真っ正面から向き合う覚悟はできているか~『やれる限りやる』自分自身が鍛えられた、5の3の子達との綴り語り~(2)
「じゃあ、おれは戻るから、ととろん先生は挨拶に行った後は直帰よね。」
「はい、M先生、ありがとうございました。」
軽トラを出してくれた公務員の先生にお礼を言って、見送った後、
教頭先生から教えてもらった鍵の閉め方で、外側の扉の鍵をかけ、
荷物を運びこんだ部屋の施錠もしてから、
ぼくはカギを返しに行くのと、ご挨拶をしに、職員室へ向かった。
「失礼します。教頭先生、鍵ありがとございました。」
「お、運び終わったかい?お疲れさま。」
そう言うと教頭先生そのまま校長室をノックして、
「移動してこられる講師の先生が来られました。」
と校長室に声をかける。「どうぞ入ってください。」
そう言われて校長室に入ると、校長先生は荷づくりをされている途中だったようで、
「散らかっているのでこちらにどうぞ」
と、手前のソファに案内してくれた。それにしても校長室が暗い。
昼過ぎで晴れている上に、室内の電気もついているのだが、
廊下側のカーテンも暗幕のように閉められていて、ブラインドも全部降りている。
「移動されてこられる・・・・ととろん先生ですね。初めまして、校長です。と言っても、僕も見ての通り、3月で異動になりますので、ととろん先生が来られた時には新しい校長が来ていると思います。どうぞよろしくお願いします。」
と、丁寧に挨拶して頂いたので、こちらも「よろしくお願いします。」
とお辞儀をする。校長先生は先に話を続けた。
「えっと、事前にととろん先生に来てもらったのはですね、来月からの受け持ちのことなんです。」
「はい、先日お電話いただいたときにも、伺っているので、自分はそこに行くだけかなと思っていますので大丈夫です。」
「そうですか・・・、そう言ってもらえると助かります。実は、今度受け持ってもらう新5年生は、4年生の時にだいぶ荒れてしまいまして、今年は先生と、もう一人、異動されてこられるベテランの生徒指導に長けた先生と、うちの学校で一度子供たちを受け持ったことのあるバリバリの先生の3人で、子ども達のことを導いてもらえたらと思っています。」
と、校長先生はとても疲れた声で、何度も頭を下げながら、
受け持つこどもたちのことについて、
一緒に組まれる先生たちについて、説明してくれたのだった。
この一年は大変だったのだろうな・・・と、その話しぶりと雰囲気から、
察することが出来たので、「それは僕では力不足かもしれません。」
などと始まる前から言うことなどはできようもない。
だが、その前の3年間で、毎年のように、「早速だけれど来年は・・・」
と、校長先生に声をかけられ続けていた為、そういう打診にも耐性がついていたのであろう僕は、
「わかりました。どんな子達と出会えるか楽しみにしておきます。」
と、笑顔で言葉を返すのだった。