映画『シャイロックの子供たち』| 悪いことをしたら地獄を見る、という見本
タイトルの「シャイロック」という言葉を「シャーロック」と間違えて、最近まで勝手に「ミステリー系の映画なんだろう」ととんでもない勘違いをしていた池井戸潤原作の映画『シャイロックの子供たち』。
もちろん、舞台はロンドンではなく銀行です。
あらすじはこちら↓
ちなみに「シャイロック」はシェイクスピアの有名な戯曲「ヴェニスの商人」に登場する、ユダヤ人であり強欲な金貸しの名前。
その「子供たち」、つまりお金に強欲な人たちを描いた映画です。
現実でも銀行の横領や着服についてニュースで見ますけど、大量のお金を取り扱ってると麻痺してくるんですかね。
融資やなんだであれだけの札束が日常的に山積みされていたらおかしくなりそうな気もします。生まれてこのかた実際に札束なんて見たことないんですけど、あんな札束触ってたらおもちゃみたいに思えそう。
※この先は内容に触れますので、映画をご覧になってから読んでいただければと思います!
この映画の柱となる、架空会社と架空融資、それに伴う100万円紛失事件は、そもそも佐藤隆太が過去に顧客である橋爪功から大金を受け取ってしまったことが全ての始まりです。
ちょうど家買いたいと思ってて、1,000万受け取っちゃったんだって。
仕事のお礼で1,000万……!!!
ダメに決まってんだろ!!
ばかやろう!!!!!!!!!
みんな自分のお金だけで必死に家買ってるのよ!毎月ローンでカツカツなの!
わかるけどね!家って高すぎるよね!都心の新築マンション平均価格が1億円超えたとかニュースで見たけど、どういうことなの?みんなどこで働いてるの?みんな仕事何してるの?みんなお金持ちなの?我が家も夫婦2馬力で必死に働いてるのに子供の歯科矯正とか塾代とかにお金かかりすぎて私のボーナスなんてまるで最初からなかったみたいになってるし、そりゃあお金もらえるならほしいですよ!1,000万くれるって言われたら揺らいじゃうよ!
でも、でも、そういうの1回でもやったら終わりなんだよーーーー!!!!!
というのを体現しているのが佐藤隆太です。
【一度でも悪いことをしたらこうなる、という見本(佐藤隆太編)】
•橋爪功に仕事のお礼にと大金を握らされる
•その弱みに漬け込まれる形で10億円もの架空の融資を頼まれる
•絶対大丈夫だからと言われ、融資する
•数ヶ月後には橋爪功からお金を用意できないから100万円の利払いを立て替えてくれと軽く言われる
•焦って会社のお金(100万)を盗む
•融資した橋爪功の会社がもぬけの殻であることが発覚
•会社で責められる
•会社の人間(阿部サダヲたち)に全て勘付かれる
•逮捕
見事に転がり落ちましたーーーーー!
控えめに言って地獄……!!!!!
何が辛いって、途中まで表向きいい感じに進むんですよ。だって10億の融資を成功させてるんですからね。表彰もされちゃってました。家族仲もとっても良好で、一見平和そのもの。
でも、佐藤隆太はずっとずっと怖かったと思います。日常の裏でジワジワと追い詰められていく恐怖がひたひたと迫ってくるようでした。
途中で奥さんが2人目妊娠したとか、長男が学校でお父さんの仕事について発表する!とか言い出して、その裏でお金盗んだり、不正が発覚していったりで、もう感情の高低差が地獄。
最終的に2年刑務所入ってますからね!
出てきた時、下の子生まれてましたよ。
奥さんめちゃくちゃ大変だったと思いますよ。だって佐藤隆太が急に捕まって、自分は妊娠してて思い通り働けなかったろうし、そしたらお金もないし、夫が逮捕されて取材とかも来ちゃったかもしれないし、そしたら金銭面も含めてだけどあそこに住み続けるのは難しかったろうし、そしたら夫もいないのに1人で引越ししたってことだし、もう私だったら絶望で佐藤隆太を恨んで藁人形に釘刺してるとこですよ。
でもこの奥さん、佐藤隆太の出所日にちゃんと子供連れて笑顔で迎えに来たんです。長男も元気にお父さんに駆け寄ってて、ああ、佐藤隆太が刑務所にいた2年間、この奥さんは子供たちの前で絶対に佐藤隆太の悪口を言わなかったんだろうなと思ってぐっときました。奥さん、心が広い!!!
佐藤隆太は奥さんと家族のおかげでここで踏みとどまれたからいいですよ。
普通だったら、上の【一度でも悪いことをしたらこうなる、という見本(佐藤隆太編)】の最後に書いた「逮捕」の後、
•妻との離婚
•子供たちからの軽蔑
•もちろん面会誰も来てくれない
•出所後も1人
•仕事も見つからず、元の家族には軽蔑されたまま子供たちに会うこともできず、ただただ毎日を生きるだけ
という不幸のスペシャルのコンボに繋がるとこでしたからね。
奥さんがいい人で本当によかったです。
隆太、奥さんに心から感謝して、今後は家族を幸せにすることだけを考えて生きていくんだぞ。
今日から赤ちゃんの夜泣きの担当はお前がやれ。離乳食もお前がつくれ。部屋を綺麗にして、料理も勉強しろ。
なんでもいいからちゃんと仕事も見つけよう。もう銀行には勤められないし、前科があるから大手に勤めるのは難しいかもしれないけど、選ばなければ仕事はある。そこで腐らずにちゃんと仕事をするんだ。どんな仕事でもその仕事に誇りを持て。
そしてもう2度と悪いことはするんじゃないぞ。
と、安い居酒屋で酒を飲みながら佐藤隆太に語りたい。
でもまぁ1番驚いたのは、柳葉敏郎が裏で橋爪功と繋がっていたことではなく、何年前かもわからない佐々木蔵之介が落とした帯封を持ってたことです。
もしかしたら何かの時に脅しに使えるかもって、ずーーーーーっと持ってたってことでしょ?
なんたる執念……
その執念を別のとこに使いなさいよ!
っていうか、競馬で金擦りすぎて離婚したのにまだ競馬やってんの?!
……ダメだわ、ギバちゃんはもう一生変わらないわ。刑務所から出てきてもまた競馬行きそうな気がする。
ということで、ラストの上戸彩のナレーションだけいらなかった気もしますが、楽しく見れました!
悪いことをしたくなってる方、一度やったら終わりですよ!不幸のスペシャルコンボが待ってます!
悪いことをする前に、一度『シャイロックの子供たち』をご覧になることをオススメします。
おしまい。
「やられたら倍返し!」というセリフが出てきて単純にテンション上がりました。
阿部サダヲの顔をした半沢直樹おりましたーーーー!!!!