牛乳パックほったらかし事件(2)
「いや、まずそこはみんなそうだという理解でいいよね。」
「当たり前やろー。」
「この牛乳パックを、他のクラス、他の学年の人が、昼休みの間に、うちのクラスに置いて行ったということはない。というわけよね。」
「そんなことするやつおらんやろ。なんでわざわざ。」
「そんなのが入ってきたら、誰か気付くでしょ。」
「いやいや、とは言うてもよ。ほとんど教室にはおらんかったやろ。誰か見た人がいる可能性もあるよ。もし、この中に目撃したという人がいたら、今教えて。」
「いや、おらんよ、さすがに。ねぇ。」
みんなきょろきょろと左右を向いて確認するが、誰もいないようだ。
「と、なると。この牛乳パックの犯人は、6の1の中にいる。だけど、もう自分じゃない、あいつでもない、じゃあどいつだと、犯人探しをしても出てこないと思うのよね。」
「だけさ、ととろん先生がどんどん怒りモードになるのは嫌なんよ。これ一番先生が叱るやつやん。だって3回目だよ。」
そこである。僕は、子ども達には自分が叱るときの順序・段階について、
初めの頃にきちんと線引きを示していて、それがぶれない。
一度の失敗は誰にでもあるから、その時にはすぐに自分であると伝えて。
伝えてくれたら、次は気を付けてね、の注意で済ますから。
二度目に同じ失敗をしたときは、ちょっと叱る気持ちを上げるよ。
なぜなら、一度目の注意も忘れて同じ失敗をしているから。
注意されたことを忘れたことも含めてちょっと怒り声で叱るからね。
一番よくないのは、やったことを黙っていたりうそをついた場合。
その時は、しでかしてしまったこと以上に、
隠したこと、嘘をついたことに怒気を込めて叱るから、
そうならないように、自分がやらかしてしまった時には、
名乗り出てね。というものだ。
そしてここでの失敗とは、授業中に間違えたとかそういう事ではなく、
休み時間に、学校のルールを守っていない遊び方をして、
周りで遊んでいる子達に迷惑をかけてしまったとか、
自分の委員会の仕事などほすっぽかして遊びに行ったとか、
そういったことだ。
子ども達はそのことを、この3か月ほどで十分にわかっているので、
「はよ、出てくればいいのに。」
と、あちこちから、そんなつぶやきも聞こえてくる。
「うん、自分でさっと出てきてくれて、片づけてくれれば、それでいいのだけれどね。今さらこんなに全体の問題になる事件にまでなって、内容と言ったら一年生が叱られるような内容なわけよ。まぁ、この36人の中の一人は、間違いなくこの牛乳パックに心当たりがあるのだけれど、もう出てこれない。恥ずかしいから。」
「でもそんなん言ってる間に時間は過ぎるやん。授業の時間もつぶれるさ、いい加減にしてほしいという気持ちになるやん。」
たしかに言われてみれば、5時間目はもう10分程すぎてしまっていた。
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