やる気スイッチは、子ども自身でつけるもの(5)
「疲れたぁ、でもこの踊り、私好き!」
そう言って笑顔で汗をぬぐうKさんを見て、僕も嬉しくなった。
船長と姉さんは、それぞれ別の仕事もあったので、
最後は僕がダンスルームになったこの部屋の鍵を閉めるのと、
子ども達を下校させる仕事を引きうけていたのだ。
「すごいすごい、さすが早速踊りたいと言ったメンバーだね。もうカッコよかった。」
と僕が拍手しながらそう言うと、Kさんはにこにこの笑顔で、Mさんとハイタッチ。
同じクラスの二人だけでなく、1組さん、2組さんで残った子達とも、
キャッキャ言いながら、喜んでいた。
「さて、そろそろ20分だから帰ろうかね。」
と僕が、下校を促し始めると、
「ととろん先生、もう一回、もう一回だけ。お願い。」
と、子どもたちが両手を合わせてお願いしてきた。
今日はそもそも調早帰りの時間割、20分でもう一回で25分、
玄関まで送って行っても2時半には返すことが出来るかな。
僕は「じゃあラスト一回ね。今日はこれがほんとにラスト一回だからね。」
といって、リモコンで再生をすると、
「ありがとうございます!」と元気にそろった声で返事をして、
画面に向ってビシッと最初のポーズを構えるKさんたち。
ソーラン節は、曲調も演歌風で、
小学生の女の子が気に入るジャンルではないように感じるが、
激しく躍動する振り付けや、
どっこいっしょー、どっこいしょ!ソーラン!ソーラン!
と大声で掛け声を叫ぶところなど、
とにかくもう体中のエネルギーを発散させるという意味では、
これほど気持ちの良いダンスはなかなかないと言っていいほどのものだ。
踊りを繰り返し、大きな声と振り付けを覚えながら、残ったこの子達は、
爆発させて完全燃焼できる達成感の気持ちよさを、
心と体で実感しているようだった。
8人がびしっと最後の静止姿勢で踊りを終える。
早速の放課後練ですでに5回も踊り切って、
全員息も上がるし、汗も飛ぶ。
けれども気持ちよかったというのがはっきりと伝わってくるような笑顔で、
「先生ありがとう。私これ連休中も練習してくるから。」
といいながら、みんなで窓の戸締りを手伝ってくれた。
さて、全員に告知した練習開始は連休明けから。
その前からこんなにやる気になっている子ども達を見て、
やる気になっている子どもってのは本当に素敵だなと、
改めて子ども達を愛おしく感じ、それならこの運動会で、
僕がしてあげられることは何だろうかと、
今回の運動会で自分ができることについて考え始めるのだった。