1人の困難を、みんなで楽しいに(前)
だんだんと蒸し暑い空気がまとわりついてくるようになった五月の中旬。
小学校は、運動会の練習が始まった。
仲良しさんクラス1組の子ども達は全員6年生。
学年での表現競技は『組体操』だ。
「俺、あんなの無理。できるわけがない。」
「きつくて倒れたらどうしよう。」
子ども達の口から出てくる不安の声。
仲良しさんクラス1組の授業は、全部クラスで完結していたので、
子ども達の中にあった、交流ストレス度は、
アレルギー反応を起こすほどだった年度初めに比べて、
だいぶ下がっては来ている。しかし、全体練習になると、
厳しい日差し、全体での指示の聞こえづらさ、一人ずつの感覚が広いなど、
外的なストレス値も上がる。その上での『組体操』だ。
この反応は当然だろう。
「ひとまず、学年練習は、原則参加でがんばろう。組体操は、一人技だけでなく、2人技、3人技、6人技もあるから、みんながきたり来なかったりで、パートナーになった子が、困ってしまうのはやっぱりよくないと思う。」
「だけど・・・できる自信がない。」
「そうだね、でもそれは通常級の子達も一緒の気持ちの子は多いと思う。」
「あいつらはそんなこと思ったりして無いよ。」
「いや、だって考えてみ、みんなも通常級の子達も、今まで何度も組体操やってきたから自信あるわって人はいるかな?みんな今年初めて6年生になったのに。やろ?だから一緒に並びながら、頑張らないと、と不安に思いながらも必死にやっている子だって多いと思うよ。」
「・・・・・そっか、みんな初めてなんやね。」
子ども達の緊張から、少しだけ不安の色が薄まったように感じた。
「でも先生、どうしてもきつかったり、無理だったりというときには休んでもいいですか?」
「それはもちろん。これまで通りそうして構わない。むしろ、無理が過ぎてぶっ倒れてしまうこともあるきつい練習期間だから、無理な時には休む。これは絶対まもって。もし途中で限界が近いなというときには、手を挙げてしゃがみ込んでくれたら、先生かあゆ先生がすぐに駆け付けて、外に連れ出すようにするから。」
と、絶対にやり切るではなく、できる限り頑張るのスタンスと、
きついときの対処方法を子ども達と確認して、
こうして『組体操』のある運動会に向けての、
仲良しさんクラス1組の子ども達の次なるチャレンジが、
幕を開けたのだった。