不登校先生 (24)
よく眠れた心地よさ、眠っている間の汗の気持ち悪さ。
お風呂に入ろうという気持ち。お風呂が気持ちいいという感覚。
お腹が減った音、何か食べようと思う食欲。
考えなくても勝手に湧いてきた生きるために必要な、
心のデフォルトさえ、砕け散っていたことに改めて気づかされた。
睡眠を促す薬によって、2番目にひどい状態から、
はいつくばってもう一段。
心の再構築にたどり着けた気がした。
「薬の効き目、すごすぎだろう。」
食事をとって、久しぶりに目につくことをやっておきたい。
そう思った。夕方から夜になりかけの時間だったが、
たまっていた洗濯物(と言っても下着ばっかりだが)をまとめて洗い、
ぽろぽろとあちこちに散乱している自分の皮膚の角質をや体毛、ほこりを
窓を全開にして、掃除機をかけて全部掃除をする。
今食べたばかりの食器もすぐに洗って、冷蔵庫も片づける。
空けただけでとっ散らかっている袋のままの食材は、
ジップの袋や箱に入れて。
一つずつ、片付いていく。
目に見えるところが、整っていくだけで、
どうして心も元気になってくるのだろう。
そんなことを思いながら、暗くなってきた外はあまり見ないようにして、
赤い空にはまだ抵抗があるから。
カーテンを閉めて窓を閉めて。
入れ替わって少しひんやりした空気の中で、
ドスンと、座り込んだ。
・・・・・・・・・・・・・・
自分の意思で、まだ生きようとするために。
じっと考えて動いて積み上げた一つずつの過程は
着実に、確実に、適切に。
自分の心と命を守るためにできていた事なんだ。
そう思えると、安心感がほっと羽織のように肩にかかったようで。
・・・・・・・・・・・・・・・・
大丈夫、大丈夫。
何度も自分に繰り返しながら、言い聞かせるように。
洗濯機の音だけが聞こえる部屋の中で、
大丈夫、大丈夫、
この調子でちょっとずつ。
安心していいんだよと自分で肩を叩いているように
心の中でたしかに、自分自身と会話ができていることを
実感した。
もう何年も見失っていたかのような長い長い2週間ほどの時間、
再会できた自分の中の自分に嬉しさを感じながら。
独り言をぽつぽつというように、
自分自身と話していく。安心したよ、繋いでくれてありがとう。
部屋で一人でぽつぽつ出てくる言葉は、
心の中で二人で会話をしている内容で。
ありがとう、よかったよ。お互いに沁みこませるように。
小さく灯っていた灯りが照らしている心の中にも、
灯りの温かさを感じられるようになった。
明日の朝は、布団を干そう。
↓次話
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