして撃沈しました)
こっちは中川大志がかっこよすぎ。
中川大志のお陰でこの映画はギリギリどうにかなってます。