夏空に元気一杯のPLAYBALL(2)
「・・・で、次は36番のバスに乗って、競技場前か。」
7月末の朝、土曜日の週末に、僕は出勤と同じ時間帯に駅にいた。
今日はYくんが話してくれた、野球の試合の日。
YくんのチームのとMさんのチームの試合は1回戦第二試合10時からの予定だ。
この街で働いてきて、15年もたつ今でこそ、試合会場になっている競技場が、
どういう道順で行くのが、わかりやすくて早いかがわかるが、
この当時はまだ全然そんなことには明るくなく、
その上ぼくは自家用車を持っていない。
応援で、現地に行くとなると、電車とバスを乗り継ぐ、公共交通機関頼みなのだった。
セミの声が響いてくる中でバスを待っているだけで、もう汗が止まらない。
ただでさえ、トトロみたいな体系の中年のおじさんにとって、
夏の暑さは一番の敵である。とにかくもう、応援につくまでに元気は空っぽになりそうだ。
15分ほど待つと、競技場行きのバスがやってくる。
バスに乗車すると、冷房がゴォーッと車内をキンキンに冷やしている。
ようやく暑さから逃げられて、ほっとしたところで、
時計に目を向けると、もうすぐ9時になる。
果たしてどれくらい現地まで時間がかかるかの見当がつかない僕は、
試合に間に合いますように、と願いながら水を口に含んだ。
競技場までは30分ほどで到着し、試合開始の時間に間に合った。
ホッとしたところで、競技場の方へ足を進めたが、
ここで再び関門が。野球の応援をしている声がかすかに聞こえるのだが、
試合会場が見えてこない。
競技場には、陸上競技場、サッカーの練習場、テニスコート、そして野球場と、
多くのスポーツを楽しむことが出来るいくつもの施設が一緒になっていて、
その敷地は大変広かった。
うはぁ、とバスから降りて再び噴き出してきた汗をぬぐいながら、
とにかく声の聞こえてくる方へ歩いていく。
すると、陸上競技場の奥に、野球場のスタンドライトが見えてきた。
なるほど、降車したバス停からは、一番奥まったところに、
屋外の野球スタジアムはあったのだった。
スタジアムが目に入ると、少しだけ足が軽くなった。
目的地が視認できたことと、時間に間に合ったことへの安心感が、
気持ちを軽くしてくれたからだろう。
ここまでくると、なるほどユニフォーム姿の小学生と、
その保護者の方たちが、チームごとにまとまって、
試合前のウォームアップをしたり、本番までに体力を奪われてしまわないように、
木陰で一休みしたりと、各々待機時間を過ごしている。
と、そこへ、「せんせーい!、ととろんせんせーい!」
聞きなれた声が耳に届いてきた。
目を向けると、選手の子1人が、小走りに駆け寄ってくる。
学校で毎日見ている姿とはまた違う、
キリっと頼もしい、少年球児のYくんだった。
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