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チャレンジは子どもにも大人にも(中)
「エプロンのキットが届いたから配るね。」
選んだ絵柄ごとに呼んで、子ども達にキットを渡す。
「では、今日からのエプロン作りの授業は、あゆ先生に教えてもらおうと思います。」
そう発表すると、子ども達は、
「え、あゆ先生が教えてくれるの?やったぁ!」
と、驚きと喜びで、手放しで喜んでくれた。
あゆ先生の緊張もほぐれた事だろう。
子ども達の前に立って手で授業をすることは、
実はとっても専門性が高い技術だと感じる。
一定数の人間が興味を持つように語り掛けるのは、
落語家さんやマジシャンが一人で舞台に上がる様でもあり、
その時間のテーマ(学校では学習内容)がどれくらい伝わっているかを、
時間中正確に把握しながら、細やかに声かけや一緒にするなどの支援で、
子ども達の活動が目標に到達できるように動き回るのは、
看護師さんや動物園の飼育員さん、接客業のギャルソンさんの様でもある。
教師は五者たれ、とは言い得て妙の言葉だと思っていた。
では、その独特な専門性を鍛えるにはどうするか。
それは、実践しかない。毎日子ども達の前に立ち、
一緒に今日学ぶ内容を共有し、子ども達の反応に合わせて、
子ども達が理解しているかどうかを把握し、
どうやったらより興味をもつかの工夫をしていく。
それを繰り返し繰り返し。毎日6時間、一週間に30時間。
一年繰り返せば約1000時間の実践。10年で1万時間の実践になる。
繰り返し繰り返し、少しずつ少しずつ。
先生の技量は子どもたちの成長よりもずっと遅く、
ずっと小さい成長だからこそ、真摯に自分と向き合って、
前の自分よりも少しでも成長していこうという想いで取り組む。
それしかない。
あゆ先生が素敵なところは、その『はじめの一歩』を。
自分でやってみますと踏み出したところでもあり、
『はじめの一歩』に、自分自身が緊張感をもって臨んでいるところだ。
なので僕は、全力でサポートを、そんな気持ちだった。
そして、あゆ先生への一番のサポーターはやっぱり子どもたち。
あゆ先生を大好きな仲良しさんクラス1組の面々は、
あゆ先生が緊張していることもすぐに気付いて、
リラックスできるような明るさと、
あゆ先生の話をしっかり聴くからね、という集中した態度で、
最初の授業に向き合っているのが伝わってきた。
前日に段取りを確認していた通りに、あゆ先生が指示を出す。
「まずは、キットの中身がちゃんとあるかの確認をしていくよ。」
一つずつ、一つずつ。材料の確認も楽しそうに。
さて、全員が満足いく作品に仕上がるように。
楽しかったし、ミシンでの製作に自信がついたと感じる活動になるように。
僕は、仲良しさんクラスにミシンを運ぶために、
家庭科室のカギを取りに向かうべく、こっそり教室を出たのだった。