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不登校先生 (57)

何度何度もひきこもり先生を視聴して、枯れるほど涙を流して、

数日が立った。今、同じように心を病んでいるケンちゃんにも教えよう。

現場に戻れない状態ののりちゃん先生にも教えよう。

先生であることを、人生の中で選択した人たちの中には、きっと、

この、ひきこもり先生で、元気をもらえる人は多いと思った。

何より自分自身がそうだった。

そして、もう一つ、気付かされたこと。

それは、母親の存在だった。

ひきこもり先生は、離婚してひきこもりになってから、

彼のお母さんと一緒に暮らしている。

お母さんは毎朝笑顔で、穏やかに、「陽平、おはよー。」と声をかける。

きっと毎日、毎日11年。上嶋さんの心をそっと見守るように、

声をかけ続けたのだろうと思った。

上嶋さんが、学校に非常勤講師として通うことになった時には、

必死の思いを表に出さないようにしていってらっしゃいと送り出し、

上嶋さんが、自分自身を再び嫌いになって、またひきこもりになったけど、

それでも、再び学校に出勤するときにも、心配する思いをこらえて、

黙って見送り、見守る。

そんなお母さんの様子を視聴していると、自分の母親が重なった。

母は、僕が病んで、一人心が空っぽになった4月から、毎朝

「おはよう、今日はいい天気だよ。」

「おはよう、今日は病院ですね。気を付けていってらっしゃい。」

「おはよう、ゴミ出しは無事に終わりましたか。」

ショートメールを送ってくれた。

仕事前に送ってくれていた毎朝のメール。

母は、どんな思いで、このメールを送っていたのだろうか。

きっと、上嶋さんのお母さんと同じように、

自分の息子が今日も無事で生きていますように。

自分の息子が少しでも穏やかに療養できますように。

必死の思いを見せないように、穏やかに。

毎朝メールをくれたのではないか。

母からの思いを振り返り、4月からのメールを読み返す。

日常と僕がつながっているように。ボラードに船をつなぐロープのように。

おはよう、おはよう、おはよう・・・・。

ようやく、自分を支えてくれていた人たちに、

自分から目を向けられるようになった心の状態になり、

母の、必死の思いに、自分の心を巡らせて、

改めて思った。「母さん、ありがとう。」

↓次話




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