映画『THE 有頂天ホテル』|三谷幸喜映画祭② 知らないところで誰かは誰かを救っている
映画『スミオの話をしよう』を見に行きたい気持ちを抑え、1人で三谷幸喜映画祭を開催中です。
ということで、『記憶にございません』に続き、映画『THE 有頂天ホテル』を見ました。
2006年に公開され、興行収入60.8億円を記録した超大ヒット作。
キャッチコピーは「最悪の大晦日に起こった、最高の奇跡。」
カウントダウンパーティーまであと2時間の大晦日の夜に、『ホテル・アバンティ』で起こる人間模様を描いたコメディ作品です。
あらすじはこちら。
カウントダウンパーティーまで2時間。
映画の上映時間は2時間17分。
ほぼほぼリアルタイムです。
すごいぞ、三谷幸喜!!!
公開当時、大学生だった私は「こんな面白い映画があるのか!」と衝撃を受け、母親に「すっごい面白かった!ほんとに面白かったからお母さんたちも観に行って!!!」と一生懸命オススメしたのを覚えています。
当時は映画館のチケット売り場でバイトしてたんですけど(最初はポップコーンとか売ってるコンセッション担当だったんですけどね、ポップコーンの豆の袋を運ぼうとしてギックリ腰になり、チケット売り場担当になりました)、お客さんから「オススメの映画何かある?」と聞かれた時は自信を持って「『THE 有頂天ホテル』オススメです!」と答えておりました。
※観たかった映画が朝イチしかやっていなかったことが判明したお客さんに時々オススメ作品聞かれました。
『THE 有頂天ホテル』、もう何回か見てます。
何回見ても面白いんですよ。
何回見ても面白い作品こそ「名作」なんじゃないかと思います。
もう初っ端から面白い!
三谷幸喜監督作『みんなのいえ』(2001)に出演していたココリコの田中がラウンジで奥さんと食事してるんですけど、灰皿を取り皿として使っちゃってます。で、ホテルの副支配人・役所広司とアシスタントマネージャーの戸田恵子がこっそり話し合った結果、奥さんの前で田中に恥をかかせないよう、ラウンジの全ての灰皿を回収して別のデザインの灰皿と交換することにするのです。
灰皿を取り皿として使っちゃっている田中に爆笑しつつ、灰皿を全て交換する判断をした役所さんを見て、彼がどれほどお客さまのことを考えているか、どれほど優秀なホテルマンであるか、開始早々に伝わるオープニングで好き。
でもそんな優秀なホテルマンの役所さんもね、別れた奥さんの前では見栄をはりたくて大変なことになっちゃうんですよね……
あの鹿の被り物をしてスピーチを始めた時に、見ているこちらの羞恥心もマックス。
やめてーーーー!!!!早くこの人に本当のことを言ってとめてあげてーーーーー!!!!
と叫びたくなりました。
それにしても出演者が豪華。
役所広司、松たか子、佐藤浩一、香取慎吾、篠原涼子、西田敏行、原田美枝子、唐沢寿明、津川雅彦、伊藤四朗、戸田恵子、生瀬勝久、麻生久美子、YOU、オダギリジョー、角野卓造、寺島進、浅野和之、近藤芳正、川平慈英、堀内敬子、梶原善、石井正則……
23人います!
こんな強烈な人たちが23人……!
普通まとまらない。こんな主役級の人をこんな大勢集めちゃったら、どうしたって「あの人あれしか出てなくてもったいなくない?」とか「あの人のパートもう終わり?」とか「あの人の話ちょっと薄かったな」ってなりません?
なりますなります。むしろそうにしかならない。
私が大好きな古沢良太ですら『エイプリルフールズ』でそんな感じになってました。それくらい群像劇はめちゃくちゃ難しい。
なのに三谷幸喜にはそれがない。
登場シーンの尺はそれぞれ違いますが、出演している人の物語がちゃんと完結してるし、何よりちゃんと「足りている」んです。
役所広司と元妻・原田美枝子との久しぶりの再会も、香取慎吾の夢も、佐藤浩一の立場も、麻生久美子と津川雅彦の恋も、筆耕係のオダギリジョーも、コールガールの篠原涼子も、自分の恥ずかしい写真を削除したくて仕方ない角野卓造も、緊張しいの演歌歌手である西田敏行も、好きな歌を歌いたいYOUも、みんな足りてる。
彼らの物語は十分わかるし、なんなら描かれていないところまで想像できるし、これ以上は逆にいらないくらい。
『THE 有頂天ホテル』は何も考えずに思い切り笑って見れる映画ですが、誰かが誰かを救っているところがいいなと思います。
灰皿を全て交換することで誰かの楽しい時間を守り、
その人が泊まる部屋から想像した彼女の気持ちを伝えることで知らない2人の絆を深め、
誰かのために書いた文字が誰かを幸せにし、
励ましが誰かを奮い立たせ、
そんなつもりはなかった踊りが疲れ切った誰かを笑顔にし、
相手に届いたと思ったら全く届いていなかった歌も壁の向こうで聞いていた誰かを救う。
何かを諦めたり諦められなくてもがいていても、ただただ仕事だからとやっていたことでも、それが思い通りの人生じゃなくても、大勢に影響を与えられるような人間じゃなくても、
知らないところで誰かが誰かを救い、
知らないところで誰かが誰かを幸せにしている。
もしかしたら私も、自分が気づかないところで誰か1人くらい救ったり、幸せな気持ちにさせていたりするかもしれない。
見終わったあと、そんなことを思わせてくれました。
それにしても、あのホテル泊まりたいですよね。
役所広司や戸田恵子に「おかえりなさい」と言われて、香取慎吾に荷物を部屋まで運んでもらいたい。
ラウンジであのバカでかいカフェオレを飲み、何かを探しているホテル探偵の石井正則の様子をこっそり観察したり、偉そうに闊歩する伊藤四郎とすれ違ったり、ホテルの中に貼られたオダギリジョーの字を探したりしたい。
佐藤浩一がこっそり泊まりに来たことに気づいても気づかないフリをして、篠原涼子が派手な格好でウロウロしてるのも見て見ぬふりをしてあげよう。
泊まった部屋はできるだけ綺麗に使って、松たか子に「ここに泊まったお客さんはきっと長生きするわね!」とでも言ってもらうんだ。
という妄想までしてしまう『THE 有頂天ホテル』。
いつかカウントダウンパーティーのあるホテルに私も泊まりたい!
泊まってみたくない?楽しそうじゃない?
子供たちの手が離れたらカウントダウンパーティーやってるホテル探して行ってみようよ~
と、夫に訴えています。
長期戦で頑張ります。
おしまい。
西田敏行さんが、香取慎吾くんと麻生久美子さんと楽しそうに歌っているシーンが好きです。
これからも、きっと何度も、私を含めて大勢の方が作品の中で西田敏行さんとお会いできると思います。
優しい笑顔が大好きです!