お泊りミッションを成功させろ(5)
就寝前の班長会議には、あんちゃんが参加した。
会議というより連絡事項の確認のようで、明日の朝の段取りの確認や、
夜の部屋での過ごし方などについての申し送りが行われた。
一緒についていった僕と部屋に戻ると、みんな寝たふりをして待っていた。
「もぉ、だまされんからな、俺は。」
布団の中からは、くすくすと笑い声が聞こえてくる。
「ねたふりすんなって!」
あんちゃんはそう言いながらも、にこにこしながら、
「みんな起きて、班長会議で連絡があったことを伝えるから。まなさんもそのままここで聞いて。」
夜寝るときの注意や、夜中に何かあった時の先生の待機場所、
明日の朝ご飯までに部屋でしておくことなど、
メモに取ったことを伝えるあんちゃんは頼もしい。
無事に一仕事終えて、その日の夜も無事に過ぎていった。
朝になり、おそらく起床の時間もばらばらな子ども達だが、
しっかりとみんな、起床の時間にはおきられた様子。
子ども達からは、就寝後も、あっという間に眠ることができた。
ホテルの布団が気持ちよかったからぐっすり眠れた。
家にいる時より長い時間眠ることができた。
と、言う感想が聞こえてくる。
今回の旅行で一番心配していた宿泊経験を、
子ども達は無事に獲得できた様子がうかがえた。
ホテルを出ると、今日は遊園地での自由行動がメインになる。
学習的素養の強い一日目と違い、子ども達は3時間程度の時間を、
友達同士で話し合いながら、園内を巡る。
うちのクラスは6人で1班なので、みんな一緒に行動だ。
「ぼく、ジェットコースター系は怖くて無理なんよ。」
「僕も。じゃあジェットコースターは避けていこう。」
と、初めのうちはお互いに絶叫系は乗らずに行こうねと話していたが、
やはり遊園地の魅力と安心できる友達同士の解放感からだろうか、
気が付くと子どもたち、ジェットコースターにもウォータースライダーにも
キャーキャー言いながら、何度も乗って楽しんでいた。
今まで一人の時は、怖いが勝ってやれなかったことも、
友達と一緒なら楽しい。修学旅行は、自分自身の新しい発見にも出会える、
それを友達と一緒に共有できる良さに溢れている。
帰りのバスの中でも、心の中の興奮が炭火の様に熱を失わないままで、
仲良しさんクラスの子ども達の、大きな試練になっていた修学旅行は、
大きな自信を獲得することができて、旅を終えることができたのだった。
一年前に失った自信を、今回取り戻せたと確信の持てる旅行で、
ほっと一安心だった。
同時に、この成功を見通して、やれる限りの準備をしていただけに、
そうくんが欠席したことだけが、悔恨の想いとして胸に残っていた。