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別れの季節とケサランパサラン(1)

2の3の子達との一年は、当時まだまだ担任経験の少ない僕が、

子ども達とどたばたと楽しく過ごした記憶として、

自分には残っているのだと、改めて振り返って感じた。

子ども達にはどうだろう。やはり楽しかった思い出だけではないと思う。

叱るときの声は人一倍大きいし、かけ算ルーレットも大変だったろう。

ととろん先生が言うほど楽しかった思い出は残ってないよ。

そんな風に言われるかもしれない。

思い出す記憶が遠ければ遠いほど思い出は美化されているのかもしれない。

いくつものエピソードを綴って、ふと、そんな思いに駆られ、

2の3の子達との思い出はそろそろ一旦幕引きをしようか、

そう思っていた時に、僕が病む直前に受け持っていた、

当時5の2の子から連絡が来た。

「先生、ケサランパサランのご飯、教えてください。」

ケサランパサランの話。この話は受け持った子ども達に話してあげる、

『ととろん先生の本当にあった怖い話』の中で、

唯一怖くない、ちょっと不思議なお話。

この話を最初にしてあげた子ども達は、2の3の子達だった。

宝物をいっぱい集めてくる、素直で感情豊かな2の3の子どもたちとの、

終わりも近い、春の気配が近づいてきた3月の初めに、

この話をしたことと、話を聞いた子ども達が、

また元気に外に飛び出していったことを思い出し、

2の3の最後の話には、ケサランパサランの話を、

綴り語りして、まとめてみようと思う。

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「じゃあ、これが先生がみんなに話してあげる、

  最後の『ととろん先生の本当にあった怖い話』ね。」

やったぁ!と喜んでイスをもって前に来る子どもたち。

Mくん、Oくん、Rくんは素早くカーテンを閉めて電気を消す。

怖がりのTさんが、もう泣きそうだったので、

「今日の怖い話は、実は怖くは・・・・ないのよ。

 ただ、とっても不思議で、先生にとっては大事なお話でね。

 もしこのお話が無かったら先生は今ここにいなかったかもしれない。

 そんなお話なんだけど、聞いてくれるかな。」

そう言葉をかけると、子ども達は、うんうん、と首を縦に振って、

楽しみな気持ちを笑顔で伝えてくれた。

「じゃあ、始めるね、今回のお話は、

先生が5歳の時に亡くなったひいおばあちゃんが、

先生が生まれるよりもずっと前に体験した、

ある、不思議な妖怪との話です・・・・。

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