たしかにその通りだ(前)
【クラス全員で鬼祭り】の6の1の子ども達の、
担任になったのは9月の半ば、6年生には行事が目白押しの季節である。
まず目の前の行事は、担任4日目に土曜日授業での授業参観だった。
学年の先生が急遽の対応をして下さり、参観を学年ですることになり、
4日目で何の準備もできない、という状況を助けてくれた。
働いている学校の自治体では、今では無くなってしまったが、
各学校の6年生が、1か月陸上競技の練習に取り組み、
学校ごとに選抜されたメンバーが、それぞれの区の陸上競技場で、
数種類の競技について記録会をするという行事があった。
その際は選手だけでなく全員が集まり、
選手以外の6年生ははスタンドで応援しながらの、
学校対抗のような雰囲気にもなるイベントだった。
その練習を、授業参観で観てもらおうということで、
土曜日は1時間目は通常授業、早めに着替えて二時間目が授業参観、
そんなスケジュールになっていた。
そんな土曜日の朝、なるべく長引いたりしないように通常の授業も、
コンパクトに進めようかなと思って職員室で、
今日の二時間目の段取りなどを確認していると、
「ととろん先生、いますか!」
職員室に、クラスのSさんと、Mさんが、慌てた様子で訪ねてきた。
「おはよう、どうした?」
「うん、えとね、O君が大変なことになった!」
「帰るって言って、どっかいなくなったんよ。」
まじかぁ・・・朝から事件発生だなと、思いながら、
ひとまず靴箱に行って外履きがあるかの確認をしよう。
そう思い立って職員室から出ると、大きな泣き叫び声が聞こえてきた。
「こんなん・・・・・いじめ・・・・ぃやろが!おれは・・・ぇる!」
O君の声だ。声のしてみるほうに行くと、
「なんか!俺はもう帰るからほっとけ!」
細部錯乱しているように嚙みついてきたので、
「今、あんたを心配してきただけで、あんたを悲しい気持ちにさせたのは先生じゃないやろ?!そんなにいきなり文句言わんで、話聞かせてや。」
「うるせぇ!もう俺なんかいなくていいやろが!」
「いや、せっかく土曜なのにO君が来てくれたのに、いないほうがいいなんて思ってないよ。ねぇ。」
と一緒に連れ立っていた、Sさん、Mさん、そしてO君を心配して
追っかけてきてくれたT君の方に目をやると、優しく声をかけてくれる。
「そうだよ、O君一緒に練習見てもらおうよ。」
「どうせ俺のことなんか、母さん見に来んし。」
「せっかく来たんだから、一緒にしようよ。」
「どうせ俺なんかいないほうがいい。」
だが、こんな感じで、だいぶ頑なに落ち込んでいた。
「何があったん?話聞かせてよ。」
と、僕から問いかけると、興奮しながらも事情を話し出してくれた。