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席は離れても、心は一つに(3)

「・・・・では、どうぞよろしくお願いします。」

卒業式の練習が始まる前々日。職員会議で式の担当割りや、

当日までの体育館割りなどが周知された後、交流学級の先生たちと、

管理職の先生たちに、改めて、子ども達とのことについて確認をした。

①集団の端の席に座らせてほしい。

②練習中、どうしても無理な時には、途中退席をすることがある。

③途中退席した場合はセリフは自分が代わりに言う。

この3点について、練習から関わる先生方に了承をもらっておく。

仲良しさんクラスの子ども達の、不安を聞いたうえで、

卒業式本番に向けてやれる限り頑張る子ども達を支えるための、

大事な下支えだ。ここでまず先生たちに確認しておけば、

途中退席するときに周りの子達の視線にさらされる圧も小さくなるし、

無理な時は、学級に戻っていいという安心カードを持っておくだけで、

子ども達の頑張りが発揮されるようになるからだ。

逃げ場がないと言う事で、発揮する火事場の馬鹿力のような実力は、

本来無理なく引き出せる100%以上のものを表に出す代わりに、

それと同じくらいの大きな負荷をかけられている事と同じである。

この子達が卒業式を乗り越えるにあたり、この子達に経験させたいことは、

自分自身を追い込んで無理をして実力以上のものを出した結果の、

やり切ることができたという自信ではない。

自分たちにとって儀式的行事も、ストレスが小さい状態で、

自分本来の実力で乗り越えることができた。そう感じてもらうことだ。

だからこそ、僕はこの一年のこの子達の成長から確信を持っていた

【この子達は今年は、本番でも大丈夫】という見立てを大事にして、

練習では、過度にこの子達にストレスを感じさせないような配慮が、

最優先に準備して整えておかねばならない事だと考えたのだった。

そして子ども達の席は、要望通りに

身長の高い、はやくん、あまくん、そうくんは交流学級の最後列に。

中背のかいくん、かずくん、まなさんは最右列左列の席に、

小柄なあんちゃんは、最前列の角の席になることができた。

「みんな、もし練習中、緊張やイライラで無理だというときには、静かに手をあげて。ととろん先生だけじゃなくて会場にいる先生みんなに、教室に戻れることは確認しているから、誰か先生がそばに来たら『戻ります』と言って、戻っていいからね。」

そう伝えると、子ども達は嬉しそうに「よかった。」と口にした。

こうして、子ども達には「なんでこんな練習を何日もしなきゃいけないの」

第一位であろう卒業式の練習は、始まったのだった。

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