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映画『ブルーピリオド』|全てを賭ける姿が眩しくて、憧れて、羨ましい。
「情熱は、武器だ。」
というキャッチコピーがよく似合う青春映画『ブルーピリオド』をprime videoで見ました。
公開、2024年の8月ですよ?
まだ半年くらいですよね。公開時に『ブルーピリオド』見たいなぁと思ってたんですけど、こんなに早く見れるとは思いませんでした。
↑どうでもいいですけど、この記事で『ブルーピリオド』見たいって言ってます。
最近の配信はすごいですね。
本当にありがたい!!!!
ということで映画『ブルーピリオド』のあらすじはこちら。
ソツなく器用に生きてきた高校生・矢口八虎(眞栄田郷敦)は、苦手な美術の授業の課題「私の好きな風景」に困っていた。悩んだ末に、一番好きな「明け方の青い渋谷」を描いてみた。その時、絵を通じて初めて本当の自分をさらけ出せたような気がした八虎は、美術に興味を持ちはじめ、どんどんのめりこんでいく。そして、国内最難関の美術大学への受験を決意するのだが…。
※この先はストーリーに触れますので、ご覧になっていない方は是非見てから戻ってきてください!
これまで美術部でも何でもなかった普通の男子高校生が、あの天下の東京藝術大学(しかも1番倍率が高いという油絵科)を目指すストーリー。
で、言っちゃうと、一発合格です。
原作未読ですが、漫画を読んでいて内容を知っていた夫が以前何かの時にあらすじを話していたので一発合格することは知っていました。
漫画は東京藝大の学生として美術を学んでいく姿も描いているということで、漫画的には東京藝大合格がゴールじゃないんですね。
それにしても東京藝大に一発合格……
天才じゃん!!!!!
と思って見ていたら、主人公の彼は一応「才能がない」設定でした。
東京藝術大学と言えば、3浪、4浪は当たり前、10浪して目指す人もいるという、国内最難関の美術大学です。
例えば東大がすごいのはわかります。自分がしていた受験勉強の延長線上にあって、東大に関係ない多くの人も「自分と比べてとんでもなく頭いい人が合格する大学」とみんなが理解できていると思います。
でも、藝大はわからない……。
勉強じゃない、「芸術」で合格が決まる領域。きっと多くの人にとって「未知の領域」。
以前、茂木健一郎さんの『東京藝大物語』という本を読んだんですけど(面白いので未読の方は是非!)、登場する生徒の方がほんと個性的すぎて、藝大に合格できるような人はこういうぶっ飛んでる人なんだ……という印象が私の中に刻みつけられました。
その藝大に、高2から絵の勉強を始めて一発合格。
しかもですね、初めて描いた絵から才能あるわけじゃないんですよ。最初はこちらが拍子けするくらいごくごく普通の絵(美術の授業の課題)を描いてきて、勝手に主人公は天才なんだと決めつけていた私は逆にビビりました。
……ここから!ここから東京藝大を目指すのね!!!そしてここから一発合格なのね!!!
先ほど、東京藝大は「未知の領域」であるとお伝えしましたが、私の姉の幼馴染が東京藝大卒でございます。
私も何度か院展とか見に行かせてもらったことあるんですけど、それはもう独特の絵を描かれています。私は芸術に何の造詣もないんですけど、一発で「これ〇〇ちゃんの絵だな」とわかりますし、姉曰く、中学生の頃からめちゃくちゃ絵がうまくて、美術の写生で1人違うもの(目に見えないもの)を描いていたそうです。
そんな彼女でも2浪した東京藝大を矢口は一発。しかも「あそこ」(美術の課題の絵)から一発!!!嘘だろ!!!
やっぱり矢口は天才だよな、と思いながら見ていると、美術予備校で矢口は真の「天才」に出会いました。
石膏像のデッサンのクオリティが段違いの高橋(板垣李光人)です。
講師「(めちゃくちゃ褒めた後で)石膏像、これまで何枚描いた?」
高橋「初めてです」
衝撃で固まる矢口。
……踏ん張れーーーー!!!!
ああいう奴もおるんやーーーー!!!!!!
と思わず矢口に向かって叫びました。
すまん、矢口。
こっちが正真正銘の「天才」だったわ。
お前はとにかくやるしかない。
その後も、課題に対する理解が浅い等の指摘も受け、矢口は苦悩と挫折を繰り返します。
自分は天才ではない。「やった分しかうまくならない」と理解しているからこその努力と情熱。
頭もよかったので普通に勉強で受験する道もあったのにそれを捨て、絵に全てを賭ける姿は胸を打ちます。
全てを賭けるって、本当はめちゃくちゃ怖いことだと思うんです。
全てを賭けてやっても成功できる保証はない。むしろ成功しない可能性の方が高い。それでも、他の道を全て捨てて、自分の心に従って、それに全てを賭けることができる人を見ると強烈に憧れます。
私はできなかった。何度も何度も、全てを賭けることを諦めた。(という話は映画『BLUE GIANT』の記事で描いてます)
全てを賭ける勇気。
それだけに全力を傾けられる強さ。
その他を捨てる不安に負けない精神。
何より、自分の道は「これだ」と信じられること。
それを見せられると、あまりに眩しくて泣いてしまう。
他の全ての可能性を捨てられるほど、何かに人生を賭けられる人が眩しい。
矢口が眩しい。
藝大に合格できなかった時のことや、その先のことは考えない。考える余地をなくすように絵だけに集中しようとしていたその姿が眩しくて、羨ましくて、胸が痛い。
きっとほとんどの人がそういう風には生きられないから、矢口が眩しくて羨ましくて、どうにか合格してほしいと祈りたくなる。
私から見たら矢口は十分天才でしたけど、矢口は自分には「才能がない」と思っていて、でも矢口が天才だと圧倒された高橋も、矢口が自分たち側に近づいていると感じているようでした。
何もしないで「天才」でいられる人はいない。
もともとの才能があるとしても血の滲むような努力を続ける人が「天才」でいられるし、他を全て捨てて人生を賭けられる人が「天才」になれる可能性があるのかもしれません。
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東京藝大に合格した矢口は、これからもたくさんの、とんでもない「天才」たちに出会うことになると思います。
絶対絶対負けるなよ。
自分は天才じゃないと思っている「天才」の矢口へ、声をかけてやりたくなるラストでした。
おしまい。
ちなみに、劇中でも、藝大行ってもその後どうするの?(芸術家になって食べていける人なんていない)的な話がありまたし、藝大は合格した瞬間がピーク、なんていう話も聞いたことありますけど、藝大を目指す方にお伝えしたい。
姉の幼馴染の藝大卒の方はめちゃくちゃ稼いでます!!!
稼げないなんて決めつけることはないぞ!