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映画『十ニ人の怒れる男』 | 名作が見たい夜もある


1957年製作の密室劇の金字塔『十ニ人の怒れる男』をprimevideoで見ました。


……なぜ急に。


と自分でも思いますけど、特にこれといった理由はありません。
何か絶対面白い作品を見たいと思った時に、『ゴジラ−1.0』や『月の満ち欠け』にしようかと散々悩んで、何故か『十二人の怒れる男』に辿り着きました。

そしてね、やっぱり、面白いんですよ。
すごいですよね。70年近くも前の作品なのめちゃくちゃ面白い!
この映画の出演者やスタッフの方々に、VFXとかこんなに発展してる2024年でもまだ見られてますよ!!!と全力でお伝えしたい。


ということで、あらすじはこちら↓

父親殺しの罪に問われた少年の裁判で、陪審員が評決に達するまで一室で議論する様子を描く。
法廷に提出された証拠や証言は被告人である少年に圧倒的に不利なものであり、陪審員の大半は少年の有罪を確信していた。全陪審員一致で有罪になると思われたところ、ただ一人、陪審員8番だけが少年の無罪を主張する。彼は他の陪審員たちに、固定観念に囚われずに証拠の疑わしい点を一つ一つ再検証することを要求する。
陪審員8番による疑問の喚起と熱意によって、当初は少年の有罪を信じきっていた陪審員たちの心にも徐々に変化が訪れる。


こちらの映画のオマージュとして製作された三谷幸喜脚本の映画『12人の優しい日本人』が好きなので、いつかもとの『十二人の怒れる男』も見てみたいとは思っていました。

三谷幸喜脚本の方は、最初全員一致で「無罪」なんですよ。被告は若くて美しい女性で、陪審員たちは被告に同情して「無罪」だろうとしているところを、1人の陪審員が「話し合おう」と言うところから始まります。
最初11人が「有罪」と決めつけた『十二人の怒れる男』とは反対の状況、「怒れる男」とは反対の「優しい日本人」というタイトル。
何で粋なリメイクなんだ!と『十二人の怒れる男』を見て更に『12人の優しい日本人』も好きになりました。


さて、初めて見た『十二人の怒れる男』。
原題も『12 ANGRY MEN』、まさに12人の怒った男で、まぁほんとにみんな怒ってます。

そりゃあね、怒りもすると思います。
ただでさえ暑いのに、扇風機も動かないあの小さな部屋に12人もの男たちが缶詰めになって全員一致するまで「有罪」か「無罪」か議論しなければいけないんです。
みんな汗ダラダラでハンカチで顔拭きまくり。脇汗もすごくて、シャツの脇がぐっしょり濡れています。

これ、カラーだったら逆にキツかったんじゃないですか?というくらいのオジサン率、オジサンの脇汗率。白黒だからどうにか見れた可能性大いにありです。

もう少しいい環境で議論しないとちゃんと意見の集約ができないよ、もうちょっと環境整えてやってよ、と同情してしまうくらいの状況。


しかも、裁判で提出された証拠や証言は被告の少年の「有罪」を物語っていて、全員「有罪」と判断するかと思いきや、1人の男が話し合うべきだと言い出した。


この後はナイターを見に行く予定がある、
そもそも陪審員なんて面倒くさい、
早く帰りたい、
そんな中での「無罪」を主張する男が1人。


声を聞いた、殺人の瞬間を見た、逃げるところを見た、という絶対的な証言があるにも関わらず、一体何を話し合う?
となりますよ。
暑いしね。


けれどたった1人無罪を主張した男が1つずつ疑問点をあげていくことで、有罪だと言っていた男たちが少しずつ無罪派になっていきます。


すごいのが、誰かが事件のあらましを説明したり、事件の概要を確認したりしないんです。
例えば誰かが最初に「ちょっと一回事件を振り返ってみましょうよ」なんて言って事件の全貌を話してくれたらこっちはわかりやすいですし、話もスムーズですよね。
でも『十二人の怒れる男』はそんなことはしません。陪審員たちの会話だけでどんな事件があったかを想像させるんです。
回想シーンもない、わかりやすく紙に書くわけでもない、そこにあるのは本当にただの会話だけ。
でも、だからこそ面白い!

ここでもし裁判のシーンが入ったり、事件の映像が入ったりしたらこの事件の真相に確実に近づいてしまうと思うんですけど、この映画はあくまで「陪審員たちの話し合い」を映し出しているだけ。
話し合いの結果、陪審員たちは「無罪」という結論に達しますが、少年が本当に無罪なのかは見ている私たちでは判断できません。

実際、殺人に使われたナイフはどこでも手に入れられるという趣旨の議論が行われたシーンがあるんですけど、少年がたまたま落としたナイフと同じナイフで殺人事件が起こるというのはあまりにも可能性が低いとは思いますし、見ていた映画のあらすじについて全く話せなかったという点でも疑問は残ります。
ただ、それと同じくらい、彼を有罪と判断するための証拠、証言には疑問がありますし、結論として「有罪」と断言できないことによる「無罪」という判断になっているのです。

ここがいいですよね!結局どっちかわからない。12人の陪審員たちは被告の少年のために議論をし尽くしますが、結局少年が殺したかはわからない。
現実でも、どれだけ手を尽くしても真実は本人しかわかりませんし、周りの人間は一つずつ事実を確認することしかできないのだと感じました。


『十二人の怒れる男』の制作費は超低予算、撮影日数はわずか2週間ほどの短期間で製作されたらしいです。
面白い作品って、本当に面白い脚本といい俳優がいればできるんだなと改めて思わせてくれる作品です。

白黒映画になかなか腰があがらない方も、重い重い腰をどうにか上げて、とりあえず吹き替え見てみてください!
気がつくと映画の世界に入り込み、白黒であることはすぐ気にならなくなるかと思います。時間も90分程度なのでとっても見やすいのでオススメです。


どうしても外したくない、
そんな夜には『十二人の怒れる男』も候補の1本にどうぞ。


おしまい。

夫が絵を書いてくれたんですけど、なんとなく数えたら11人しかいなくて「誰かいない!」と2人で焦りました。

これ、1人足りなかったやつ。


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