桜の雨で卒業を(13・了)
・・・・ここに一枚の写真がある。【桜の雨で卒業を】その結末の光景だ。
と、大好きなドラマ「ラジエーションハウス」のように、
その時の写真を紹介してしまったが、これは、6の1のその時の様子を、
おうちの人が後ろからとってくださった、僕にとって宝物の一枚だ。
卒業証書を、改めて教室で渡して、子ども達とおうちの人に、
最後の挨拶を話し始める。
「この一年が、おうちの人にとっても、子ども達にとっても、大事な節目の一年だったと思います。皆さんのお子様たちは、このように元気に、立派に卒業式までやり切りました。一年間、ご心配を多々おかけしましたことをお詫びしますとともに、それでも信頼して頂いて、子ども達を元気に、毎日学校へ送り出してくださったことに、そして、ご理解ご支援いただいたことに感謝申し上げます。そして6の1のみんなには、改めてよく頑張りましたという言葉と、ありがとうという感謝を伝えたいです。最後まで、みんなン成長を、このくらいだろうと決めていたのは、先生の方でした。こんなに素敵なサプライズまで含めて、本当に計画から準備、周りへの声かけなどまで、見事な差配で素晴らしかったです。ここにある色紙や花束、カウントダウンノート以上に、ここまでの取り組みに嬉しく思います。」
そんな話を続けていると、この子達との日々がぶわっと思い返されて、
込み上げてくるものがあった。少し泣きそうになりながらも話していると、
視界に6の1の子達の様子が入ってきた。
みんな、もらった卒業証書を、証書ホルダーに入れるのに必死だった。
こちらの話も右から左な感じで、
「これどうやって入れるん?」
「なんか横から入りそうだよ。」
と、小さい会話が聞こえてくる。込み上げたものも引っ込んでしまった。
おかげで余計な緊張もすっかり消え去ったので、
「・・・・と、あいさつはここまでにして、最後は、6の1らしく、明るく教室を締めたいと思います。」
と、インストゥルメントのオトノナルホウヘ→を再生した。
♪遠く 離れた 場所にいる時も
僕らの声が届きますように
迷ったときは オトノナルホウヘ→♪
軽快なテンポの歌に合わせて、子ども達がポケットの中で握っていた
桜の花びらの紙吹雪を天井にめがけて放り投げる。
一面桜の花びらで教室の空間が埋め尽くされた。
自分たちで撒いた桜吹雪なのに、あまりのきれいさに一瞬手が止まる。
僕も自分で作っていた桜吹雪を、トトロの種まきのように舞い散らかした。
みんな明るく、元気に、最後まで楽しみ尽くす。
この子たちの良さを全開に詰め込んだ【桜の雨で卒業を】計画は、
桜満開の教室から、無事に、全員を送り出すことができたのだった。
子ども達を送り出した後、空っぽの教室で、桜吹雪を片付ける。
床が、ピンクに埋め尽くされた中で、
6の1の子達を最後まで受け持つことができて本当に良かった。
しみじみとそう感じながら、みんなが作った花弁を掬い取る。
この気持ちを感じられることが、一番の報酬だなと感じた。
後日頂いた写真は、最初に紹介した1枚。
桜と同じくらい眩しい笑顔でいっぱいの卒業だったことを、
改めて実感できて、幸せな思いをもう一度頂けたことにも感謝しかない。
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