
真っ正面から向き合う覚悟はできているか~『やれる限りやる』自分自身が鍛えられた、5の3の子達との綴り語り~(1)
「こんにちわ、4月から○○小学校から異動してきます、ととろんと申します。ご挨拶と荷物を運びに伺いました。」
職員室にあいさつに行くと、春休みだが、一仕事を終えた雰囲気の室内で、
教頭先生が笑顔で挨拶を返してくれた。
「ととろん先生、ようこそ。校長先生は今おひるごはんを買いに出ているので、その間に荷物を運びこんでもらってていいですか?」
「わかりました。ただ、荷物が軽トラいっぱいあるんですけど、どこかに置かせて頂けますか?」
「それは、またたくさん持ってきたね。分かりました。じゃあこちらに。」
そう言うと教頭先生は、教頭先生がいつも戸締りに使われる鍵束を出して、
裏口の軽トラを付けられる扉口まで案内してくれた。
二階に上がって渡り廊下を渡っていく、そんなに長くない距離なのだが、
違和感を感じたので、教頭先生に尋ねた。
「校舎の中の扉も全部鍵をかけてらっしゃるんですね。」
「うん、どこから侵入してきてものを壊して回ったりするかわからないからね。」
春休みである。
「そ、そうなんですね。春休みでもそんなに警戒しないといけないんですね。」
「そうなんよ、去年は一瞬たりとも油断できない状態だったからね。春休みも、引き続き、ね。」
ちょっと思い出して疲れたような笑顔で、
教頭先生は裏口までに4つも鍵を開けて、案内してくれた。
校舎内の渡り廊下などの扉は、外から直接入る出入口以外は、基本的に鍵をかけない。
けれど、その一つ一つに施錠をしていると言う事は、よほど厳重に警戒しているのだなと感じられた。
「じゃあ、この裏口は中から鍵をかけられるから、荷物を運んだら鍵を忘れずにかけて職員室を訪ねてきてね。それにしても本当にすごい量だね・・・これは、廊下に置いていたら何があるかわからないから、こっちの教室の中に入れておいてね。えっと、これがその教室の鍵。運び込んだら教室の施錠も忘れないようにしてね。」
念を押すように教頭先生は施錠について伝えた後、職員室に戻っていった。
「なんか泥棒でも入ったんかねぇ?」
と、軽トラを出してくれた、前の学校の校務員さんが、不思議そうにつぶやく。
「去年、だいぶん大変だったようですよ。」
「うん、公務員さん同士でも話は聞いているからね。でもととろん先生は、何だかワクワクして見えるんだけど。」
「いや、正直ワクワクよりも、ドキドキハラハラの方が大きいですよ。子ども達に出会う前から、この状況を見せられたら。でも、やれる限りやるしかないですね。」
「大丈夫。〇〇小でのととろん先生を見てたけど、きっと、ここでも子ども達と楽しくやれるとおれは思ってるよ。がんばり。」
と、校務員さんは笑顔でそう言いながら、僕の荷物を運びこんでくれた。
さて、新しい春、待ち構えてのはどんな毎日なのだろう。
少し緊張感を持ちながら、3月末の異動の準備を進めていくのだった。