スローガン、私が書きたいってさ(前)
始業式で、6年4組は最後に呼ばれた。
「6年4組、ととろん先生。」
返事をして子ども達の列の前に立つと、もうワクワクしてるのが伝わってくる。
この学校での3年目の一年間がスタートした。
僕が働いている自治体は、明記されていないルールで
『講師は同一校の連続任用は最長3年まで』
というものがあった。辞令にも雇用条件詳細にも明記されていないが、
講師≦新採正規という立場を、色々な条件で打ち出したいのだろうと、
特に気にすることもせずに受け止めていたが、
年配の退職後講師として働いてくださっている先生の中には、
「勤務の条件も講師になると途端に扱いが厳しくなったから、長く続けられない。近場の学校で人が足りないなら力を貸したいけど、そんなことは全く考慮せずに、通勤に1時間以上かかる所にも平気で配属するから。」
と、運転だけでも疲れるので、そういった任用についての心配も、
それぞれ講師の立場で増えてくるのだから、任用一つとっても、
動かされる側も、動かす側も大変だと思って耳を傾けていた。
この3年ルール僕自身は、自分に合っていると思って働いていて、
ただでさえキャラが強いのに、長く居続けると飽きられるだろうと
常々自分のことを、そう自己評価していたから、長くても3年で異動は、
ちょうどよいと感じていた。ともあれ、そんな最長の3年目だ。
3年目ともなると、ととろん先生がどんな先生なのか、
子ども達の方が的確に把握してくれている面も多い。
僕としては、目の前の子どもに全力での姿勢は変わらないのだけれど、
子ども達との関わり方は学級だけでなく委員会、クラブ活動、
登下校時に安全のための見回りをしながらの引率などなど、
そういった場面で子ども達は、ととろん先生がどんな先生なのかを、
しっかり観察してくれる。その上で、子ども達の前に立った時に、
小さくガッツポーズをしてくれたり、「やった。ととろん先生だ。」
と、隣同士でハグし合ったりする姿を目にすると、
この子達に、自分がやれる限りのことをやろう。
毎回、そんな気持ちがわいてくるのだ。
この時の気持ちが一年間の熱の素になっていると言っても過言ではない。
ともあれ担任発表も終わり、教室へ戻ると、自己紹介は簡単にして、
子ども達にまずは、一年間どんな思いで向き合うかを伝える。
僕が伝えることは毎年変わらない
『守る・楽しむ・伸びる』
そして、
『やるときはやる・やることはやる・やれる限りやる』
このことだけだ。僕が芯から教わらなかったことで、
大人になって何度も失敗をして、その結果たどり着いた、
僕から子ども達に伝えられること。
6の4の子達は、なるほどね、うん、うん。と噛み締めるように、
僕が伝えることを聞いてくれていた。