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夏空に元気一杯のPLAYBALL(10)
「それが、もう、凄かったのよ。ほんと、めちゃくちゃ強いよ。」
と、観戦初日の夜。僕は電話で、隣のクラスの担任であるⅠ先生に話をしていた。
「そんなに強かったんですか?」
「うん、投げてはYくんやⅠ先生のところのNくんが見事なピッチングで、ほとんど内野ゴロだし、打線は止まらないもんで、1回戦も2回戦もコールド勝ちだったよ。」
「おおお、そんなにですか。」
「うん、もうさ、普通に野球観戦に行ってるつもりでも相当楽しく応援できるけん、明日一緒に行こうよ。」
「うちのクラスからは3人いるんですよね、6年生メンバー。・・・じゃあ明日は私も一緒させてもらっていいですか?」
「もちろん。子ども達もお父さんお母さんも喜ぶよ。」
というわけで、翌日日曜日は、Ⅰ先生も一緒に応援に行くことになった。
さて、3回戦はどうなるか、、、とドキドキしてみていたのは、
1回の表が終わるくらいまでだろうか、今日も抜群の安定感のある守備で、
これはもうチームとしての熟練度が、小学生レベルの最上級なのだろう。
I先生もただただ驚きと感嘆の混じった歓声で、子どもたちへの応援の声を出している。
ところが、今日は打線が昨日よりは調子が良くなく、
また、3回戦と言う事もあって、得点にまでつながっていかない。
相手のピッチャーもいいところに球が走っているので、
見逃し三振で倒れる打者も出てきた。
そうなると、僕らは、「ファイト、どんまい。」と応援するのだが、
コーチ陣のお父さんたちからは、厳しい指摘の声がとぶ。
「S、もっと積極的に振らんかい!」
「まずは振っていかんと、チャンスは生まれんだろう!」
「練習でやってることを出さんや。」
と、ビシバシな感じのアドバイスも、熱の入り方が一段上がったようだった。
「Tくんのお父さん、あんなにおっきい声なんですね。」
学校で大人同士で接するときには、なかなか見られないお父さんお母さんたちの姿にも、
I先生は、うんうんと頷きながら感じ入っているようだった。
そんなこんなしながらも、やはり地力がちがうYくんチームは、
回を重ねるごとに、球をしっかりとらえ始めて、
5回にまで来た時には、あと1点入れば、コールドというところまで来た。
惜しくもその5回で得点は取れなかったのだが、その点差のまま7回まで試合は進み、無事、勝ち進むことが出来たのだった。
「いや、ほんとに、ととろん先生の言ってた通りの強さでしたね。」
普段学校では見ることが出来ない、子どもたちの表情や、野球をする姿を見ることが出来て、
Ⅰ先生は、満面の笑顔で、子どもたちをねぎらいに行くのだった。