見出し画像

道尾秀介『N』 | 読む順番で世界は変わる?

『カラスの親指』で日本推理作家協会賞、『光媒の花』で山本周五郎賞、『月と蟹』で直木賞、その他数々の賞を受賞し、有名な作品も多いミステリー作家•道尾秀介。


何故か月9とコラボして、木村拓哉主演ドラマのために原作『月の恋人』を書き下ろしたことも有名です。っていうか、なんですか、月9とコラボって。どんだけネームバリューあるんですか!


そして、ご存知の通り道尾秀介先生はイケメンでございます。
しかもですね、ちょっとWikipediaを見てみたら、なんと音楽活動までされてました……。


怖!!!
直木賞をはじめ賞取りまくり。
有名作品ありまくり。
月9とのコラボ。
イケメン。
音楽活動。
しかも公式サイト見たらめちゃくちゃ達筆でしたーーー!!!!!!


よし、泣こう。確実に天が二物を与えてる。
すみません、神様、もしかして私の分あげちゃってません?私何もそういうの持ってないんですけど、どういうことですか?


ということで、そんな道尾秀介がまたとんでもなく注目を集めた文庫最新作『N』のあらすじ、いや、概要はこちらです。

全6章。読む順番で、世界が変わる。
あなた自身がつくる720通りの物語。
すべての始まりは何だったのか。
結末はいったいどこにあるのか。
「魔法の鼻を持つ犬」とともに教え子の秘密を探る理科教師。
「死んでくれない?」鳥がしゃべった言葉の謎を解く高校生。
定年を迎えた英語教師だけが知る、少女を殺害した真犯人。
殺した恋人の遺体を消し去ってくれた、正体不明の侵入者。
ターミナルケアを通じて、生まれて初めて奇跡を見た看護師。
殺人事件の真実を掴むべく、ペット探偵を尾行する女性刑事。

公式サイトより



全6章の読む順番は自由で、読む順番で世界が変わるなんて、よくまぁそんなすごいことを考えたものだと思います。小説の根底を揺るがしちゃってるじゃないですか。
しかも1章おきに上下を逆転させた状態で印刷されていて、章と章の連続性が完全に断たれてるんです。初っ端から上下が逆になっていて「そのまま読もうとするなよ、そういう本じゃねーんだぞ」と言われているようでした。


現にですね、私最初は「前から順にそのまま読もうかな」と考えてたんですよ。いろいろ言ってもやっぱり基本が1番いい並び順にしてるのかなと思いません?
でも最初から上下逆になっていたのでその発想は捨てて、1番最初に気になったタイトル「笑わない少女の死」を読みました。
で、次、何読もうかなと考えたんですけど、「笑わない少女の死」が上下逆だったので、そのまま上下逆で読める2本を読んで、通常通りに印刷されている3本を順番に読みました。(めんどくさがりはこれに似た読み方になる気がします)
ちなみに私が読んだ順は以下の通り。


1、笑わない少女の死
2、名のない毒液と花
3、消えない硝子の星
4、落ちない魔球と鳥
5、飛べない雄蜂の嘘
6、眠らない刑事と犬


ちなみに、これ、おすすめの読み方でもなんでもないので悪しからず。
というより、本当にどんな順で読んでも、読後の本の印象自体はあまり変わらないのではないでしょうか。


※一部内容に触れますので、是非「読む順番で世界が変わる」というのを体験してから読んでいただければと思います。


まず、私がこの『N』の「読む順番で世界が変わる」という話を知って興奮したのは、勝手に「読む順番によって小説のストーリーが変わる」と思ったからです。
例えば、登場人物の2人が再会するシーンが描かれた章と、2人が別れるシーンが描かれた章があるとして、読む順番によって、ラストで2人が再会するのか、別れるのか、物語の内容が変わってくる、という感じのものを想像したのです。
自分が偶然選んだ順番によってどんなストーリーが展開されることになるのか、どんな結末を迎えるのか、これから体験できるであろう初の読書体験にどきどきしながら読み進めました。


が。
蓋を開けたら全くそういうことではありませんでした。


それぞれの話は独立してますし、主人公も違います。なんなら時間軸も違います。
どの順番で読もうが登場人物に起こった出来事は変わらず、運命も変えられません。


もちろん、読む順番によって受ける印象は異なるかと思います。
読む順番によって「過去→現在」が「現在→過去」になったり、「原因→結果」が「結果→原因」になったりするので、その章を読んでいる時に受ける悲しみや苦しみ、各登場人物の背景に見えるものはそれぞれ違い、まさに「読む順番で世界が変わる」とも言えます。


ただ、この「世界」はそれを読んだ時に、「読者が見えている世界」が異なるという意味で、読む順番で「登場人物たちが存在する世界」が変わるという意味ではありません。


私はここを理解していなかったので、最後の章を読み終わるまで「……まだ、わからない。もしかしてこの章を読み終わったら、なんか全部が繋がってこの物語の別の側面が見えてくるのかも」「この順番で読んだ人間にしか味わえない物語の繋がりが見えるのかも」と、やけに大きな期待をしたことで、読む順番を変えることによって起きる自身が受ける感情の変化にまで目を向けられませんでした。
「読む順番で、世界が変わる」という煽りを意識しすぎて、逆にもったいない読み方をしてしまったかもしれません。

これは道尾秀介先生のつもりです…



1章ごとに驚きや悲しみ、喜びや謎があり、各章で独立した話としても十分楽しめる『N』。
「読む順番で、世界が変わる」ことは意識しすぎず、気軽な気持ちで6つの話を読むことをオススメします。



おしまい。


それにしても道尾秀介作品、久しぶりに読みました。そして直木賞受賞と書きながら自分が『月と蟹』を読んだのか思い出せず……(多くの本が実家に置きっぱなしです)
文庫化が2013年ってことはまだ子供産む前だし普通だったら読んでるはず。あらすじに見覚えもある。……でも記憶がない。全然覚えてない。
読んでないなんてことないあるのか?直木賞を受賞した作品が記憶に残らないなんてことは?
……ちょっと家の本棚探してみます。


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集