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たしかにその通りだ(後)
職員駐車場の車の後ろに入り込み、涙ながらにO君は気持ちを訴える。
「せっかくさ、学校にも来れるようになって。少し楽しいかもと思ってもさ。俺なんか前不登校だったのに、今やっと、学校に来れるようになったのにさ。誰も俺の気持ちなんかわかってくれん。」
「いや、そうよな、土曜日まで自分で学校に来るようになって、立派よ。」
「誰もそんな風に思っとらんし。俺なんかまたいじめられてこなくなっても誰も何とも思わんのだ。」
「そんな気持ちにO君がさせられたなら、これはもう完全にいじめよ。先生はいじめは絶対に許さんってO君を含めたみんなと約束してるから、絶対解決するけん、何があったか話してよ。まず何があったか、わからんとさ。」
それでも興奮が収まらないO君、気持ちを最後まで出させようと思った。
「俺がこんな気持ちになるならさ、いじめ防止サミットなんてやっても意味ないやん!」
・・・・『いじめ防止サミット』とは、
働いていた自治体で行われていた夏休みにの行事で、
全小中学校の児童会や生徒会の子達をあつめたシンポジウム的なもので、
各学校の代表が考えてきた内容を出し合って、話し合いをして、
町の子ども達みんなで、いじめ防止の意識を持とうというものである。
O君の事件が起こっている今よりも2日前、
この学校の代表で出席した子が、給食時間に、
「いじめ防止サミットで話し合い、みんなの名札にシールを張って取り組んでいく事と、あいさつ運動や、お互いのいいところを褒め合う活動をしようと言う事で、みんなの気持ちが明るくなるように取り組み、いじめがないような学校にしていこうと決まりました。うちの学校では、あいさつ運動を、1・6年生、2・4年生、3・5年生のグループに分けて、月曜日と水曜日、順番で行っていく事にしようと思います。」
という内容で、全校児童に伝えたばかりだった。
そんな「いじめ防止サミット」のワードが、
O君の記憶にも残っていたのだろう。
まさかのワードが飛び出してきて、思わず吹き出しそうになった僕を、
横で見ていたSさんとMさんも、つられて吹き出しそうになる。
笑うのをこらえて、真剣な表情を必死に作って、一言返すのが精いっぱい。
「お、おう・・・・たしかにその通りだ。」
O君が、帰りたくなるほどに嫌だった原因は、
朝休みにからかわれたことだった。
いつも、少しのからかいは、朗らかに笑って、明るく言い返すO君なので、
この時のからかっていた方の二人は、度を越してしまい、
O君も、なんでそんなに自分だけからかわれなきゃいけないのかと、
悲しい気持ちになったと言う事だった
O君を保健室まで連れて行き、気持ちが落ち着くまでいていいよと、
保健室にお願いした後、1時間目は事実確認と、すり合わせを行い、
O君をからかった二人に、ドカンと雷を落として、
二人に保健室まで下りていきO君に謝り、仲直りしてこい!と叱り、
ようやく解決した時には、一時間目の収量のチャイム。
せっかく、同学年の先生の助けで余裕を持って迎えるはずの授業参観は
開始ギリギリまで、ど説教で、結局ドタバタしてしまったのだった。