やる気スイッチは、子ども自身でつけるもの(9)
全体練習中にも、船長はどんどん子ども達のやる気が上がるような手立てをとっていく。
まず、まだ振り付けが苦手な子もいるので、隊列で近くになった子ども同士で、
振り付けの確認や、教え合いの時間をとっていく。
みんなの振り付けについていけない。ソーラン節の踊り苦手だ。という子を、
そのまま置いてけぼりにしないで、一旦立ち止まってみんなと踊っても大丈夫という安心感を持たせてる効果がみられた。
また、近くの子ども同士で教え合いの時間を共有することで、
全体の練習中にも、教え合った友達が近くで一緒に踊ってくれている安心感が強くなり、
その結果、自信がない子、ダンスや踊りがあまり得意でない子も、
教えてくれた友達が一緒に踊ってくれているのが見えるので、
のびのびと体を動かすことが出来ているのである。
また、例の「センター選抜」を告知したことは、
子ども達の競争心にも火をつけたようで、
絶対に選ばれてやるぞ。という気迫が溢れるように、
練習時間中通して、一日の全部のエネルギーを出し尽くさんばかりに、
全力で踊るKさんは、汗だくになりながら、掛け声も大きく動き続ける。
連休前から居残っていた子達はもちろんのこと、
連休明けからの一週間で、すぐさま追従していた子達も、
「どっこいしょー、どっこいしょ!!」
と、大きな声を出して、体をいっぱいに広げて、力強く踊っている。
学年練習の時には、ほぼ、音楽再生係になっている僕だったが、
「あー、この子はきっと、オーディションに行く気で頑張っているんだな。」
という子は、へたすると女子の半分くらいはそう感じるような熱量が伝わってきた。
男子はさすがに選抜とかにはあまり興味を示さない様子だったが、
それでも、近くにいる女子が、自分の3倍も4倍も大きな声を出して、
ゆかにつきそうなくらいに腰を落として踊る様子を見て、
自分たちも、もう少し気持ちを込めて踊らないといけないと思うのだろう。
繰り返すごとに、ソーラン節の踊りには、力強さと、動きのダイナミックさ、
声は体育館に響き続けて、止まるときのタイミングもずれがどんどんなくなっていく。
音楽を再生しながら、思わず見とれてしまうほどの『ぴたっ!』とそろう瞬間も、何度も出てくるのだった。
・・・これは練習初日だよな。ふとそう錯覚する位に。
子ども達のやる気は、全体練習によってどんどんミックスアップされていく。
この気持ちが2週間後までさらに盛り上がって行けばいいなと思う一方で、
これだけ熱中した反動が来ないように、
どこかでクールダウンする工夫を、準備しておかないといけないなと、
ぼくは頭を巡らせるのだった。