どうせやるならとことん楽しもう(7)
男子三日会わざれば、刮目してみよ。という故事があるが、
男子に限らず、子ども達はまさに、三日あればこちらが思いもよらぬほどの、成長を遂げる。
3連休明けの練習試合から、床を叩く音が変わり始めた。
バシ!バン!バシ!
どうやら札レンタルの子達も、だいぶ熱心に練習してきたようで、
自己流の覚え方を作って、ぐんと得意札を増やしている子、
競技かるたの取り方さながらに、手の動きが速くなっている子、
また、10枚ずつ戦ではあるけれど、札の位置に自分なりの工夫をして、
確実に取り数を増やしている子など、
まさに3連休という三日間で、子ども達のカルタの腕は、刮目させられるだけの上達ぶりだ。
中には、レクレーションのつもりで楽しめればいいという子も少なくないが、
それでも、そんな風に勝負は重視していない子達も、すっかり20首を頭に入れているようで、
始業式に配った早覚えプリントを出している子は一人もおらず、
誰と対戦しても楽しめるように、準備することを、みんなが意識してくれているのが見て取れた。
「札の取り方が怖いんよ。もう。」
とKくんは相手にぼやきながらも、自分の得意札が取れた時には、
「おっしゃぁ!この札だけは渡さねぇぞ!」
と、自分の三日間の成果が出てきたことに大喜びではしゃいでいる。
それぞれが、それぞれのペース、それぞれの色で、
6の4の新しい『遊び』に、ハマってくれているのが伝わってきた。
あっという間に金曜日になり、いよいよ第一回トーナメント大会、赤杯。
学級全部のスペースを使いたいので、机を廊下に出して、広いスペースにして、
みんなで掃除を早く終わらせて、教室の床を追加でふきあげている。
「では、赤杯を始めます。うだうだ長く話してもしょうがないので、先生からは手短に。せっかくのトーナメントなので、赤杯の優勝者、準優勝者、3位の2人までは、優勝特典を考えました。商品などは用意できないので。赤杯優勝者は、週末の宿題と、来週月曜日・火曜日の漢字まで無しとします。準優勝者は、週末の宿題と来週月曜日の二日間、3位になった二人は週末の宿題無しと言う事で。と言っても、おそらく週末にも、カルタの練習や、カルタ攻略の研究を自学などではすると思うので、そういった自主的なものについては、自由にしてください。では、抽選です。」
おおおおおお!やる気が上がった!子ども達は一段と盛り上がっている。
宿題無しは、どの時代どの学級でも一番のご褒美だよね。
「私は無理だなぁ。」
そんなつぶやきも聞こえたが、
「こればっかりは、くじ運もあるからね。ファイト。」
と声をかけると、「はい。楽しいだけでも儲けものなので。」
とにっこりと笑顔でくじを引いてくれた。
さぁ、第一回の王様、もしくはクイーンは誰になるのか。
こちらもワクワクしてくる、赤杯が始まるのであった。